ジープはクーラーボックスから、
キンキンに冷えたサッポロを取り出し、
ゴリラと僕に手渡した。
「かんぱーい!」
取り敢えずは自己紹介である。
ジープは、長期休みを利用して北に向かっているとのこと。
職業は明かさなかったが、社会科の教員ぽい感じがした。
2週間かけて、
こうしてひとりで旅するのが夏の風物詩になっているらしい。
ゴリラは、この春に高校を卒業後、日本一周を始めた。
物静かで控えめだが、
丁寧な言葉遣いの向こうに意志の強さを感じる。
ジープと同じく、これから北に向かうところのようだ。
潤滑油が進み、互いの会話が弾んできた。
実はゴリラはゴリラじゃなく、モンキーとのこと。
高校時代に買ったモンキーで旅に出る計画を立てたが、
長距離走行に不安を覚えたため、リアサスを武川に、
タンクの容量9リットルのゴリラのタンクに変えた。
リアには大きなボックスをつけ、
積載性を高めた。
タンク変更に伴い、
側面に「50R」と印字された輸出仕様のシートに変えてある。
「でもやっぱり、125ccが理想的ですね。」
走行性能、燃費、維持費などを考えると、
125ccのバイクが長距離ツーリングには適していると実感したらしい。
当時は、DT125、MTX125、KE125、RA125など、魅力的なオフ車が多かったが、
4ストで17リットルガソリンタンクのXL125パリダカがベストチョイスであろう。
第1種原付自転車の法定速度が時速30kmという、
あまりにも非現実的な法制度において、
自らの安全を確保するには、
51cc以上のバイクが適してると言える。
あれだけ125ccのバイクの車種が豊富だった1980年代。
高速道路に乗れないことと、ナンバーの色が不評だったことで、
第2種原付自転車は本当に人気がなかった。
最近になって、街中に黄色やピンクのナンバーが増えたことは喜ばしい事である。