抗精神病薬① ジプレキサ(オランザピン)

 

 個々の薬剤について、自分の使い方を、個人的な見解および文献的知識をミックスして、まとめてみました。まずは、非定型抗精神病薬のジプレキサから。

 

ジプレキサとは:

 統合失調症や気分障害はもちろん、他の疾患でも、精神状態を落ち着かせたいとき=興奮、不眠、イライラ、不安など、いろいろ効いて便利な薬。セロクエルよりがっちり効く分、ちょっと重い。問題は肥満と糖尿病。

 

症例:

 20代男性で初発の統合失調症。最初は緊張病性興奮で入院したが、ジプレキサザイディス20㎎内服で、速やかに落ち着く。幻覚妄想および疎通性も徐々に改善し、3か月で退院。ところが退院4か月後より通院・服薬しなくなり、10か月後に不穏状態で再入院した。

 服薬やめた理由は「太るから」。再入院後、他の抗精神病薬で治療するが、効果は不十分であり、幻聴も続き、治療に難渋した。そのため、本人と相談の上、ジプレキサを再開したところ、症状は大きく改善して退院できた。ジプレキサの効果を実感できたため、以後は治療継続している。

 

 

1.有効性・利点

 

・急性期の第一選択として

 

統合失調症、躁病の興奮や焦燥感が強いときは、大量投与で一気に落ち着かせる

 

・種々の疾患で不眠・不穏・焦燥感にザイディス2.5-5mg →リスぺリドン液1-2mlでも

 

・うつで、思考の混乱や焦燥感があるとき、抗うつ薬に付け加えると、activation synになりにくく安全 ←双極性うつの可能性も考えて →セロクエルよりしっかり効く

 

・うつ病や双極性うつへの保険適応あり:少量併用による抗うつ効果増強 →SSRI・SNRIの初期の副作用(腹部症状)の予防にもよい

 

・急速な鎮静に、ジプレキサ筋注

 

 

 

2.使い方

 

・落ち着いたScや、焦燥感・気分高揚のある気分障害圏で、外来は5mg、入院は10㎎くらいから+頓服2.55mgも考慮

 

・急性期は最初から高用量(1520㎎)

 

・興奮が強い場合、20mg+デパケンかリチウム。

 

・陽性症状が強いときは、効果あるなら海外では40㎎まで使って更なる効果が期待できるという

 

・(相互作用)ルボックスとタガメット、グレープフルーツ、抗真菌薬で、濃度上昇(CYP3A4の基質)

 

定期的に血糖値、脂質代謝のチェックが必要

→ 多くはないが、投与中に、DM発症する人がいる

 

・注射薬:1A10㎎(2.1㏄に)、15分でピーク、内服の倍の血中濃度

 

 

3.副作用・デメリット

 

・糖尿病では禁忌。脂質代謝異常。

 

・肥満、過食。23カ月経ってから、5-10kg以上太る人もいる。

 

・統合失調症以外の患者では、眠気が残りやすい

 

・パーキンソン症状、アカシジアも時々あり

 

・鎮静作用強いが、賦活して問題行動(衝動行為、浪費、ギャンブル、性的逸脱)を起こす患者もたまにいるらしい(あまり経験ないが)

 

 

4.印象(個人的見解)

 

陽性症状に安心して効果が期待できる、治療を急ぐ時にベストな薬の一つ

 

・状況を打破する可能性=慢性期の難治性患者でも、試す価値はある(クロザピンに似た構造)

 

・いい薬だが、肥満を考えて、ファースト・チョイスにされることが減ってきた

 → 以前はリスペリドンと共に、統合失調症治療のエースだったが・・

 

うつ病・双極性の不眠、焦燥感、不安などをターゲットに、主剤(抗うつ薬や気分安定薬)に加えることで、しっかり効いて落ち着きやすい >>セロクエル

→ どの程度の鎮静が必要かで、セロクエルとどちらを使うか決める

 

・ジプレキサしか効かない患者もいるので、肥満を気にする若年女性でも、嫌がられようとも、必要なら説得して使う! ←ちなみに、難治性に使うクロザピンでも太る

 → 治療で人生変わるのだから