本物があってニセモノは成り立つ。
誰もが知っている事柄です。
でも、食材選びの際にはこの順番が逆転している・・・。
そんな風に思えてしまうのです。
例えば醤油やお酢。
一本198円くらいで買えるものもある。また1,000円くらいするのもある。
中には100円を切るものや数千円のものまで売られているのです。
いくらピンキリ相場とはいえ、あまりにも価格に開きがある。
違いはあるのだろうけど、なんとなくあいまいでハッキリしない。違いが判然としないからこそ、値段でジャッジする他なくなってしまう。こうして“安いモノはスバラシイ!”となってしまうのです。
でも、それが本当に正しい消費といえるのかどうか?
問われるべきは、それが「適正」かどうかではないだろうか?ココでは「お酢」を例に考えてみましょう。
安いお酢の場合はほぼ「1日」で商品化されるといいます。反対に高いものはというと半年~1年をかけて熟成されます。
1日と1年の違い。
そこにはどのような違いがあるのでしょうか?
お酢は膜によって作られます。膜の名前は“お酢の子”。
木樽、または甕(カメ)に仕込んだ材料と酸素との接着面に自然とお酢の子はできるものなのです。
それが“お酢のもと”なのですが、この膜が幾層にも重なることで、お酢は熟成されるのです。
長い時間をかけて膜が厚くなっていく。やがてその重みでゆっくりと沈んでいく。そして表面にまた、新たな膜が作られていく。
このプロセスを繰り返して、旨みや丸みが深まっていくものなのです。
これに対して、
短期間で作られるものは、大量の酸素を送り込むことで速醸しています。自然に任せていてはあまりにも時間がかかるし、コストもかかる。
手間もヒマもかかり、時間ばかり食うからやってられない。
そこで大量の酸素を供給することでお酢に仕上げていくわけです。ありますよね、水槽にブクブク酸素を供給するような装置が。
もっと大がかりなものなのでしょうが、そうした装置によってインスタントに仕上げていくようです。
「1日と1年」は、この違いというわけです。
値段の違いは、原材料にもあらわれます。お酢の主な材料はお米ですが、安いお酢には古米や古々米、とてもご飯では食べれないものが使われるケースも少なくありません。
本来なら廃棄せざるを得ないものを使って、どうにか低コストで仕上げていく。加工度が高く、しかも安価な商品はこうして作られるというわけです。
もう一つ例を挙げると、しょう油。主な材料は大豆。
安いものだと大豆の皮が使われるケースがあります。大豆から実を抜き去った残骸、カスの「脱脂大豆」が使われたりもします。
しょう油における大豆の役割は“うま味”。
でも皮やカスならば充分な旨みを期待することはできません。そこで化学調味料などで味つけ・調整を行い、似たようなモノに仕上げていくというメカニズムです。
パッケージ裏面に「アミノ酸」と書かれていれば、そうしたものだと思って良いのです。
このように安いものはどうしても「化学の力」に頼らなければなりません。
以前は「アミノ酸しょう油」といって、人の髪の毛を原料に作られるものが出まわっている時代がありました。
髪の毛でできるの?
と思うかも知れませんが、実際はできる。クズならまだしも、髪の毛はちょっと気持ち悪いですよね。
安いのにもホドがある、そう思ってしまいます。
最近はわざわざ「丸大豆醤油」と書かれたものが売られていますが、これは皮やカスではない!髪の毛でもない!
「丸のまんまの大豆でちゃんとやっています。だから一緒にしないでください!」と主張しているのですね。
本物があってニセモノがあるわけだから違いを知ってきちんと見分ける必要がありますね。