本日は「写意」(しゃい)について書きたいと思います。
水墨画を習い始めてしばらくしたころ、水墨画の重要な要素として、「写意」(しゃい、と読みます。)という概念を知りました。
水墨画は「写意画(しゃいが)」とも呼ばれ、それは、対象の形を写すことにとどまらず、対象の本質や、自分自身の精神や心の動きを紙の上に表現する画のことです。つまりは対象を通して、心の中にあるイメージ・精神・気持ちといったものを表現するという事です。
ですので、その対象を写実に描くのではなく、自分の心に浮かんだイメージを取り出して描けば良いわけです。
水墨画は写意画ですので、描かれる草木や鳥、山水など、モチーフは簡略化されています。そして、水墨画においては、少ない筆数で簡単に描く、というのはとても大事な要素で、究極の奥儀のひとつでもあります。
水墨画は、何時間もかけずに簡単に描く、ということが大事とされています。ただし、ここでいう「簡単」というのは「簡単」にみえるのですけれども、とても難しい表現方法です。なにしろ、形が簡略化されると上手い下手がそのまま出てしまい、誤魔化しがききません。モチーフが少ないので、構成も大事な要素となります。
モチーフの特徴をつかんで、省略化し、少ない筆数で大胆に、しかも筆の勢いを上手にコントロールして対象を描いていくというのは、相当な技術が必要で、そのためには地道に臨画に取り組んでいくしかありません。
臨画で獲得した筆の技術を用いて自分の描きたい絵を思う存分描けるようになれば、自分の心の中にあるイメージが、筆を通して紙に写し出されます。それが写意画です。
宮本武蔵 『枯木鳴鵙図』(こぼくめいげきず) 久保惣記念美術館蔵
五輪書の著者である剣の達人・宮本武蔵が描いた水墨画で、代表作とされています。
描かれているのは鋭い眼光と嘴をもったモズ。さっと筆で刷いたモズの羽や尾が見事です。
静かな水面と対比させているのは、空間にすっと伸びる一本の枯れ木。迷いがない、見事な線です。
緊張感がありながら卓越した集中力を感じさせます。
それでいて、なんと静謐な世界。風も、音も止んだ一瞬を捉えています。
筆太刀(ふでだち)とは、よくいったもので、さすが剣豪の作品です。
体幹がしっかりしていなければ、このような、ぶれない線を引くことは難しいでしょう。
文句のつけどころがない、見事な写意画です。無駄がない画面構成も素晴らしいです。
まさに傑作といえましょう。
私もいつかこのような画が描けるようになりたいと憧れています。
最後までお読みいただき有難うございました。
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