おかめ と 家来 | 紫藤尚世オフィシャルブログ Powered by Ameba

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デザイナー 紫藤尚世 によるBlog

 こんにちわ。  紫藤尚世です。

    

 10年前のことです。

   

 仕事の打ち合わせの帰りのタクシーに乗っていましたときです。

 木彫りの魚や動物が 沢山ぶらさがっている なんとも不思議な

 小屋のような建物が 目に入りました

   

 それが妙に気になり タクシーを降り その建物の傍の近づいていきました。

 まじまじと作品を一つずつ見ていると その小屋の奥のほうに

 おかめ を発見しました。

そのおかめが 何ともいえない とてもいいお顔をしていて

どなたが 彫ったのか気になり さらに奥を見ると

 一軒家があり ベルを鳴らしました。

少し間をおいて かなり高齢でよぼよぼのおじいちゃんが

やっとのおもいで 玄関に出てきてくださりました。


私が 「外の木彫りは どなたが彫ったのですか」

「わたしだよ」と おじいちゃん


あまりハッキリおはなしできないようで ようやく言葉を発しています。

何とか聞き取れたのは

「昔は 灯篭や墓石を 彫っていたが 今は石が硬いので 彫る力が

ないので 木を掘るようになった」


私は デザイナーで青山にショップがあることを伝え

「おかめが とても気に入りました。 私のために おかめを 彫ってください」

とお願いすると

おじいちゃんは ニッコリ笑って 「いいよ」と 快諾してくださりました。


約束の10日後


SHITO HISAYO

おかめ写真


おじいちゃんがおかめだけではなく

「このお面も 持っていけ」


「これは頼んでいないから いらないです。」 と私

「そうじゃない。このお面は おかめの家来なんだよ。

おねえちゃん(おかめ)のことを守ってくれるんだよ

だから持って行け。  下でも どこでもいいから

おかめの向かい側に置いておくんだよ」


SHITO HISAYO

家来の写真


早速 ショップに飾りました。

それから不思議なことが たくさん起こり

「守っていただいている」と感じることが度々ありました。

それは 10年経った今でも。

いつも 家来が いかつい顔で 見守ってくれます。


飾ってから 3年後 おじいちゃんにお礼を言いに行くと

建物がすっかりなくなり 近所の方の話によると

だいぶ前に 亡くなったそうです。


お礼が直接 言えなかったのは 残念です。

その小屋の跡地で 静かに合掌し

「おじいちゃん ありがとう。ずっと大事に します」と伝えました


10年経った今でも おじいちゃんの声やしぐさ、ごつごつした手

忘れられず脳裏に焼きついています。


はじめて会った私に 愛ある言葉を かけてくださり

私を守る家来まで 作ってくださったのですから


おかめと家来を見るたびに 心が落ち着きます。

なにがあっても 大丈夫と 私を元気つけてくれます。


おじいちゃん 心から 感謝しています。


           紫藤尚世