2月6日クラシック音楽界の巨匠小澤征爾マエストロが逝去されました。
生きとし生けるものの定めとはいえ残念でなりません。
1998年1月、神戸淡路鳴門自動車道の全線開通を記念したベートーヴェン「第九」交響曲の
演奏会が鳴門市文化会館で公演され、合唱団の一員として参加しました。
本番当日は夢のような一日でした。
音合わせからリハーサル、本番へと、カリスマ的指揮者でありながら、気さくな非常に温かみのあるお人柄に自然と引き込まれ、私自身普段以上の実力が発揮できたように思います。
マエストロが指揮台に上がって観客に一礼、振り返って指揮棒を振り上げようとしたした瞬間
今まで経験したことの無いような静寂に包まれた。
その時、”シャー、!”と何かの音、一瞬マエストロが小さな声で「何の音?」
誰かが照明の音と云ったのか、観客に見えないように身体の前で指揮棒を上に指示した。
そして何事も無かったように本番が始まった。
私自身何十回も出演したホールですが、照明の音が聞こえたのはこの時だけです。
「第九」交響曲は4楽章あり、全体的にダイナミックな旋律で構成されていますが、第3楽章だけが他の楽章と違い、静かなゆったりと流れるような、田園を思わせるような旋律で、普段合唱練習の時間に、指導者から第3楽章は観客の皆さんが居眠りする楽章です、とよく聞かされていました。確かにそんな気もしないではなかったのですが、小澤「第九」は全く違っていました。
慈愛に満ちた人の心を惹きつけるような旋律に思わず引き込まれていったのを、今も鮮明に蘇って来ます。
演奏会の後、合唱団仲間との細やかな打ち上げ会に気さくに来てくださったことも、今も忘れられない貴重な思い出の一つとなっています。
今、同年代の各界の著名人が次々と逝ってしまいます。
誰しも避けることの出来ない定めとはいえ、是ほど寂しいことは有りません。
世界の巨匠小澤征爾マエストロのご冥福を心よりお祈り申し上げます。 ”合掌”