ドーム型のテントを張るのには、

それほど時間はかからない。

奇数のポールを連結して長い支柱を作り、

2本をクロスさせて本体に通していくだけである。

 

グラウンドを確認し、地面の凹凸や石があれば位置をずらす。

位置と出入り口の向きが定まれば、

4隅をピンで固定し、フライシートを張る。

風雨の影響がなければ、これでOK。

 

F Tから下ろした荷物をテント内に収納し、

ブーツからサンダルに履き替えた。

カーキ色のテントの中からは、

松の太い幹と、その間に青い空と水平線が見える。

 

テントの出入り口に座り、外に足を投げ出し、

買ってきたキリンのタブを引き上げた。

乾いた喉にあたる細かい泡が心地よい。

あっという間に2本が空になった。

 

しばらくすると、車の近づく音が聞こえた。

ジープだ。

屋根も無いしドアも無い。

相模ナンバーをつけている。

 

「コンチワ」

 

歳の頃は30代、

髪は肩まで伸び、

茶色のセルフレームの色眼鏡をかけ、

無精髭が似合っている。

 

中学時代、ボーイスカウトをしていた時の大学生の先輩は、

ヒッピースタイルの影響を受けていた。

兄貴のような存在だった先輩たちに僕達は憧れた。

ジープから降りて来た運転手はそんな雰囲気だった。

 

彼が荷を解いていると、

今度は小排気量のバイクの音が聞こえてきた。

ゴリラだ。

オレンジ色のガソリンタンクが眩しい。

 

ヘルメットを脱いだ彼は軽く会釈し、

荷物を降ろし、手際よくテントを組み立てた。

自分より年下かな?

物静かで表情には少年のようなあどけなさが残っている。

 

「ここ、料金かからないみたいだね。」

 

ジープが話しかけて来た。

 

「共用設備は使えないみたいですけど、自由に泊まっていいみたいです。」

 

キリン2本を開けた赤い顔で応えた。

 

「あー、もう呑んでんだ、じゃ、続きやろうぜ。」

 

ジープはゴリラにも声をかけ、

見ず知らずの3人は、

まだ明るいキャンプ場で車座になった。