精神科外来では初診の際には、精神科医の診察前に精神科ソーシャルワーカー(PSW) に予診をとってもらうことが多い。問診票に、受診に至った症状がいつ頃からあるか、など簡単に記載してもらうのだが、精神疾患に固有であらかじめ欲しい情報も多い。精神科医は、予診で得た情報をもとに、患者さんのそれまでの生き方~現在の生活と主訴をイメージ、鑑別疾患を想定し、診断に必要な質問を準備するなど、スムーズな診察の組み立てができる。しっかりした予診があれば、医師の方で必要な情報を聞き漏らすことも少なくなる。ばたばた診察していると、抜けてしまうこともあるので・・

 自分として「これくらいは予診で聞いておいてね」とPSWさんにお願いしたリストで、笠原先生の本をもとに作ったもの。こんなこと書かなくても上手な予診をとってくれる頼もしいPSWさんは、診察も楽にしてくれるだけでなく、自分がない視点での患者さん情報をくれ、非常にありがたい。

 

1. 場所:初めての病院で緊張している患者さんが、静かで落ち着いて話せる場所。

 

2. 「これは予診です」とまず伝え、基本的な情報だけを聞くことを説明

(例)「私は病院のソーシャルワーカーです。医師の診察の前に、あらかじめ少しお聞きしたいことがありますので、よろしくお願いします」

→精神科ならではのプライバシーに関する情報提供が必要ということもきちんと伝えておく

 

3. “主訴”および受診に至る経過を簡略に聞く:細かい情報を得るというより、患者さんへのとっかかり~大まかな流れを聞く程度で十分。話が長ければ「詳しい話は先生にして下さいね」

→患者さん・家族が、病院で初めて話をするのが予診者であり「温かく迎えてくれている」という印象を持ってもらうような雰囲気づくり

 

4. 家族と一緒に来院した場合:本人の希望できたか、それとも家族に連れられてきたか?

→繊細な質問なので、丁寧に聞く。家族関係が難しそうなら、無理に踏み込まなくてもよい。

 

5. これまでの生活能力は?:病気になる前の状態。できればこの数年間について

①    社会的機能(仕事・対人関係など)、②日常生活能力(普通に自立した生活ができていたか?)

→重要:精神疾患の重症度に関与

 

6. 性格について

①    内向的か外交的か「人付き合いは好きな方ですか?」、②几帳面か大雑把か?③人に気を遣うタイプか?④気分屋か?⑤活発なタイプか?など

→「どんな性格ですか?」と聞く場合、「普通です。変わったことありません」などと言われることも多いので、少し具体的に

→DSMではあまり言及されないが、本質的な診断上重要

 

7. 家族について

家族の精神疾患は?

家族構成の図においては、年齢・性別、亡くなった人では死因(自殺者は?)。同居の家族以外も、祖父母、両親・子供・兄弟はもちろんそれぞれの家族構成も。離婚・再婚歴。

→内因性疾患や発達障害などは遺伝性因子大きい。支援してくれる人、ストレスになる人

 

8. 生活歴:病歴と重複する重要なもの

(幼稚園)~小学校~中学校~高校~大学・就職~

①幼児期に両親と離れて生活したことはなかったか?

②学校で友人関係・成績

③職歴(転職が多くないか?)、

④結婚の有無、家族との生活

⑤飲酒・喫煙

 

9. 精神科既往歴・通院歴:紹介状の有無

 

10.  身体疾患の既往歴、合併症

アレルギー、糖尿病、高血圧、甲状腺機能異常など、通院状況、既往歴(過去の病歴や手術歴)

 

11.  患者さんの印象(家族も)=医師と違う目で見た印象を知りたい