3.初回もしくは再発早期の治療のストラテジー(個人的な好み)
急性期患者に対しての具体的な治療を自分なりにまとめました。
a. 幻覚妄想で興奮も強い時
・効果出現の早さ、幻覚妄想への効果の高さ、しっかり鎮静、を考えて(もちろん入院にて、隔離を要する人などに)
・オランザピン、リスペリドン(インヴェガ)は確実性が高いので、高用量をしっかり投与すると安心
→躁状態が強いなら、ワイパックスや、デパケン・リチウムを最初から併用
処方例1)
①オランザピン15-20mg 1x眠前
②ワイパックス1mg 2x朝夕
明らかな躁状態が経過中に見られる人なら、これに加え気分安定薬
➂デパケンR 400㎎ 2x朝夕、もしくは炭酸リチウム400mg 2x朝夕
不眠が強ければ、眠剤も
④ブロチゾラム0.25㎎ 1x眠前
入院時の興奮・不穏が顕著なら、これに注射を加えることも
→ジプレキサ注10mg、レボトミン注25㎎、コントミン注25㎎を筋注(この順に強力)
処方例2)
①リスペリドン4-6mg 2x朝・夕
②ブロチゾラム0.25mg 1x眠前
これらから始めて、経過を見ながら増減や、BZ、眠剤や気分安定薬、時に眠前にコントミンなど追加
b. 初発で外来治療を希望する人(自宅で生活できるレベル):
エビリファイ、レキサルティ、ロナセン、インヴェガなど、非鎮静系で、肥満などの副作用が少なく長期的に使える薬を使いたい
・患者が飲みやすく、副作用が少ない薬
・1日1回1-2錠にしたい
→当然だがアドヒアランスよくするために
・初診の人や病識の少ない人は、薬に対する不安が強いことを忘れない
→理解力も低下していることが多いが、おそらく一緒にいる家族にも協力を依頼
=「よく分からないけど、みんな(医者と家族)がそういうのなら、飲んでみます・・」
・これらは鎮静が少ないので、不眠があるなら眠剤併用を積極的に
→不眠を一番問題とする人も多いので、睡眠の改善は、治療意欲につながる
・ただし陽性症状が強めで行動が不安定な人では、インヴェガかジプレキサが安心(1日1回)で、リスペリドン液1ml、ジプレキサザイディス2.5mg、などを頓服に
→不安やイライラ感に、軽い頓服として、セロクエル25mg(不眠にも)やエビリファイOD3mg
・それぞれ、幻聴で辛い時や不安時などに頓服を出しておくのもいい
→そういう気遣いを見せることで、安心感を持ってくれる、という意味も
処方例1)
① レキサルティ1㎎(or エビリファイ6-12mg)1x眠前
±(不眠があれば)②ルネスタ1㎎ 1x眠前(or 不眠時の頓服)
=最近使って、結構よさそう。副作用が少ないパターン
処方例2)
①ロナセン8mg 2x朝・眠前(or インヴェガ6mg 1x眠前)
② ブロチゾラム0.25mg 1x眠前 など
=早くしっかり効かせたいとき。
c. 治療開始してからの診療について
・初診なら、必ず翌週までに受診してもらい、病状を確認
→普通は1週間である程度の効果が出ると思う =話の内容だけでなく、会話のスピードやイントネーション、まとまり、緊張感、表情や顔色、全身の動きなど、しっかり観察、初回と比べてどうか?
・自覚的に「あまり良くなってません」と言われても・・
→よくなったか?変わらないか?悪化したか?微妙な変化から、薬の効果を判定し、調整する力を
・軽度でも副作用出ていないか?
=よさそうならすぐ増量したくなるが、慎重に。同量で継続~増量する際も少量ずつ
・慌てて増量したために副作用でると、患者さんは初めての経験で、薬物療法への不安が大きく、治療継続が難しくなることも
例)レキサルティなど、添付文書で、数日で2mgにしてしまうと、意外とEPS出てがっかり。そのせいで患者さんが薬に対する不安感↑
・よさそうなら継続~少しずつ増量、効いてないなら、2-3週間ぐらいでどうするか?病状に余裕があればもう少し見てもいいけど
→自分は積極的に変える方だけど、悪化していないなら、慌てない状態なら、もう少し我慢していいが
・患者や家族が症状や治療に焦りを見せるときに、自分も巻き込まれがちだけど、冷静に効果を判定し
てから
・外来希望でも、陽性症状強く、行動の不安定な人や希死念慮のある人は、早め入院を勧めること
(おまけ)初発時にあまり使いたくない薬(主剤として)
・シクレスト、セロクエル(ルーラン)や定型薬
→ただし、眠剤的な使い方、興奮時の頓服や、難治性患者の再発急性期なら使っていいけど