抗うつ薬① トリンテリックス(ボルチオキセチン)        

 抗うつ薬は、人によって合う薬と効かない薬があります。うつ病の人で、「薬が効かない」という人でも、薬を変えると、様変わりする人も多いので、あきらめないこと。同じSSRIでも別のSSRIが効いたりするし、別のタイプの抗うつ薬に変えるのも当然あり。
 
 トリンテリックスは、SSRI,SNRIとは大きく違う作用を持つ、新規抗うつ薬。副作用が少なく、認知機能改善もあり、これまでの抗うつ薬に抵抗性の人に、すばらしい薬になるかもしれません。21種の抗うつ薬を比較した論文でもトップクラスの高評価。
 
症例:
 20代後半、シングルマザーで看護師のAnneさん。仕事と子育てに奮闘していて、うつ病を発症。SSRI, SNRI等で治療も、改善は不良。生活を楽しむことも少なく、うつうつとした日々を3年間続けていた。「先生、全然良くならないじゃないですか!何とかしてください!」。
 ここでトリンテリックスが発売。投与を受けた彼女は、「気が晴れたみたい!全然違う!」と大きく変化。仕事もしっかりでき、私生活も充実した。
 

 

特徴・利点

 

・種々のレセプターに作用して、これまでの抗うつ薬と違う効き方をする、興味深い薬

 

5HT1Aにはアゴニストに近い作用で、抗うつ効果が高い

 

・セロトニン増加以外に、NA, DA, Ach, H, Gluも上げる

 

離脱症状がないらしい →SSRIで離脱症状で困る人に、こちらに切り替えて離脱を図る

 

Activationがなく、自殺念慮を来さないという(重要)

 

認知機能の改善効果DA, NAに加えAchが特に海馬でなどで増加

→ VOR(トリンテリックス)>SNRI>SSRI>MAOI>TCA

→ 長期的には、BNDFを増やして神経細胞の伝達を改善するという

 

・性機能障害なし

 

・長期的にも、体重増加はない

 

・抗うつ薬を比較した論文では、効果・忍容性を考えて、ベストに近い評価

 

SSRIなどで、感情鈍麻、体重増加、疲労感(flat, fat, tired)にずっと悩まさていたが、目覚めたように元気になった人も

(ただし製薬会社からの情報が主)

 

 

使い方

 

10mgで開始し、1-2週毎に10mg増量し、20mgまで。1日1回でOK

→ なおSERT占拠率:10mg44-60%20㎎で90%以上

 

・切り替えでは、レクサプロ20㎎に、トリンテリックス10㎎を加え、1週毎に、それぞれ10㎎ずつ増減して、2週間後にレクサプロは中止へ

 

 

副作用・デメリット

 

・開始後1週間は、嘔気・嘔吐・下痢などの消化器症状あり =5HT3アンタゴニスト作用あるのに、SSRIと同様に消化器症状あるとのこと

 

・発売されたばかりで、まだよく分からない

 

 

印象

 

・消化器症状はSSRIと同様というが、今のところあまりない

 

・効果発現も早い =23日で出る人も、患者の評判も割と良い

 

難治性患者や、うつ病で認知機能低下した患者に希望を与える薬になるかも

 

・抗うつ薬に弱い人にも使えるか?

 

・ 双極性うつ病には?