統合失調症(2) | 阿波の梟のブログ

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陰性症状編集

陰性症状 (Negative symptoms) とは、エネルギーの低下からおこる症状で、おおよそ消耗期に生じる。無表情、感情的アパシー、活動低下、会話の鈍化、社会的ひきこもり自傷行為などがある[8][43][50]

陰性症状は、初回発症エピソードから数年以上継続しうる[43]。患者はこれらの陰性エピソードのために、家族や友人との関係にトラブルを招きやすい[43]

感情の障害編集

  • 感情鈍麻:感情が平板化し、外部に現れない。
  • 疎通性の障害:他人との心の通じあいがない。
  • カタレプシー:受動的にとらされた姿勢をとりつづける。
  • 緘黙:まったく口をきかない。
  • 拒絶:面会を拒否する。
  • 自閉:自己の内界に閉じ込もる。

思考の障害編集

  • 常同的思考:無意味な思考にこだわり続けている。興味の対象が少数に限定されている。
  • 抽象的思考の困難:物事を分類したり一般化することが困難である。問題解決においてかたくなで自己中心的となる。

意志・欲望の障害編集

  • 自発性の低下:自分ひとりでは何もしようとせず、家事や身の回りのことにも自発性がない。
  • 意欲低下:頭ではわかっていても行動に移せず、行動に移しても長続きしない。
  • 無関心:世の中のこと、家族や友人のことなどにも無関心でよく知らない。
  • 引きこもり:外出意欲が低下する[43]

その他の症状編集

  • 認知機能障害:統合失調症の中核をなす基礎的な障害である。クレペリンやブロイラーなどの当該疾患の定義の時代(1900年ごろ)より、統合失調症に特異的な症状群として最も注目されていた。認知機能とは、記憶力・集中力注意などの基本的な知的能力から、計画・思考・判断・実行・問題解決などの複雑な知的能力をいう。認知機能が障害されるため、社会活動全般に支障を来たす。疾患概念より障害概念に近いものとして理解されている。この障害ゆえに、作業能力の低下、臨機応変な対処の困難、経験に基づく問題解決の困難、新しい環境に慣れにくいことがあり、また、発達障害患者の代表的な症状の一つとされるディスレクシア(読字障害、難読症)と似ている。判断力・理解力・注意力の低下・散漫さから、本・文章・文字を理解して目で追って黙読したり、記憶・暗記したりすることが困難になる。しばしば、読書が普通にできない。本・文章・文字を読んだ時に、そこに書かれている内容が一見し、ちらりと目で認知はできるが、本を読んでも全く頭に内容が入ってこない。味わい咀嚼しながら理解・認識ができないなどと訴えるなど、社会生活上多くの困難を伴い、長期のリハビリテーションが必要となる。統合失調症が、慢性の脳細胞の機能性疾患・障害であると言われるのはこのためである。
  • 感情の障害:不安感、緊張感、焦燥感、挑戦的行動[51]が生じる。自分には解決するのが非常に難しい問題が沢山あるなどの理由から、抑うつ、不安になっていることもある。抑うつは現状、将来を悲観するという場合や病名から来る自分のイメージ、他者である健常者や同じ心の病を持つ者との比較からくる場合がある。一般的に、統合失調症の患者の中には、理性および感情面で、敏感と鈍感の共存状態に陥る例が多く認められると言われる。何でもできる気分になる、万能感がある、お金遣いが荒くなる、睡眠時間が少なくなる、躁状態になることがある。
  • 不眠:統合失調症では83%が不眠症状をきたし、再発の兆候として最も見られる症状である[52]。統合失調症では、脳形態の持続的変化とともに睡眠にもノンレム睡眠の欠如といった変化が生じ、不眠治療は難渋しやすい[52]。統合失調症の症状の一つである場合と、統合失調症とは独立した不眠症を併発している場合が考えられる[53]
  • パニック発作:統合失調症者はパニック障害に類似のパニック発作が起こることがある[54][55]。治療法はパニック障害に準じる[56]
  • 連合弛緩:思考が脈絡なく飛躍する。これが進行すると「ワードサラダ」となる[57]連想が弱くなり、話の内容が度々変化してしまう。単語には連合があり、これをわかりやすく言えば、単語の意味とその関係にはグループ(連合)がある。連合弛緩は、この連合が弛緩する事で全く関係のない単語を連想してしまう。しかし、落語にあるようなダジャレは連合弛緩ではない。連合弛緩は、言葉の連想と関係を無視する場合がある。
  • 両価性:相矛盾した心的内容を同時に持つこと[58]
  • 独言・独笑:幻聴や妄想の世界での会話である。原因には、長年にわたる投薬の影響で、認知機能が低下するとの説もある[59]
  • 砂糖の過剰摂取:統合失調症者は清涼飲料水を大量に飲むなど、砂糖を好むことが知られている[60]
  • 多飲症・水中毒:過剰の水分摂取とそれにより生じる中毒[61]。著しい場合には1日に10リットル以上の水分を摂る[61]

原因編集

fMRIやその他の脳機能イメージング技術は統合失調症患者の脳活動のイメージを表すことができる。このイメージはfMRIによってワーキングメモリの脳活動の様子を表している。

詳細は「統合失調症の原因」を参照

発病メカニズムは不明であり、明確な病因は未だに確定されておらず、いずれの報告も仮説の域を出ない。仮説は何百という多岐に及ぶため、特定的な原因の究明がきわめて困難であり、今日の精神医学・脳科学の発達上の限界・壁となっている。現在の精神医学主流の仮説として、神経伝達物質ドーパミンの過不足による認知機能不全を原因とする説が有力である。

根本的な原因は不明ではあるが、遺伝と環境の複合要因と考えられている[60]。遺伝の影響度は研究によって異なるが、双子を用いた研究のメタ分析では遺伝率が81%と報告されている[62]。また、双生児法による研究によると、一卵性双生児のうちの一方が統合失調症に罹ると、もう一方も統合失調症に罹る確率は、50%であるという報告がある[63]

生物学的な因子としては、妄想および幻覚症状は脳内の神経伝達物質の化学的不均衡であるという仮説が提唱されている。主にドーパミン拮抗薬である抗精神病薬の適量の投与によって、症状の抑制が可能であるとする理論であるが、大きな成功をおさめている仮説であるとまでは言えない。

環境要因としては、心理社会的なストレスなど環境因子の相互作用が発症の発端になると予想されている。心理社会的な因子としては、「ダブルバインド」や「HEE(高い感情表出家族)」などが注目されている。家庭や学校が、歪んでいたりして、本人の意思や努力ではどうにもならないところで、不本意な想いをしていることが多く、それが発病のきっかけになっていることもよくあるという[64]

2019年、東京大学大学院医学系研究科分子細胞生物学専攻の廣川信隆特任教授らのチームが、神経細胞のキネシン分子モーターKIF3Bの異常が統合失調症の原因とみられると発表した[65]。2021年、東京都医学総合研究所などの研究グループが、思春期に砂糖を過剰摂取すると、脳の毛細血管の炎症により神経細胞のグルコースの取り込みを低下させ、統合失調症などの精神疾患の原因となる可能性を発表した[60]

検査編集

心理検査編集

PANSS
PANSS(Positive and Negative Syndrome Scale、陽性・陰性症状評価尺度)[66]は、30項目の異なる精神症状につき、1点から7点までの得点をつける。最低点は30点、最高点は210点。
陽性尺度
7項目 - 妄想・概念の統合障害・幻覚による行動・興奮・誇大性猜疑心 ・敵意
陰性尺度
7項目 - 情動の平板化・情動的ひきこもり・疎通性の障害・受動性意欲低下による社会的ひきこもり・抽象的思考の困難・会話の自発性と流暢さの欠如・常同的思考
総合精神病理評価尺度
16項目 - 不安・罪責感・緊張・衒奇症[注釈 15]と不自然な姿勢・抑うつ・運動減退・非協調性・不自然な思考内容・失見当識・注意の障害・判断力と病識の欠如・意志の障害・衝動性の調節障害・没入性・自主的な社会回避
BACS
BACS(The Brief Assessment of Cognition in Schizophrenia、統合失調症認知機能簡易評価尺度)は、言語性記憶、ワーキング・メモリ(作動記憶)、運動機能、注意、言語流暢性、および遂行機能を評価する検査で構成される認知機能評価尺度である[68]

生理的検査編集

血液検査
血液検査は患者の血液採取をし、薬物投与による肝機能の衰えなど(ALT (GPT)など)の副作用の有無を検査するために行う。通常の場合は3か月程度の間隔で行われる。内分泌物質(ホルモン)や電解質の異常、糖尿病の形跡、低血糖症栄養失調の診断にも生かされ、より正確な診断がなされる。外部委託先にビタミンミネラル類の検査項目も追加できるが、そのような依頼は極めてまれである[69]
CT・MRI検査
CTMRI検査にて、側頭葉頭頂葉灰白質の体積の減少を認める場合がある。白質の体積は減少していない。人間間でも脳体積は少なくとも10%は異なるため、一度の体積測定で判定することはできない。
脳体積の減少は長期的な話である。また、抗精神病薬が脳体積を減少させることも知られている[70][71][72][73][74][75]

抗精神病薬#副作用」も参照

SPECTによる検査
SPECTにて、課題遂行中や会話時に通常見られる前頭前野の血流増加が少ないという報告がある。
プレパルス抑制試験
プレパルス抑制英語版)を参照。
遺伝子検査
遺伝子性の疾患を特定するためのツールとしてDNAシークエンシングがある。
尿検査
国内の精神科において尿検査を行うことはない。ピロール尿症におけるクリプトピロールや違法薬物の使用有無を調査することができるが、臨床試験的に尿を検査することがごく稀にある。生化学研究設備があればクリプトピロールなどの化学物質を判別できるが、そのような精神科医療機関は国内には存在しない。
NIRS脳計測装置・光トポグラフィー検査
NIRS脳計測装置光トポグラフィー検査により、問診と同時に脳内の血流量を赤外線により測定する。統合失調症、うつ病双極性障害の判断材料になる可能性がある研究中の検査手法である。日本では僅かだが実施しており、最先進医療の分野である。
補助診断としてデータを見るものの、信頼性は未だ低く、「高価なおもちゃ(原文ママ)」の域を出ていない[76][77]

診断・分類編集

生物学的指標は存在せず[78]、現在の診断は患者の心理症候に依存している[25]。精神科の病気の診断に最も重視される方法は、患者の体験を言葉で語ってもらうことによる問診である[79]が、同時に他の疾患との鑑別のため、各種の血液検査や生理検査が行われる。長時間に渡る問診と共に、エビデンスすなわち科学的な根拠を基とする判断の上で、精神科医は正確な統合失調症の症状を診断しなければならない。精神医学は数字で測れる指標は少ないが、主要な精神疾患については症状や経過の詳細がわかれば通常の診断能力を持つ精神科医にとって、正確に診断することは困難なものではなく、誤診も一般に思われているよりはるかに少ないとしている[80]

診断基準編集

ICD-10での診断基準[81] DSM-IV-TRでの診断基準[81]
  • (1) 下記の症状が、1カ月以上続いてみられる。次のうち1項目以上(明白でなければ2項目以上)
    • (a) 考想反響、考想吹入、考想奪取、考想伝播、自他の境界が敏感で曖昧になる境界障害
    • (b) 他者から支配され、影響され、服従させられているという妄想で、身体、手足の動き、思考、行為、感覚に関連していること、および妄想知覚
    • (c) 患者の行動を注釈し続ける幻声
    • (d) 不適切でまったくありえないような持続的妄想
  • (2) あるいは、次の2項目以上
    • (a) あらゆるタイプの頑固な幻覚:浮動性または未完成の妄想や優格観念(感情に強く裏づけられた観念で、その人の思考や行動を持続的に支配するもの)を伴っていたり、数週または数カ月以上、毎日続くことがある。
    • (b) 思考連合の途絶や改ざん(滅裂思考、的はずれ会話、新語造成)
    • (c) 緊張病性の行動(興奮、蝋屈症、拒絶症、緘黙症、昏迷など)
    • (d) 陰性症状(著しい無感情、会話の貧困、感情反応の鈍化・不調和、通常は社会的引きこもりや社会的活動の低下を伴う):うつ病や神経遮断薬によらないことが明瞭なもの。
    • (e) 人格行動にみられる明らかな、持続性の質的変化(関心の喪失、無目的、無為、社会的な引きこもり)
  • (A) 以下の2つ以上が各1か月以上(治療が成功した場合は短い)いつも存在する。
    1. 妄想
    2. 幻覚
    3. 解体した会話
    4. ひどく解体した行動(例:不適切な服装、頻繁に泣く)、または、緊張病性の行動
    5. 陰性症状
  • 社会的または職業的機能の低下
  • (B) 障害の始まり以降の期間の大部分で、仕事、対人関係、自己管理などの面で1つ以上の機能のレベルが病前に獲得していた水準より著しく低下している(または、小児期や青年期の発症の場合、期待される対人的、学業的、職業的水準にまで達しない)。
  • (C) 障害の持続的な徴候が少なくとも6カ月間存在する。この6カ月の期間には、基準Aを満たす各症状(すなわち、活動期の症状)は少なくとも1カ月(または、治療が成功した場合はより短い期間)存在しなければならないが、前駆期または残遺期の症状の存在する期間を含んでもよい。これらの前駆期または残遺期の期間では、障害の徴候は陰性症状のみか、もしくは基準Aにあげられた症状の2つまたはそれ以上が弱められた形(例:奇妙な信念、異常な知覚体験)で表されることがある。
  • (D) 統合失調感情障害と、「抑うつ障害または双極性障害、精神病性の特徴を伴う」が以下の理由で除外されていること
    1. 活動期の症状と同時に、抑うつエピソード、躁病エピソードが発症していない
    2. 活動期の症状中に気分エピソードが発症していた場合、その持続期間の合計は、疾病の活動期および残遺期の持続期間の合計の半分に満たない。
  • (E) その障害は、物質(例:乱用薬物、医薬品)または他の医学的疾患の生理学的作用によるものではない。
  • (F) 自閉スペクトラム症や小児期発症のコミュニケーション症の病歴があれば、統合失調症の追加診断は、顕著な幻覚や妄想が、その他の統合失調症の診断の必須症状に加えて少なくとも1カ月(または、治療が成功した場合はより短い)存在する場合にのみ与えられる。

下位分類編集

下位分類のフローチャート

分類はICD-10により[82][83][注釈 16]、「妄想型」「破瓜型」「緊張型」の3つが代表的である[84]

妄想型統合失調症 (ICD-10 F20.0 Paranoid schizophrenia)
連合障害や自閉などの基礎症状が目立たず妄想・幻覚が症状の中心である。統合失調症はかつて早発性痴呆症と呼ばれていたように早発(思春期から青年期)することが多いが、当該亜型は30代以降の比較的遅い発症が特徴的であるとされる。薬物療法に比較的感応的とされるが、抗精神病薬の服薬をしても精神症状がとれず慢性的に持続する症例もある。
破瓜型統合失調症 (ICD-10 F20.1 Disorganized schizophrenia)
破瓜型(Hebephrenia)[注釈 17]は思春期や青年期に好発とされる。感情や意志の鈍麻が主症状で慢性に経過し、人格荒廃に陥りやすい[85]。今日では破瓜型は社会的・精神医学的な発達の結果として、比較的軽症な程度ですみ、人格のまとまりを保持する症例が報告されるようになってきている。アメリカ精神医学では、破瓜型のことを「解体型(Disorganized)」と呼んでいる。
緊張型統合失調症 (ICD-10 F20.2 Catatonia schizophrenia)
筋肉の硬直症状が特異的で興奮・昏迷などの症状を呈する。陽性症状時には不自然な姿勢で静止したまま不動となったり、逆に無目的の動作を繰り返したりする。近年では比較的その発症数は減少したと言われる場合がある。
型分類困難な統合失調症 (ICD-10 F20.3 Undifferentiated schizophrenia)
一般的な基準を満たしてはいるが、妄想型、破瓜型、緊張型のどの亜型にも当てはまらないか、二つ以上の亜型の特徴を示す状態。
統合失調症後抑うつ (ICD-10 F20.4 Post-schizophrenic depression)
急性期の後に出現することが多く、自殺などを招くことがある。急性期を脱した20%から50%に出現する[86]。治療法は、うつ病にほぼ準じる。
残遺型統合失調症 (ICD-10 F20.5 Residual schizophrenia)
陰性症状が1年以上持続したもの。陽性症状はないかあっても弱い。他の病型の後に見られる急性期症状が消失した後の安定した状態である。
単純型統合失調症 (ICD-10 F20.6 Simple schizophrenia)
連合障害、自閉などの基礎症状が主要な症状で、妄想・幻覚はないかわずかである。破瓜型の亜型に含めるケースもあるが、破瓜型に比べ内省的で病識の欠如がまれであるとされる。
その他の統合失調症 (ICD-10 F20.8 Other schizophrenia)
その他の統合失調症は医療診断を示すために使用することができない。
その他の統合失調症には、F20.81(Schizophreniform disorder)とF20.89(Other schizophrenia)の2種のコードが含まれる[87]
遅発性統合失調症、体感症性統合失調症、統合失調様状態、急性統合失調症性エピソードの4つの下位分類がある[88]。短期統合失調症様障害(F23.2)は除外される[89]

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統合失調症,詳細不明 (ICD-10 F20.9 Schizophrenia, unspecified)
統合失調症、特定不能のもの。
モレル・クレペリン病、統合失調症の2つの下位分類がある[90]

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経過分類編集

第5桁の数字(F20.XYのY)は、経過分類に用いる[91]

第5桁の数字 経過
0 持続性
1 エピソード性[注釈 18]の経過で進行性の欠陥をともなうもの
2 エピソード性の経過で固定した欠陥をともなうもの
3 エピソード性の経過で寛解しているもの
4 不完全寛解
5 完全寛解
8 その他
9 観察期間が1年未満
出典:[91]

先進事例編集

先進的な医療、研究事例として統合失調症の判別に光トポグラフィー脳SPECTなどの装置による画像診断をおこなうことがある[93][94][95