統合失調症の特徴 -診断のために忘れないこと-
統合失調症というと、派手な幻覚妄想をイメージしがちですが、そのような症状が目立たない人もいます。それよりも、患者さんの雰囲気、対人接触性や表情筋の動きの不自然さ、妄想ではなくても、話の流れの違和感など、直接診察した所見が重要。
また以前の治療歴で、気分障害や不安症と言われていた人が実は統合失調症というのも時々みます。比較的軽症で大きな問題行動はなかったけど、精神的に安定せず、徐々に能力低下が進んで仕事や生活ができなくなるような人。最近は“投稿失調症の軽症化”も言われているけど。
結局、診断や治療に大切なのは、話を聞くより患者をみること、つまり観察力、あとは経過を含めて患者の全体像からよく考えること。
1. 対人緊張が強い
・手に汗かく、顔をゆがめる、近寄ろうとしない、視線を合わせない、不自然に焦っている様子、など
・話せる人なら、緊張し戸惑いつつも、懸命に幻覚妄想について訴えてくるが、まとまり悪く、同じ話を繰り返したり、しばしば滅裂
2. 自分でも何に困っているか分からず、戸惑っている人
・おおむね家族に連れられて受診
・時に困惑した様子で1人で来て、うつや不安など言うも、訴えがはっきりしない人も =会話のまとまりが悪い
→幻覚妄想があっても、自分ではよく分からない、上手く表現できない
・後から家族に来てもらいたいが、本人が嫌がる事もあり、診断の見立てに困る
3. 独特の反応の鈍さ
・実は幻覚妄想が活発なのに、却って鈍くみえたりする
・患者の観察力が試される
=表情筋の動きが悪い(のっぺりした表情)、不自然な目の動き、話しが通じ合わない変な感覚、応答もずれる 「べったりと動かない」と教科書に書いてあるが
→ある程度そういう患者さんを経験しないと分かりにくいと思う
(発達圏や重いうつ、脳器質障害などによる亜昏迷で、上手く話せない人もいるけど)
4. なんとなく元気がない人で、幻覚妄想を語らない人
・明らかに奇妙でありえない話(妄想)を、纏まりなく話すなら、統合失調症と思うけど、それを見せない人
→上手く聞き出すための鍛錬を。ふとした質問で、幻覚妄想があったと分かることも
・精神状態が改善してきて、初めて自分が幻聴や妄想を抱いていたと認識する人もいる
5. 以前、うつ病、不安障害、躁うつ病などと診断されたが、あとから統合失調症と分かること
・目立った幻覚妄想の訴えがなく、やる気が出ない、仕事が上手く行かない、不安です、などの症状で、うつや不安の治療を長期間受けていた人
=「誤診」と言われるかもしれないが、初期は難しかったりする
→「“うつ“としては、ちょっと違うな、もしかしたら統合失調症?」などと早く気づけるようでありたい
・躁うつ病でなくても、躁とうつの気分の波が目立つタイプの統合失調症の人も多い
→統合失調感情障害という病名は個人的にはつけたくない
・経過が長くなり、知的能力の低下や、薄っぺらい人格、感情の乏しさなど、陰性症状が目立ってきたり、幻聴や妄想の存在が判明してくると、統合失調症と分かるけど
6. 治療を進めていくと病状が変わってくる
もちろん幻覚妄想や興奮や思考の纏まりなどが改善してくるが・・
1.一番悪い時は、ぼんやりと虚ろな表情、自発的に動けず、話もほとんどできず(幻覚妄想が活発なのに語れない) =昏迷状態
2.薬が効いてくると、焦った様子となり、興奮~幻覚妄想を語りだす
→ 一見病状が悪化したようにみえるが
3.それから徐々に緊張がとれ、穏やかになり、会話もスムーズになっていくのを観察
→ 幻覚妄想が軽減~消失しているということ