インヴェガ(パリペリドン)は比較的新しい非定型抗精神病薬。リスペリドンの主な活性代謝物のため、強いD2アンタゴニスト作用+5HT2Aアンタゴニスト作用を持つなど、効果も当然よく似た薬である。
違いとしては、まず徐放錠なので、血中濃度が安定しやすく、1日1回投与で副作用が少ない。次いで、α1アンタゴニスト作用が少なく、リスペリドンでよくあるふらつきが少ないという点。三つ目としては、これが最大の利点だが、パリペリドンには持続性抗精神病注射薬(デポ剤)であるゼプリオンという製品があること。
デポ剤については、患者さんを無理にでも治療を受けさせようとする、という否定的な意見もあるが、病気の再発~再入院、という辛い経過を避けるのには非常に有効な治療法と思う。どうしても統合失調症の人は病識が少ない(知的に高い人でも)ので、アドヒアランスの安定した効果は当然だが、血中濃度の安定による副作用の少なさ、長期に治療を続けられることによる陰性症状の改善~社会復帰にもつながるから。
ただリスペリドン内服の人なら、敢えてインヴェガを通らず、投与量を考慮の上、ゼプリオンへスイッチもできる。ちなみに驚くことに、3ヶ月持つというセプリオンTRIという注射剤も11月に発売されている。
ということで、以下がまとめ。
有効性・利点
・リスペリドンと同等の効果で副作用が少ない。特にα1アンタゴニスト作用がないため、ふらつきが少ない
・リスペリドンが合う症例では、同等の抗精神病作用が期待できる。
・1日1回投与で、血中濃度が安定(その分副作用も減る)
・α2アンタゴニスト作用による、抗うつ効果も(リスペリドンもあるが)。
・症状の安定に非常に有効な、デポ剤としてのゼプリオンの存在価値
・リスパダールコンスタより安価で、月1回で済む
・セプリオンTRIという3ヶ月に1回の注射という最新薬も開発された。従来のゼプリオン1か月投与が安全と分かってからだけど。
使い方 CP1.5~2
・3~6mgでスタート、5日以上あけて3㎎ずつアップ。最大12㎎。
→病状が激しい時は、最初はリスペリドンでガツンと行って、その後にインヴェガを使うことも
・リスペリドンに比べ力価は1/2か2/3程度(6mg錠でリスぺリドン3-4mg)
・セプリオン:初回150㎎、2回目100㎎(1週後)、以後は4週毎に75㎎(25-150㎎)
→最初の2回は三角筋に投与するのは、吸収されやすいから =その後は大殿筋でもよいが
・敢えてインヴェガにせずとも、リスペリドンからゼプリオンにするのも可
・リスペリドン3-4㎎=インヴェガ6㎎=ゼプリオン75㎎/4週=コンスタ37.5㎎/2週
副作用・デメリット
・徐放剤なので、割れない。
・プロラクチン上昇はやはり多い
・リスペリドンより値段が高い=敢えてこちらにしなくてもいい人
・最大12mgまでなので、リスペリドン換算として6mg程度で、急性期には不十分な時も
・EPSはやっぱりそこそこ出る
・当初、ゼプリオンは死亡率が高いという報告もあったが、そうでもないよう
印象
・急性期にも確かに使える。リスペリドンのように、陽性症状への効果出現は早い
・リスペリドンより賦活しやすく、抑えつけ感は少ないが、陽性症状安定しない時も
・退院後のゼプリオンを見据えたインヴェガ使用
→実際は、入院中はリスペリドン、退院前からゼプリオンということも多い
・ゼプリオンへ切り替えの際、いきなりインヴェガを中止してよいことになっているが、最初は少しの期間オーバーラップした方がいいと思う。また三角筋注射が痛いので大臀筋に注射する人などは特に
・急性期を乗り切った後、デポ剤は陰性症状の改善につながりやすいと思う
→セプリオンで徐々に2か月~3か月~半年~1年と徐々に、認知機能・意欲の改善や、気分が安定してくる場合もしばしば
→デポは副作用少なく、陽性症状以外も全般の精神症状をゆっくり改善させる。
→デポOKの患者さんに、積極的に勧めていきたい
・ゼプリオンTRIは3ヶ月毎というが、果たしていいことか?いったん注射してしまうと万一大きな副作用が出た時は困るし、次の受診までの期間が長すぎて忘れたりとか。