(透析開始後に、レビータイプの認知症になったおばあちゃんの話のつづき)

 

 

レビー小体型認知症かな、と思いつつ、現在内服している処方薬を確認した。透析中なのでさほど多くはなかったが、ある高血圧治療薬が含まれていたことが気になった。

 

それは・・・アムロジピン5

 

アムロジピンは、いわゆるカルシウム拮抗薬に分類される降圧薬。血圧をなだらかに下げて変動を少なくし、安定した効果が得られるため、循環器内科医を始め、多くの内科医に好まれる人気の降圧薬である。

 

ところが意外と知られていないのは、この薬の精神神経的な副作用。カルシウム拮抗薬の全般に言えることだが、高齢者においては、パーキンソン症状を来すことが少なくない。しかし、歩行障害を生じたり、表情が乏しくなっても、齢なのだからこうなってきているのだろう、と家族も処方医も案外気づかなかったりする。それに加えて、認知機能を低下させて、思考力・記憶力の低下が目立つようになる。ちょっとぼんやりという程度の意識障害や、幻視・妄想、気分の変動を伴うこともある(ほぼレビーにみえる)。

 

 実はアムロジピンは、息子と同居後の総合病院へ通院開始してから処方が開始されたことが分かった。

 

 この経過から、レビーを意識しつつも、パーキンソン症状を伴う薬剤性認知症の可能性が高いのでは、と考えた。まずはアムロジピンを中止するか、他のタイプの降圧薬に変更するよう紹介元の透析病院にお願いした。透析中の人は、薬の使い方が難しいこともあり、無理に向精神薬を投与しないよう、治療上の安全性を重視したというのもある。

 

 すると、2週間後の再診時には、息子さんに手を引かれながらも、歩幅を始め、歩行は明らかに改善していた。表情も出てきてうれしそうに「元気になってきました」「物忘れも減ったようです」と述べ、初診時とは明らかに違う。会話の理解や話しぶりも自然になっている。手の振戦も認めなくなった。

 

薬については、アムロジピンを中止後も血圧はさほど変化なく、別に薬を追加されてなかった。息子さんによると、減薬後は、奇妙な話もしなくなり、「元のような明るく物分かりのよい母に戻った」という。透析先の病院でも、落ち着いて透析を受けることができるようになった。

 

ちなみに後日、長谷川式認知機能評価スケールを再度行うと、27点と大きく改善しており、「今のように元気なら(うちの病院には)もう来なくていいですよ」と伝えている。

 

今回のまとめにつづく

 

 参考

高血圧治療薬とレビータイプの認知機能障害 その1