2023年3月14日(火)14時00分、「北海道ボールパークFビレッジ」の中核施設「エスコンフィールドHOKKAODO」で初の対外試合が行われました。

 

北海道日本ハムファイターズシーズンシートオーナーおよび上級会員限定で行われた試合は、11,061人の観客が詰めかけ、賑わいを見せていました。

 

今回は、北海道日本ハムファイターズおよびファイターズ スポーツ&エンターテインメントの皆様のお計らいにより、貴重な初試合を観させていただきました。取材に便宜を図っていただいたファイターズ関係者の皆様に厚く御礼申し上げます。

 

当初の数試合はシーズンシートやファンクラブ上級会員などに限定して客数を絞り、その後徐々に客数を増やして、観客数に応じた運営手順を確認していくそうです。

 

試合終了後、北広島駅行きのシャトルバスには、長蛇の列ができました。時間を図っていなかったので正確ではないものの、バスに乗車するまで20分以上かかったと思います。新球場と北広島駅の間は徒歩20分程度ですので、歩いたほうが早かったことになりますが、シャトルバスの混雑や道路の状況を確認するのが今回の視察の大きな目的でしたので、乗車できるまで待ち続けました。

 

新球場のそばにJR千歳線の線路があり、行政とJR北海道の間で、2027年度開業を目指して、新駅設置の協議が行われています。

 

ところが、資材価格の高騰などを理由に、総工費が当初想定した80億〜90億円から、115億〜125億円へ約1.4倍増加することが判明したということです。

 

JR北海道は、行政による請願駅であるため、行政の全額負担で建設する方針を示しています。

 

北海道新聞は、「北広島市は、BPの最大観客数3万5千人のうち4割の1万3,500人が帰宅のためJRを利用し、このうち8,100人が新駅を、5,400人が北広島駅を利用すると推計していた」と経緯を説明したうえで、「JRが19年に公表した整備計画では、10両分の長さのホームを新設。ホーム両側には停車する普通列車用の線路、その外側に特急や快速が通過する線路を設ける4線構造とし、臨時列車の待機場所も設ける予定だった」と報じています。

 

そして、JRは「『工費を抑えるため線路を減らしたり、臨時列車が出られないようにすれば輸送量は落ちる』と懸念。JRの綿貫泰之社長は15日、『多くのお客さんが来る。耐えられる設備にしないといけない』と輸送量確保へ工夫が必要との認識を示した」との見解を示したとされます(出典:以上、『北海道新聞(電子版)』2023年3月16日付)

 

 

現状では、多くの退場客を安全にさばくために、しっかりとした駅設備をつくることを開業の前提とするJRの試算が、新駅の協議を難しくしている面があります。満席となる3万5千人のうち、約4割の13,500人が新駅に一斉に詰めかけることになれば、強固な駅構造とする必要があるのはその通りでしょう。

 

一方、JRは、費用圧縮に向けて、新駅の位置をずらすことを検討しているとも報じられています(出典:『日本経済新聞(電子版)』2023年3月16日付)

 

 

ただし、球場から離れた場所に新駅をつくることになれば、新駅を避ける観客が増えますので、目先の総工費をケチらないほうが得策でしょう。

 

「エスコンフィールド」は3塁側がJR線路に面していますので、1塁側の観客はシャトルバスの方が便利だと思われます。ただ、この点を「逆手」にとることがよい気がします。この点は後述します。

 

今回は、観客数を11,000人に絞った状態で開催されました。そのうち4割がシャトルバスを利用したと仮定すると、4,400人がシャトルバスを利用した計算になります。1台60人程度を乗せる場合、73台のバスが必要です。バス10台で運用する場合、7往復強しなければなりません。

 

渋滞がなければ、数分で北広島駅に到着しますが、渋滞が発生した場合は、同駅から球場までバスが戻る時間も延びることになります。

 

交通が不便だとの認識が定着した場合、時間に余裕のない平日ナイターの集客に影響が出る可能性があり、やはり、球場新駅の早期開業は不可欠です。

 

ヒントになりそうなのが、予讃線市坪駅(愛媛県松山市)です。普段は相対式2面の無人駅で、ホーム幅もそれほど広いわけではありません。しかし、駅前に「松山中央公園野球場(坊っちゃんスタジアム)」があるため、ヤクルトの地方試合などの公演日には、多くの観客が当駅を利用します。一部の特急も臨時停車します。

 

私は、2022年7月27日(水)に「坊っちゃんスタジアム」で開催された「マイナビオールスターゲーム2022」を観戦した行きと帰りに、市坪駅を利用する機会がありました。

 

駅前の中央公園広場には、多くの観客が押し寄せましたが、JR職員は慣れた感じで乗客への案内・誘導に当たっていました。

 

 

この日は、2万5千人の観客動員(出典:『愛媛新聞オンライン』2022年7月27日付)がありましたので、4割がJRを選択した場合は1万人が乗車したことになります。「北海道ボールパーク」の退場者数と大差ない数字です。

 

 

試合終了後は、市坪→松山への1駅のみの普通列車も運行されたほか、宇和島行き特急が臨時停車しました。

 

 

なお、普段の市坪駅の様子はこのような感じです。

 

 

この日市坪駅を利用したことでわかったことは、次の3点です。

 

・簡易な相対式ホームであっても、ホームへの入場者数を制限すれば、乗客は何とか捌き切れる

・ホームへの入場制限を行う際には、駅前に広いスペースが必要

・市坪駅には上下線の入換線が設けられている。松山駅から市坪駅へ送り込まれた回送列車を、入換線を使って、松山方面ホームに入線させることができる

 

以上の市坪駅の知見を「北海道ボールパーク」新駅に適用できるのではないでしょうか。

 

そこで、以下を提案したいと思います。

 

①「北海道ボールパーク」新駅も、市坪駅と同様な相対式ホーム2面で先行開業させる。上下線の入換線も整備する。

②駅前に入場待ち客のための広場を整備する。上下線ホームは地下通路でつなぐ

③新駅からの乗車には、事前購入チケットを必須とする。球場満席時の退場客のうちJR利用を希望する13,500人のうち、約半分の7,000人分のチケットを発売して、様子を見る

④残り6,500人はシャトルバスまたは徒歩を利用してもらう。主に1塁側の観客はシャトルバス乗り場の方が近いため、新駅開業後もシャトルバスに一定の需要が見込まれる。

 

ちなみに、相対式2面ホームで新設される越後線「上所駅(仮称)」の建設費は17億円と見込まれています。私は「北海道ボールパーク」新駅も、工夫次第で総工費を抑えられると考えています。

 

ともかく、1日も早い球場新駅をつくることを最優先に、ステークホルダーの間で協議を進めることが望まれます。