統合失調(6) | 阿波の梟のブログ

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  • 支援に関する研究
    • 有効と考えられる退院支援について、支持的な援助関係を築き、意欲を引き出していく基本的な治療技術や、治療チームとその運営の技術が重要とされる[328]
    • 退院の意向をもつ長期入院統合失調症患者の退院調整の障壁を打破するためには、必要な追加教育を精神科看護師に紹介し、専門的な技術を展開できるように支援する必要性が示唆された[329]
    • 統合失調症未治療・治療中断の本人の家族から受診に関する相談を受けて、本人が医療保護入院となった支援事例において、行政専門職による家族への支援内容として「介入の見通しを立てる」「家族と相談関係を築く」「家族の決心を待つ」「家族による説得を見守る」「入院までの体制を整える」「入院後も本人と家族を支える」の6つのカテゴリが抽出された[330]
  • 他疾患の発症
    • 統合失調症、呑気症および難治性便秘があり多剤向精神薬、下剤を長期常用していた患者が、2次性偽性腸閉塞をきたし、何らかの増悪因子が加わり腹部コンパートメント症候群(ACS)に至った[331]
    • 統合失調症に横行結腸軸捻が併発した事例があり、発症要因として複数の向精神薬を服用しており、慢性便秘であったことが考えられた[332]
    • 統合失調症に異食症を合併したという報告が多数あり、約3%の患者にみられたとの報告がある[333]
    • 統合失調症患者の口腔内は、抗精神病薬の副作用による唾液分泌の低下や、口渇のための清涼飲料水に含まれる糖分摂取が原因で齲蝕が発生しやすく、また患者の多くが好む喫煙は歯周病の要因となる[334]
    • 統合失調症患者に身体的低活動、栄養障害、骨粗鬆症骨折などが多い[335]
    • 統合失調症を抱えながら慢性腰痛を持つ患者に対して運動療法による介入を行った過程で、痛みの原因に認知のゆがみが関係していることに行きつき、これらは非特異的腰痛であると考え、心理社会面へのアプローチを進めたところ改善へと向かった[336]
    • 統合失調症治療薬の消化管有害事象では、便秘は日常診療上最も頻度が高く、増悪するとイレウス消化管穿孔などの致死性を有する[337]
    • 統合失調症患者は肺炎COPDCOVID-19罹患率が高い[338]
    • 統合失調症に合併しやすい循環器系疾患として、虚血性心疾患や、クロザピン使用による心筋炎心筋症、心伝導系の障害による致死的不整脈があげられる[339]
    • 統合失調症を合併した急性虫垂炎症例では虫垂穿孔および術後合併症の頻度が高く、それらのリスクを考慮したうえで周術期管理に臨む必要がある[340]
    • 酸化マグネシウムは下剤として頻用されているが、抗精神病薬投与中は、抗コリン作用の腸管蠕動低下に伴うマグネシウム製剤の腸管内停滞によりマグネシウムの吸収率が高まり、高マグネシウム血症をきたすことがあるため、抗精神病薬を服用中の統合失調症患者では、常用量のマグネシウム製剤の内服であっても、注意深い臨床症状の経過観察および血清マグネシウム濃度のモニタリングが必要であると考えられた[341]
    • 水中毒の既往がある統合失調症患者に透析を導入する場合、多飲に対する有効な抗精神病薬はないうえで水分制限を課す必要があり、水分制限ができない場合は予後不良になる可能性がある[342]
    • 統合失調症の嚥下障害者では、嚥下機能の低下だけではなく、日常生活行動(ADL)や栄養状態の低下が誤嚥性肺炎の発症と密接に関連していた[343]
    • 統合失調症患者の安全な周術期管理のためには、精神科医の協力による精神的ケアが重要であった[344]
  • 他疾患との関連
    • 名古屋大学大学院の研究により、統合失調症と自閉症スペクトラム障害は発症メカニズムにオーバーラップがあることが発見された[345]
    • 統合失調症患者の自閉症スペクトラム指数総得点は対照群より高得点を示し、左上側頭溝周辺領域の皮質における灰白質体積と負の相関を示しており、統合失調症と自閉症スペクトラム障害は部分的に神経解剖学的基盤を共有することが示唆された[346]
    • 幻臭と異嗅症[注釈 54]との区別は難しいが、基礎に統合失調症が存在すれば統合失調症の病態と判断ができる[347]
  • 生活習慣病・メタボリックシンドローム・肥満との関連
    • 統合失調症患者と生活習慣病の関連において、患者の生活習慣病罹患率は高率で、健康状態について健康と回答した割合や生活習慣について健康的と回答した割合は低率であったが、生活習慣の改善を実行しようとしている割合や生活習慣に対してアドバイスが欲しい割合といった意識については高い傾向を示した[348]
    • 統合失調症患者のメタボリックシンドローム発症率(MS)は男性で27.2%、女性で15.3%、全体で22.1%と一般成人と比較して極めて高率である[349]
    • 統合失調症患者の薬物療法において、非定型抗精神病薬の登場により、抗精神病薬の副作用の主軸が従来の錐体外路症状などの不随意運動から肥満を含めたメタボリックシンドロームのリスクへと移行してきており、その対策として薬物療法の調整だけでは効果は不十分で、食事や運動など行動変容を目的とした健康管理プログラムが重要とされる[350]
    • 入院中の統合失調症患者におけるメタボリックシンドローム有病率について、抗精神病薬の種類とMSとの関連性は認められず、脂質異常や血圧異常によるMS発生が多いことが示唆された[351]
    • 地域で生活する統合失調症患者のメタボリックシンドローム発症について、男性では「BMIの増加」と「喫煙の傾向」がMS発症頻度を増加させ、「洗濯をする」がMS発症頻度を減少させた[352]。女性では「BMI増加」がMS発症頻度を増加させ、「リスペリドン服用」がMS発症頻度を減少させる結果であった[352]
    • 統合失調症者で糖尿病を合併する患者の血糖コントロール困難の要因は「自制困難」と「精神症状の悪化」が強く影響していた[353]
    • 統合失調症患者の治療における抗精神病薬の副作用としてメタボリックシンドロームや2型糖尿病の発症を捉えると、様々な交絡因子が複雑に絡み合っているがゆえに、合併について大きな個人差が生まれている可能性があるため、これらの合併症の出現を予測することは容易ではなく、どの抗精神病薬を使用しても注意深い血糖モニタリングを継続することが必要と考えられる[354]
    • 非定型抗精神病薬のメタボリックシンドローム誘発機序として、特にオランザピンが脂肪細胞を直接刺激して脂質の取り込みを亢進させるとともに、交感神経系を活性化するという相乗効果によって肥満を引き起こすことが明らかとなった[355]
    • 入院体験を契機に肥満となり退院後も肥満が持続している統合失調症患者に対する看護援助として「肥満を予防するために、入院中と退院後の活動性拡大の機会を見逃さない」「抗精神病薬の副作用について正確な知識を普及し、主体的な肥満対策ができるように援助する」「効果的な減量のための家族を含めた積極的な相談体制を確立する」の3つの必要性が明らかとなった[356]
  • 作業療法の研究
    • 統合失調症に対する作業療法、および作業療法士が実施している心理社会的介入は特に認知機能が多くの介入で効果を示す重要な治療標的であることが示唆された[357]
    • 統合失調症患者の男女が合同して作業療法を行う影響として、「社会参加の広がり」「外見への配慮」の項目で女性に顕著な結果が現れ、社会性の獲得に影響を与えることが示唆された[358]
    • 作業療法の介入が、統合失調症患者の社交不安症状の改善に寄与できる可能性が示唆された[359]
  • 理学療法の研究
    • 統合失調症者に対する理学療法は身体面、精神面の両方に有効である可能性がある[360]
    • 身体合併症がある精神科病棟入院患者に対する理学療法は生活機能だけでなく精神機能の改善も期待できることが示唆された[361]
    • 理学療法拒否が見られた統合失調症患者に対する応用行動分析学的な介入において、対象者の受け入れやすい行動目標(歩行)を取り入れ、歩行距離の延長という強化刺激をフィードバックすることで、理学療法への参加行動を定着させることに成功した[362]
  • 音楽療法の研究
    • メタ分析により精神病症状に音楽が与える影響を評価した結果、音楽は精神病症状の抑制に有意に有効であることが示されたが、生演奏と録音音楽、構造化された集団音楽療法と受動的音楽聴取、および好みに基づく音楽と療法士の選択した音楽の間で効果に違いはみられなかった[363]
    • 慢性期統合失調症患者に対して音楽療法を介入することにより精神機能面、社会機能面、認知機能面における効果が認められたが、これら効果は個人の音楽背景によって変化が異なっており、患者の音楽背景に基づいて音楽療法を導入することが治療効果を高めるということが示唆された[364]
    • 緊迫感と自閉の強い統合失調症患者に対し数年にわたり個人音楽療法を施行したところ、既成曲の歌唱・聴取の形で音楽に没入する時期を経て緊迫感と自閉が軽減したことから、「音楽体験への没入」と「それが患者の好む既成曲であること」に意義が見出せた[365]
    • 無為自閉状態が課題の統合失調症患者には音楽療法の同質の原理[注釈 55]に基づき、好きな歌手に関連する働きかけを行うことが有効である可能性が示唆された[367]
    • 統合失調症患者の好みに応じて音楽活動を取り入れることは、短期間であっても、患者の症状改善に有効である可能性が示唆された[368]
    • 短期間でも音楽療法実施中は日常生活評価と比較して、働きかけや指示に対する反応が改善しており、また、社会性が一時的にせよ向上し、周囲への無関心が改善されていると考察された[369]。さらに、活動性や意欲が向上すると思われる一方、表情は日常生活と比較して変わらないことが明らかになった[369]
    • 精神科作業療法における音楽活動を実践する際に、生演奏はバーバル[注釈 56]な水準での関与が困難な患者に対して有効な、治療導入時の手段やセラピストと患者間の関係作りとなりえる可能性があり、さらには外部からの感覚入力の手段としても有効であることが推測された[371]
    • 看護師の視点として、音楽療法は患者理解を助け、患者と看護師との関係作りに効果を認めることができると実感していた[372]
  • 芸術療法の研究
    • 軽躁状態を呈する統合失調症患者に通常の精神療法と並行して絵画療法を行った結果、軽躁状態の改善とともに作品の描画時間が有意に減少しており、絵画療法の時間を測定することで患者の全体的な理解に役立つ可能性が示唆された[373]
  • 施術などによる改善の研究
    • ハンドマッサージは統合失調症患者に対して生理的・心理的リラクセーション効果があることが示唆された[374]
    • 残遣型統合失調症患者に足浴・フットマッサージの介入を行った結果、介入終了6か月後においても効果は持続していることが示唆された[375]
    • 気分変動の激しい統合失調症患者に対して交換日記を用いた面接を行い気持ちを言語化した結果、落ち着きを感じるようになり、看護師の患者理解が進み、患者と看護師関係の構築に繋がった[376]。また、現実的な会話が増え、治療に対する積極性が得られ、 暴言に変化はみられなかったが暴力は減少し、攻撃性は言語的なものに限られた[376]
    • メタ認知トレーニングが統合失調症の症状改善に有効だとするエビデンスが示された[377]
    • オープンダイアローグ、すなわち、当事者を支えるネットワークに関わる人達が集まり対話を行うことで、統合失調症をはじめとする精神疾患の再発率が激減している[378]
    • 統合失調症患者に外科的矯正治療を行うことは悩みから開放されることから、形態面、機能面だけでなく心理面でも大きい影響を与え、患者の感情の変化や行動にも影響を及ぼすことが示唆された[379]
  • 当事者の体験
    • 統合失調症者の思い描く生活は、まず発病前に「病気になる前の生活」を体験し、発病前後に「あたり前の生活からあたり前ではない生活へ」「変わりゆく生活に苦しむ」を体験、病状の安定によって「健康であるという実感」「自分の存在を認めてくれる他者の存在」「活動の場がある」に変化し、さらに自らの主体性を取り戻すことにつながり「新たな生活の思い」を可能にしていた[380]
    • 統合失調症患者が抱く希望は、家族の存在、友人・支援者の存在、信仰・信念、人への奉仕、就労による社会復帰、地域での生活の持続、異性の友人づくり・結婚、趣味の充実、将来の夢の実現、病状の回復、家族の成長と健康であった[381]
    • 自分はこれでいいという気持ちは統合失調症患者が血みどろといえる闘いのあとで辛うじて確保できるものであり、患者はなんども行きつ戻りつした後で厳しい現実の中で生活方法や生き方を身につける[382]。患者の行きつ戻りつの揺らぐ気持ちに寄り添うことが重要な看護援助と考えられる[382]
    • 統合失調症者の病いとの折り合いの概念は「自分らしく生きる」であったが、偏見をはじめとする病いの体験に苦しんでいた[383]
    • 統合失調症患者の発症前の生活エピソードとして、「対人関係をめぐる苦痛」「認識の歪み」「的外れな対処」「状況把握の困難」「日常生活上の障壁」「仮面の生活」の6つの軸が挙げられた[384]
  • 当事者家族の体験
    • 統合失調症当事者の家族の手記の研究から「統合失調症の発症により激変した生活」「辛く苦しい状況」「症状に 振り回される日々」「助けを求め彷徨い相談の場を獲得する」「壮絶な状況を経て医療に繋がる」「自責の念を抱く」「統合失調症を学び自分を取り戻す」「当事者と共に回復していく」「現在の当事者の家族と当事者の落ち着いた生活」「当事者の家族としての経験の内省」の体験のテーマが存在し、それらの体験には、医療につながるまでの時期、入院から社会復帰までの時期、社会復帰から現在、と様相が違う3つの時期の事象が語られた[385]。そこには家族にとって語るに外せない体験のエッセンスが存在し家族に大きな影響を及ぼした[385]
    • 混乱時期における統合失調症患者の家族の体験は「家族の変調に対する対処困難」「スティグマが招く憂い」「家族のきずなが崩壊する危機」「発症に対する自責の念」「当事者との生活が限界に達してからの援助の希求」「資源に対する渇求」「医療介入により感じる緊張からの解放」の7つに集約された[386]
    • 在宅で療養する統合失調症者の親は、夫婦で協働して多くのケアを担っており、父親は情緒的な母親を支え、子を客観的に見ながらも精神的に支える援助をしていることが多い[387]
    • 地域で適応的な生活を送っている統合失調症者の両親の体験として「激変した子どもに動揺する中で、母親は状況打開の方法を探し求める行動をとっていたが、父親は社会との関係を意識して一人で抱え込む対応を行い、両親で異なる体験」をしていた[388]。 また、両親ともに子どもを精神科に入院させたやるせなさに激しく苦しみ、心中を考える程の苦悩を体験する一方で、子どもを護れるのは自分たちしかいないと連帯感を強めており、以降は、子どもへの慈愛とともに信頼感をもって見守る思いへと変化し、関係の質の発展が認められた[388]
    • 統合失調症の子を持つ父親の体験として「経済的サポートを中心に間接的に子どもを支え、時間的余裕が増えた以降に子どもへの関わり方や父親自身の人生について考えていた」「子どもとの関わりに迷いながらも家族成員の最善を考え、最終意思決定者の役割を担っていた」がある[389]
    • 統合失調症の子をもつ父親の子と病気への対処と病気との向き合い方について、「家族への気遣い」と「父親としての在り様」の2つのテーマが得られた[390]。また、父親は、母親とは異なる責任感をもって子と接していると考えられ、家族など周囲の人々と少し距離を置きながら、間接的に子の日常的ケアを行っていた[390]。父親が子に対応していると考える程度と、母親が考える程度にはズレがあり、また、自分の感情を表出することが少なく、専門職者ともつながりにくい傾向がある[390]
    • 統合失調症患者の子を持つ母親は自身の養育態度に統合失調症発症の原因があると考え、罪の意識を持ちながら生活している[391]。母親がより希望を持ち自己成長を感じ取るためには、母親が罪の意識から開放されることが必要である[391]
    • 統合失調症患者の子を持つ母親は統合失調症に関して混乱と恐怖を強く記憶に留めており、母親がもつ恐怖体験に対して、早期に心理的ケア行うなどの支援が必要であると示唆された[392]
    • 統合失調症患者の親の家族会入会の体験として、家族会入会までの家族の心理的変化には「混乱」「後悔・自責感」「孤立」「元に戻る・期待」「元に戻らない・覚悟」「家族会入会」の6段階があり、家族会で得たものには「情報」「未来への希望」「居場所」「信頼できる仲間」「体験的知恵」「自信」の6つが含まれた[393]
    • 当事者が発症後、長い年月を経た家族は落ち着いているようであり、病気や当事者を受け入れることに葛藤しているようにはみえないが、きょうだい[注釈 57]は長い年月を経ても、病気と当事者の受け入れに対する葛藤を抱えてアンビバレントな心的態度が認められ、当事者のきょうだいであることを不名誉に感じることが、他者に配慮する姿勢につながっていると考えられる[394]
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