抗うつ薬がいつ頃効いてくるか?のつづき

 

 治療効果発現について、イギリスの有名な「モーズレイ処方ガイドライン」で

 

 「効果の出るパターンは様々だが、その薬が効くなら少なくとも“3週目”には何らかの改善がみられるはずである。従って3週目の時点で何の改善もなければ、治療法の見直しが必要となる」

 

 と書かれているように、いたずらに長く経過をみるより、抗うつ薬の変更や増強療法を考えるべきと思う。もちろん、患者さんの生活状況、休養がとれているか、ストレス因が継続していないか、を改めて確認するのも大事(多少の無理はしがちだが)。

 

 患者さんは主観的によくなったら伝えてくれるので、それが一番の効果判定であるが、本人は気づかなくても、客観的な所見、ちょっとした表情の変化や身のこなしのよさ、ゆとりのある会話、など、診察の場で適切に評価すれば、“何らかの改善”に気づくことも多い。また具体的に話を聞けば、本人が意識していない、生活上の変化が見つかったりする。家事が前よりできるとか、ゲームをするようになったとか、バラエティ番組を見たとか(ドラマはしんどい)、子供を怒らなくなったとか・・。そのように病状や経過がきちんとみれないと、抗うつ薬の効果が判定できないし、きちんと診られてないことも案外あるように思う。

 

 あと気になったのが、「日本うつ病学会治療ガイドライン」で以下のような記述がある。

 

 「第一選択薬に反応があるかどうかを判断する観察期間の長さはケースバイケースで判断する。早い段階(例えば2週間)で目処がつくこともあるが、3-4週間での見極めが困難なことも少なくない。4-6週、場合によっては8週間の時間をかけて抗うつ効果が出てくることもしばしば経験する・・」

 

 これはかなり中途半端でよく分からない表現である(いつまで待てばいいの?という感じ)。現実的には、1カ月待って、全く改善しないのであれば、患者さんも同じ治療を続けたい、という気にならないと思うのだが。

 

 いずれにしても、抗うつ薬が効いているかどうか慎重に見極めつつ、効いてない時、効果がいまいちの時に備え、次の一手も考えて治療したい。逆によくないパターンとして、一つは効いてないのに漫然と同じ薬を出し続けること、二つ目は、効いているのに気づかず、あれこれ薬をいじって訳が分からなくなってしまうことだろう。自分はせっかちなタイプの精神科医なので、早く次の手を繰り出しすぎて、後の悪いパターンに陥らないように注意をしているのだけど。