ウェーバー刑事は自分の意見が上司を呆れさせていることに気づいた。

 しかし、自分の意見のなにが原因なのかはまるでわからない。


「警部。氏の人差し指に血液と床の素材の一部が付着していました。これは被害者の指で書かれたことは間違いありません。……このダイイングメッセージは重要な手掛かりだと思うのですが?」


「そうだな。確かにこの"血文字"は重要な手掛かりだろう。……しかし、まだ肝心な部分を確認してない」


「肝心な部分?」



 警部はどういったものかと顎を指で二度、三度さすり、ふむと頷いて続けた。



「君は、ラグビーが好きだったね?」


「??? いえ。私が好きなのはアメリカンフットボールですが」


「知ってる。……だからまあ、それに近いことなわけだ。被害者は神話辞典を抱えて死ぬほどギリシャ神話が好きだったのだろう? なら、こいつは些か収まりが悪いじゃないか」



 警部は、真面目だが注意力に欠ける部下の閃きに期待しながら、血文字と辺りに並ぶギリシャ神話の彫像たちを交互に指差して言った。


 だが、ウェーバー刑事の表情は困惑の色をますます深めるばかり。

 これ以上は無理かと警部は苦笑した。



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