滝沢カレンさんはもともとモデルさんだが、最近はテレビのバラエティー番組に出て人気のタレントさんである。その可愛らしいキャラと、ユニークな発想や言葉づかいなどで、多くの芸能人の方に好かれている様子。

 

 自分で滝沢さんを見ていて面白いな、と思ったのは、タレントの方々を四文字熟語で例えるとどうなるか?という企画。現実にはない創作言葉だが、ポイントをついた独特の視点による表現だった。

 

 例えば、中居正広さんを「支配抜群」、黒柳徹子さんを「早口国宝」、芸人の東野幸治さんを「薄情大王」、出川哲郎さんを「職業激痛」。サンシャイン池崎さんには「小声希望」で、最近出てない宮迫博之さんを「男前意識」というのには笑えた。一番面白かったのは、俳優の堺雅人さんを「恵比須顔」。これにはご本人もえびす顔で苦笑い。この言葉センスは天才!と絶賛されるのも納得できる。

 

 先日彼女がレギュラーを務めるトークバラエティー番組“行列のできる法律相談所”を見て「おっ」と思うことがあった。出演者の思う“器の大きい人と小さい人”という企画。出演者の体験談から、あの人は器が大きい、小さい、とか冗談も交えながらの話である。その中で「カレンちゃん、あなた自分の器をどう思う?」と聞かれると・・

 

ちょっとずれる答えだが、滝川さんは、「おばあちゃんから“あなたは人間の底辺なんだから”と言われ、自分のことはそう思っている」と言う(彼女は祖父母に育てられた)。当然、他の出演者から「そうはいってもこれだけ売れて有名になっているんだから、“底辺“なんかじゃないでしょ?」と突っ込まれた。それでも照れたような顔で「いやでもずっと底辺です」

 

 このやり取りを見ていると彼女の育った環境とそれによる今の人柄がうかがわれて微笑ましい。滝沢さんは面白いけどおバカなキャラのタレントさんとして売っており、実際そうかもしれない。ユニークな発想は素晴らしいが、先の四文字熟語では、久本雅美さんに「無駄美人」とか高畑充希さんへは「目鼻口近」など、普通に考えると結構失礼なことを言っている。芸能界は一般社会と比べても、かなり礼儀にも厳しい世界なので、笑いのネタだとしても、人によっては厳しく受け取られ、仕事に影響してもおかしくない。

 

 それでも彼女が売れ続けている理由は、見かけとのギャップもあるかもしれないが、彼女の素直で謙虚な人柄なんだろう。厳しい祖母とはいえ、さすがに“底辺”という言い方はかなり重たいし、ネガティブなもの。しかしその根本におばあちゃんからは、彼女を全力で愛し育て上げる、という気概をもっての言葉なのだろう。だから“底辺”と言いながらも自尊心をもって伸び伸びと育っていった(と推測)。TVでも「おばあちゃんの家族でよかった」。彼女の品のよさもこういうバックグランドがあるから、と納得した。

 

 このような話をさらっという滝沢さんも素敵な方だと思った。

 

 ちなみに精神科医の先輩より、患者さんに対する際に、「“たまたま”相手が患者さんで、自分が医者という上のような立場だが、少し状況が違えば、自分が弱い患者になってもおかしくなかったんだから」と言われた。そして自分の立ち位置を上に置きすぎないように、と教育された(もちろん“底辺”とはいわないが)。もちろん治療者として俯瞰した目線で冷静に見ないといけないし、病気の治療においては対等ではないが、人としては対等関係でいたい。逆に患者さんを見て「大変な症状を抱えながら、こんなに一生懸命生きていてすごい!」と思ってしまうこともしばしばある。常に希死念慮とフラッシュバックを抱えながら働いている人、酷い幻聴に苦しみながら家族を支えている人、発達障害で不器用・感覚過敏によりあえぎながら親の介護をしている人・・。いずれも治療が難しい方々だが、自分が想像する以上に苦しいのだろうと思う。

 

 そういうこともあり、精神科医は患者さんに畏怖の念を持つことも多く、その分、謙虚に接することができるようだ。その姿勢は治療関係を作るのにも役に立つ。

 

 最近、紹介されてきた双極性障害の女性にこう言われた。「やっぱり精神科の先生が一番優しいですね」。彼女は数か所の精神科病院やクリニックで治療を受けてきたが、どこに行っても優しい先生ばかりだったという。内科や整形外科でもいい先生はいるけど、精神科は全然違うらしい。そういう話をしながら、「この患者さんの治療は上手く引き継げそうだな」とほっとしたり。もちろん安定しているから、こういう余裕のあることを言ってくれるのだけど。