下記はタイのCMで、以前にも見たことがあったのだが、久しぶりにユーチューブで視聴した。どれも短時間だが心にすっと入ってくる、すてきなCMである。

 

 第1話は子供頃にたった1回受けた親切へ恩返しの話。第3話は、障害を抱えながら愛情たっぷりの父と、その愛を受け入れられない娘の物語で、ともに終盤が感動的で、心を揺さぶられ、本気の涙が出るレベル。

 

 

 ただ自分としては、第2話の朴訥な青年のCMが大好きだ。他の2つに比べて地味なようだが、しみじみと優しい気持ち、温かい気持ちにさせてくれる。

 

 日々の暮らしの中、知っている人も知らない人へも、できることを毎日、自然に行う地味な青年。目立たず、あまり感謝もされず、少し変わっているな、と思われるくらいの彼の日常。

 

 「毎日こんなことをして彼に何の見返りがあるのだろう」

 

 CMで見ている人なら、彼の親切心あふれた姿は分かるが、実生活では目立たない存在なのかもしれない。

 

 「何を手に入れることもなく」

 「裕福でもなく」

 「誰に知られることもない」

 

 最後に、彼が寄付をしていた女の子がいなくなり、一瞬呆然とした彼の前に、ランドセルを背負った彼女が現れる。戸惑いながらも笑顔を見せる少女と、それを受け止める彼の表情は、温かい感動を誘う。

 

 「でも彼はそれ以上のものをすでに手に入れていた」 

 

 その後も彼の日常は変わらない。もとより彼の周りには笑顔があふれていたのだから。

 

 知られようが知られまいが、気負わず、自然に、誰にでも優しくできる人。そこには自分の損得もない。目立たないけど、人に慕われ、尊敬されている人、というのはこういう人なんだろう。そして世界のあちこちで、秘かに静かにそういう生き方をしている素敵な人がたくさんいるのだろうと想像する。立派な偉人や有名人にも負けないような。

 

 そしてこのCMの青年から、宮沢賢治の名作、「雨にも負けず」を思い出した。

 

 つづく