「ところでこのカルタ、かなり古そうだけど札は揃ってるの?」
携帯で叔母さんへ電話する左手と、コールの合間で箱から絵札を取り出して机に並べる右手。会話自体はニノマエとこなして、目は札の位置を確認する。何気なくやってるが、考えてみるとせわしないな。
幸い絵札は五十音順になっていた。
「絵札は全部ありそうだ」
「読札は?そっちは並んでないみたいだけど?」
「順番の問題だけだと思うよ。枚数的には足りないってことはなさそうだから。それに、…あ」
電話が繋がった。つい先程別れたばかりの叔母なので特に時節の挨拶もなく、京間栄介の年齢についてだけ尋ねてみると作成自体はわからないが、カルタを受け取ったのは彼が50歳の時だったということだった。それどころか逆に「いま始めたばかりなのね?」と叔母さんに聞き返された。
ニノマエといい、叔母さんといい、年齢の確認は初手の課題だったらしい。
また電話するかも知れないので、叔母さんの予定も確認して電話を切った。
「年齢は、カルタの受け取り時点で50だそうだ」
「49じゃないのね?」
≪半世紀を振り返る会≫と謳っているのだから、当年50歳になることは予想済みだが。その上で、叔母さんが受け取った時点で既に50だったのかどうかで、暗号の意味合いが違うとニノマエは俺に念を押した。
重要なのはまあわかってる。
暗号を控えたルーズリーフにニノマエが赤でマーキングをしていく。
冒頭の≪弱い≫に二重丸。そこから→が伸びて年齢を表す≪齢≫の文字が書き込まれた。つまりこれは言葉を置換してるだけだという事らしい。
≪齢を順に≫と読み替えて、そこへ当時の齢が五十を代入すると……、
≪五十を順に並べて≫
と、また一つ赤文字が加えられた。
「まっしろ。私、ジュース買ってくるからその間に続きも並べといてね」
「はいよ。絵札だけならもう終わるよ」
軽く手を振って教室を出て行くニノマエ。机に残されたルーズリーフには、その続きにも赤線が続いている。やはりこの手の閃きに関して彼女は強いようだ。この分なら案外あっさりと全文を解読してしまうかも知れない。
彼女の解説に先んじて三行目の赤を覗き見ると《手習い》の上に「ウタ」の走り書きがあった。
カルタ。五十を順。手習い。ウタ、方向性はもう見えたのだろうか?
「ちゃんと並べ終わってるー?」
少しして炭酸飲料を片手にニノマエが帰ってきた。
そして何故か厚紙にマジックも。
「もちろんだ。余った札はしまっといたぞ」
「それじゃあ次は≪手習いをそえ≫るとしましょうか」
━─━─━─━─━─
ニノマエの推理はまずまず順調なすべり出しのようです。
皆様のご考察はいかがでしょう?
推理編はまだ続きます。
第四回
へ続く
■「問題まとめ 」へ戻れます