夜。皮肉なほど綺麗な月が荒野になった街を照らすなか、三人で焚き火を囲む。
「他の奴は?」
「えっと、山田さんとその奥さんは……」
葉月から彼女が所属していたグループのメンバーの特徴を聞き出し、メモを取る。
「これで全部か?」
「うん。それで全員」
「よし。わかった」
救助隊を出す際に探しだす手がかりだと言って道中ずっと聞き続けていた。
「お願いだよ、ユーリ」
「任せとけ」
真剣な目で頼む葉月に安心させるように不敵に微笑んで答える。
「ユーリ。もう寝かせてあげれば?」
荷物の中から寝袋を引っ張りだしながらアマネが言う。
「ああ、悪いな。随分聴きこんじまった。つーかお前、人の荷物勝手にいじるなよ」
「だってもうそろそろ深夜って時間だよ。葉月も疲れてるみたいだし」
「私なら大丈夫だよ」
「強がりはいいから寝て。寝不足で調子悪いままだと足引っ張ることになる。そしたら葉月の仲間に助けを出すのもその分遅くなる」
的確に反論できないよう説得して寝袋を押し付ける。
「ご、ごめんなさい」
「怒ってるわけじゃない。気にしないで」
しゅんとする葉月にそう言うが、アマネの無表情はこの状況ではデメリットにしかならない。
「ならもうちょっと笑ってやれよ。ほれ」
「むぃー」
ユーリに頬を摘まれ無理やり口角を上げられる。
「あはは。変な顔」
「まぁこいつの言うとおりだ。とっとと寝ちまえ」
「うん。おやすみなさい」
そう言ってしばらくごそごそと寝袋をいじるが、
「これどう使うの?」
使い方は知らなかったらしい。恥ずかしそうにしながら尋ねる葉月にユーリが笑いながら使い方を教え、ようやく中に入ったと思うと、やはりかなり疲れていたのかすぐにすやすやと寝息を立て始めた。
「随分早いな」
「あんな状況にいたんだしまともに寝てなかったはずだよ。もうちょっと気を使ってあげないと」
「お前の場合、気を使ってんのかどうかわかりにくいけどな」
「表情筋ないから仕方ない」
「ないのか」
「ないよ。頭付近は色々と必要な機器が多いから」
「その割にほっぺは柔らかかったな」
「そこら辺はこだわりだったんじゃないの」
「ほんとよくわからん趣味してるな。お前を作ったやつとやら」
「そもそも女の子の遺体を改造しちゃうところで気づくべき」
「そう言えばそうだったな……」
アマネがあまりに当然のようにしているので意識していなかったがその素体の経緯からしてかなり頭のネジは飛んでいる。
「お前はなんとも思わないのか? そういうの」
「って言われても。私に設定されてる目的って言えば魔族の殲滅と保護対象の確保くらいだから。何も思うところはないしそもそも思うところがあるようになんて設定されてない」
「ああ、そうだ。その保護対象ってなんだよ。最初に言ってたけど」
聞いていると段々と虫の居所が悪くなりそうなので話を変えることにする。
「主に有力な日本政府の官僚。でもこの有り様だとほとんど死んでるって自己判断してるから優先順位は下方修正されてる。魔族の殲滅に関してはユーリと一緒にいたほうが効率が良さそうだから現状ユーリの優先順位が最上位」
「そりゃどうも」
どっちにしろ聞いていて面白い話でもなかった。普段の彼女との会話に心地よさを覚えているだけに余計にこういう会話はしたくない。
「もういいや。お前も寝とけ。見張りは俺がやるから」
「…………。うん。わかった」
一瞬だけ逡巡するように沈黙したあと、特に何を言うでもなく寝袋に潜り込む。
「はぁ。ったく……。どこにでも政治屋って絡んでくるよな……」
イラつきながらぼやく。タバコでもあればふかしていたかもしれない。
それから日課の銃の手入れを始め、しばらく時間を潰し、
「……アマネ。寝たか?」
軽く肩を揺すってアマネの様子を確かめる。葉月のほうは心配はいらないだろう。
「よし。寝てるな」
反応がないのを確認し、マスクをかぶり、しっかりと装備を整え、その場を離れる。
無言で数キロほど歩く。行き先は葉月が襲われたという地点だ。移動を始めるときにまず最初にそれを聞き出し、休憩場所をその近くに選んだ。おかげで大して移動できていない。
「くそ。一回外しちまうとうざってぇなこれ」
邪魔そうにマスクの位置を直しながら辺りを調べる。今のところ魔族の気配はない。と、油断していたのか。
「っ!」
地面に向けていて視線を慌てて後方上部へ振り上げる。そこには空を舞う大きな竜。
「魔王だって? ふざけんな……!」
魔侯よりもなお強大な存在感とこの距離でも感じられる威厳と余裕。魔王クラスの魔族だ。離れていたからなのか妙に気づくのに遅れた。その場に伏せ、ライフルを取り出す。
「ったく……。ほんとにミイラ取りがミイラになりそうだ」
苦笑い。幸い向こうはこちらに気づいていないようだ。それにしてもなぜここまで近づいてようやく気づけたのかと考え始めた矢先。
「マスク外せば? 狙いつけにくいでしょ」
「ああ。そうだな。それはそうとなんでお前がここにいる?」
「なんでって後着いてきたし」
いつの間にそこにいたのか、隣でしゃがみこむアマネにマスクを取りながら思わずこめかみの血管が膨らむのを感じる。
「お前のせいか」
「むしろよく私がいてこの距離で気づけたね。さっきもそうだけどユーリの感覚はすごいよ」
「のんびり話してる場合じゃなきゃ褒め言葉だと思えたんだけどな」
「のんびり話してる場合じゃなきゃみっちりお説教できたんだけどね」
言いながら事も無げに立ち上がる。
「おい、あいつぁ魔王だぞ。そうそう簡単に」
「モード変更。ツクヨミ。システム起動」
食い気味に答えとして返ってきたのはそんな言葉と静かに彼女の体が組み替わる音。
スサノオモードと呼んでいたものほど見た目に武器はない。ただその身に付けていたドレスよりもなお黒い日本刀のような長い刃を二本、その両手にそれぞれ握り、それと同色の大袖が両肩から両腕を覆う。そして。尾の先から彼女の背中に展開された月のような柔らかく冷たい金色を放つ光の輪。
「おい、お前何してんだ」
「モード変更完了。システム完全起動までサンマル秒。ユーリ。その間援護お願い」
「あ、ああ」
近くにいるからか、霊素が何かもわからない彼にも感じられる威圧的なほどのエネルギー。当然、空を悠々と飛んでいた竜もそれに気づく。方向転換したかと思うと、凄まじい速度で迫ってくる。
その鼻っ面。狙撃手の神経に切り替えたユーリは冷静に銃弾を叩き込む。が、体を横倒しにすることで一切速度を落とさずに躱される。
「やっぱりかよ!やりづれぇな全く!」
そんなことはむしろ当たり前だ。だからこそ一発の威力を重視したモードに変えていない。躱すよりも前に躱すであろう先にもう一発撃ちこんでいる。更に先読みして、連続で引き金を絞り続ける。
流石にそのまま突進するのは難しいと判断したのか咆哮と共に大きく弧を描きながら上空へと舞い上がる竜。
「ほんとにやれるとは思わなかった。すごいね。もういいよユーリ」
けなされたのか褒めているのか分からないセリフにツッコミを入れようと振り返るとそこにアマネの姿はなかった。そして、上空から響く咆哮。
視線をそちらへ向けるとそこには竜と正面から対峙するアマネがいた。
「まじかよ……」
速度で説明できる距離ではない。ワープや瞬間移動と言った次元だ。思わず凝視した一瞬、アマネの背後の黄金色の輪の中が見える。
そこにあるようでないような、夜空のようなどこか色のある暗黒が渦巻いている。
その先は彼に視認できるものでなかった。
「ツクヨミモード。時空間干渉開始。虚数時間軸侵入」
呟く。その背後の月輪のなかの暗闇が踊る。瞬間。アマネの存在はこの実時間の宇宙から外れる。
禍々しく輝く竜の蒼い眼光の目の前にいた彼女はその後頭部に現れる。消えるのと現れるのは全く同時。
反応する竜。だがその時には両手の黒い刃は振り終わっている。交差するように閃いた軌跡。人間の持つ刃では傷ひとつ付けられぬ鱗も肉も骨も関係なく美しさすら感じる切断面を残して竜の首が落ちる。時間差でその巨体も力を失い重力に捉えられる。
それが地面に落ちるよりも先にアマネはユーリの隣に戻っていた。既に展開していた兵装は全て消えている。
「ただいま」
「お、おかえり」
すべて合わせて一秒未満。まさに瞬殺。
「何?」
自分を見つめるユーリに小首を傾げる。
「いや、すごすぎてビビってる」
「そう。スサノオで充分だったかも知れない。それと」
「あん? いでででででででっ」
いきなり耳を引っ張られる。
「お説教してる時間はなさそうだからこれで勘弁してあげる」
「いってぇ……」
「葉月に偉そうなこと言っときながら。まったく」
無表情で感情のこもっていない声ながら怒っているのはわかるくらいご立腹らしい。
「悪かったよ……」
「お人好しだね」
「つーかお前、葉月はどうした?」
「この辺りで一番大きな魔族の反応はあの竜だったし他は全部小さかったからあのナイフがあれば寄らないよ。保険もかけておいたから」
「魔素の方は? あいつマスクしてないだろ」
「それも大丈夫。ちゃんと対策してる」
「そっか……」
何をしたのか気にはなるが先の攻防を見てしまうと理解できないような何かをしたのだろうと納得してしまう。
「それで。探さないの?」
「……何を?」
「誤魔化したってダメだよ。どうせ葉月の仲間の人たち探しに来たんでしょ」
「まぁバレバレだよなぁ……」
「早くしないと朝になるよ。手伝う」
言うが早いか辺りを探しまわりだす。ユーリもまたその作業を再開する。
「ここからあの地下街までの距離を半径にしてその円内にあると思うんだけど」
「そうだね。だいたい半径六百メートル程度かな」
「流石に厳しそうなんだよな。お前センサーで探したりとかできねぇの?」
「無理。魔族用のセンサーだし生きてる人間ならともかく死んでるとなると」
「だよなぁ」
口を動かしながらも手は止めない。適当な瓦礫をひっくり返してみたりなどしてみる。
「聞かないの?」
「何が?」
「さっきの」
「ああ、聞きたいのは山々なんだけどいいのか?」
「いいよ。ユーリになら」
「なんかまたえらく信用されてるな」
「私に作戦を立てたり狙撃をしたりはできないの。だからユーリが必要だと決めたし作戦を立ててもらうには私の性能を知っていて貰わないといけない」
ということらしい。ならばとばかりに話を聞くことにする。
「私の戦闘性能は三つのモードがあるの」
「スサノオとツクヨミつってたな」
「うん。それとアマテラス」
「あれ? お前の機体名アマテラスだったよな。なんでそれがメインじゃないんだ?」
「対魔神用決戦兵器。だよ。どんな規模の攻撃すると思う?」
「ひどそうだな」
「ひどいよ。よっぽどじゃないと使う必要もないし汎用性も低い」
「だからその二つを使うわけか」
「そう。一番扱いやすいのがスサノオ。完全に接近戦仕様。多少の中距離戦にも対応する」
「やたら色んな所からブレード出してたな」
「うん。かっこいい」
「そうだなかっこよかったな。そんで?」
多数の蒼い刃を多数纏う彼女は格好良いというより美しいと思っていたが口にするのはやめておいた。
「特に変わった性能はないよ。本当にただ戦うだけ。本当は電気的性質をもたせた霊素も一緒に使うけどユーリには見せてなかったね」
「それが中距離用か?」
「そうだよ。それとブレードの威力増強用」
「まぁ切り込みが役割の白兵戦仕様って感じでいいか」
「うん。それで間違ってない。それからさっきのがツクヨミ」
「スサノオより特殊な感じだったな」
「そうだね。特殊だよ。それも含めれば白兵戦機能はスサノオを悠に超えるかな。起動に時間がかかるせいで切り替えが効かないし霊素消費も大きいから相手が一定以上に強くないと。要するに吸収できる魔素の量が少ないとほとんど機能しないし、継続戦闘も、性能から見ればあんまり関係ないけど向いてない」
「そう聞くと欠点だらけっぽいな」
「その代わり虚数時間に干渉して移動できる」
「なんだそりゃ」
聞きなれない言葉に思わず動かし続けていた体を止めて聞く体勢になってしまう。
「虚数時間。今じゃ研究してる人なんていないだろうけどそういうのがあるの」
「どういうのだよ」
「説明してもいいけど。アインシュタイン方程式で宇宙の性質について計算していくと過去に遡るにつれて宇宙は始まりとして一点に収縮して物理的に意義を失うことになるの。これを特異点って言ってこれを回避するために時間を純虚数として」
「わかったわかった。わからないことがわかった。要約頼む」
慌てて諸手を挙げて降参のポーズ。聞いていると眠くなりそうだ。
「もうちょっとで説明しやすくなる部分だったのに」
「じゃあそこだけ抜き出せ」
「時間を虚数として考えると空間と時間が一緒になる」
「おう。よくわからんけどわかった」
「それとこの虚数時間に過去と未来とかは存在しない。今が未来だし未来が過去だし過去が今」
「そこは訳わからん」
「時間の流れっていうものがないの。だから時間を好きなように選択できるの」
「へ、へぇ……」
「そして時間と空間が一緒になってるから時間を移動すると空間も移動できる」
「ほう……?」
「端折る。ツクヨミモードの最大の特徴は霊素を強制振動させて時間に干渉するの。その状態の私は虚数時間を移動できる。その中でならゼロ秒で地球の裏側にだって行けるし数百万秒先のこ こにだって行ける」
説明がめんどくさくなってきたらしい。いきなり結論だけを言ってのける。
「要するになんだ? タイムマシンみたいなもんか?」
「うん。それが一番わかりやすいかな」
「じゃあさっきやってたのは?」
「ゼロ秒でユーリの側からあの竜の前に。ゼロ秒で竜の前から竜の首に。そういう移動。私自身は特に急いでるつもりもないけど実時間にいるユーリからみたら瞬間移動かな」
「瞬間移動か」
「ちょっと違うけど瞬間移動できるタイムマシン。でいいよ。さっきんはゼロ秒移動だから移動を開始した私と移動を終えた私は同時に存在してることになって瞬間の移動じゃないんだけど。同時移動? 語呂悪い?」
「じゃあすごい瞬間移動なのか」
「そう。すごいの」
「もうそれでいいや。理解できる気がしねぇ」
「理解できるものじゃないと思うよ。実験の事故からたまたま搭載された機能だし」
「まじかよ」
「もともとこんな機能なかったんだよ。たまたま事故で霊素が時間に干渉してその時の振動を流用したらたまたまできた兵装。最初は実時間切断兵装。あの黒い刃と黒い大袖だけだったんだ」
「あれは何かあんのか? えらい切れ味してたけど」
虚数時間だなんだとわかりにくい話など瞬間移動でさっさと片付けてむしろわかりやすそうなそちらの方に興味が移る。
「切ってないよ。正確には。勝手につながらなくなっただけ」
「はぁ?」
これもやっぱりわかりにくそうだった。
「コンセプト的にはより攻守共に特化したスサノオだよ。物理的に切断するんじゃなくて時間的に切断するの。あれはね。触れたものの時間を一瞬だけ止めるようになった霊素で構成されてるの。だから物理的にはただ対象を通り抜けただけ」
「それでどう切るんだよ」
「ユーリは一秒前のモノと今現在ここにあるモノ。くっつけられる?」
「無理に決まってんだろそんなの」
「そういうこと。触れられた箇所は触れられていた時間だけ周りのものと時間がずれる。時間がずれればつながってられない。だから切れる」
「あ、あー。まだこっちのほうがわかりやすいか……」
言われればなんとなく納得できるような気がしてくる。
「大袖も一緒。これの外側と内側は時間的に断層が挟まってる。だから何も時間的に通れない」
「強くね?」
「強いね。でも最初は弱かったんだよ。だってもともとスサノオのブレードを全部切り替えて立てを装備した感じだったから兵装に割く霊素が多すぎて他の機能、速度とか私本体の力とかかなり落ちたの。その辺りはたまたま使えるようになった虚数時間移動との兼ね合いでブレード本数減らして速力をカバーしたけど」
「なるほどね。で、アマテラスは?」
「広域大規模破壊」
「あ?」
「要するに爆撃機。もうこれ以外に説明のしようがない」
「大規模って……魔神用なんだろ? どれくらいになる?」
「うーん。三十分でロシアが大半消し飛ぶくらい」
「こわっ」
「だから使いにくいんだって。いちいち規模が大きすぎて周り巻き込むし仮に魔神を倒したとしてその後に残るのは結局魔神が蹂躙したのと同じ結果だし。だからこれを作戦に組み込むとかは基本無理」
「ふーん。わかった。じゃあ次。ステルス性で言ったらどれがいい?」
「どの相手に対して? 魔族? 人間?」
「どっちも」
「人間に関してはどっちも大差ないけど魔族に関してはやっぱりスサノオのほうがステルス性は優ってるかな。でも今ユーリが思い浮かべてる場所にどんな魔族がいるかによって変わってくるから今はそれくらいしか言えない」
「まぁそうだよな。さんきゅ。教えてくれて」
「役立ててね」
「任せとけ」
「さっき葉月にそれ言ってこの顛末なんだけどね」
「言うな」
ひと通りの解説を受けて作業を再開する。
「この辺りには……、ん」
「何?」
ここは切り上げるかと言おうとした矢先。小さな白い欠片を足元に見つける。
「あーあ、見つかっちまった」
「ん。見せて」
ため息ともつかない独り言とともに頭を掻くユーリの手の中の欠片を受け取る。
「骨だね。手の指の第一関節の骨」
「骨だよ」
「ここに?」
「ここで」
「そっか。でもこれじゃまだわからないね」
「これがなきゃな」
更にもう一つ。その横に落ちていた指輪。
「ん。イニシャルでも彫ってあった?」
「ばっちりな。T.K。川中橙子っているんだよ。あいつが言ってた名前の中に。こんな荒れ果てた中でここまで綺麗に残ってるってなったら最近だろうしまぁ当たりだな」
「そうだね。どうする?」
「もう少し探そう。骨は全部埋めてやるくらいしねぇとな」
「そっか。手伝う」
「いいよ。そこまでしなくても。寝てろ」
「さっきは言わなかったけど。私睡眠とか必要ないから」
「あん?」
「寝なくても活動に支障はない。というか睡眠って機能がない。システムのスリープモードはあるけどそれは睡眠とは違うし」
「先に言えよ……」
「だって勝手に一人で探しに行きそうって思ったから。言っても聞かなそうだったし」
「お前なぁ……」
「実際当たってたし。ほら。探そ」
「ホント無表情なくせによく気づくよなぁ……」
「無表情は関係ないと思うけど」
「あるだろ」
「それよりユーリは探しといて。穴は私が作るから」
「普通そっちが俺だろ」
「え? 何?」
言ったときには尻尾の先からブレードを展開して地面に向かって高速で振り回し、既に彼女の体の半分ほどの深さの大穴を振り終わっていた。
「はぁ……。なんでもない」
何故かその光景を見て無性に疲れるユーリだった。
