基本的には、抗うつ効果が得られれば、うつ病の症状は全般的に改善しうる。しかし個々の症状に対する治療を並行して行うと改善が早い。

 

 特に焦燥感が強い時は、抗うつ薬で自殺など衝動行為のリスクが高まることあり。うつ病は回復期に自殺が多いとよく書いてあるが、これは、抑うつ気分がまだ強いにも関わらず、行動するエネルギーが高まるということ。そういう意味では、治療早期も、焦燥感の強い人に、抗うつ薬で行動するエネルギーだけアップすると危ない。

 

 不眠と不安については、苦痛が大きいので、対症的な薬剤にて、早く楽になり、治療意欲も高まる。ちなみに不安というのは、焦燥感と近い。

 

 種々の症状へのアイデアのまとめ。どれを選択するかは、患者さん毎に判断。

 

1.焦燥感強いとき(事故を起こさないように)

a. リフレックスやルジオミールなど、鎮静作用のある抗うつ薬

b. メジャー少量追加:ジプレキサ2.5-5mg、セロクエル25-50mg、エビリファイ3-6mg、リスペリドン1mg

c.  デパケン追加

d.  鬱々としながら苛立つ時に、BZ(リボトリール、メイラックス)も結構いい

 

2.不安強いとき

a.  夕から眠前にBZ =即効性。リボトリール0.5-1㎎、メイラックス0.5-1mg(こちらの方がうつが晴れるという人が20-30%多い)

b.  頓服は、眠気が少ないワイパックス0.5㎎が使いやすい。コンスタン0.4mgはしっかり

c.   セロクエル12.5-25mg、エビリファイ3-6㎎:焦燥感を煽らず安全。頓服にもよい

d.   軽いとき:レボトミン5-25mg(+抗パ薬)→単極性うつの不安に、双極性では退行?

 

3.不眠への対応

a.  ゾルピデム、ブロチゾラム、ベンザリンなど

 →即効性で不眠が強い人には初期に使っていいと思う

b. ルネスタ

c.  ベルソムラ、ロゼレム =流行りだが、BZ系より効果が出るのが遅い

d.  デジレル25-50mg、ルジオミール(10-25mg)などTCA少量追加

e.  眠いメジャーを少量:(非定型)セロクエル、ジプレキサ、(定型)コントミン、レボトミン

 →抗うつ効果もあるので、睡眠薬より良いことも

f.   漢方薬:抑肝散(神経が高ぶる不眠)、半夏厚朴湯(気を病む:つかえや眩暈)

g.  朝の目覚めが悪い人に、エチゾラムもよいらしい

 

4.精神病症状(精神病性うつ病)

a.  重症うつ病で、幻覚妄想、興奮、言動の滅裂など、入院が必要なレベル

b.  うつ病全体の15%、老年期は45%、入院では15%

    →高齢者では身体的にも弱いため、治療を急ぐこともしばしば

c.   自責的な妄想:罪業妄想、微小妄想、貧困妄想

d.   抗うつ薬+メジャー、昔はアモキサンだったらしい(代謝産物にD2アンタゴニスト作用)

    →メジャーの選択としては、精神病性では焦燥感を伴いやすいので、オランザピンが一番安心。高齢者の場合や、抗うつ効果を考えると、副作用の少ないクエチアピンも使いやすい。鎮静をさほど要しないなら、ロナセンやエビリファイも。リスペリドンはうつ病には重い印象であまり使わない。新しい薬はラツーダもよいかも。

 メジャーの量としては、少量から(オランザピン2.5-5mg、クエチアピン25-100mgくらい)。高齢者ではEPSに注意

e.  重症うつ病では、アナフラニールの点滴を入院後に数日間行うべき(後述)

→ダメなら、命の危険もある人ではECT