まかせて。どうにか大丈夫(1)
今朝も朝から頭が痛い。
最近、ずーっとこれだ。
頭の奥深くがズンッと重く、鈍く、痛い。
体の回りには、まるで宇宙服を着ているみたいな鉛がつきまとう。
宇宙服は着たことないけれど、そんなイメージ。
あの銀色が、全部アルミとかでできてる。そんな感じ。
これになると、もう人とは会いたくない。
人と楽しい会話をしている自分なんて想像できない。
ましてやお酒を飲むなんて…。
お酒を飲むのはすごく好きで、大学生の頃からほぼ毎日飲んでいた。
カゼっぽくても、お酒を飲んでごまかして、そして治したし、
やなことがあったら、お酒を飲んで騒いで忘れた。
楽しいことがあったら、もっともっと愉快に思えるほどはしゃいだ。
若い。
たしかに若いのだけれど、今だってそれくらいできる。
だってまだ、実は2、3年前のことである。
だけど、このいつもの頭痛がやってくると、
私はかつての自分を必要以上に「若さゆえだよなぁ」などと思う。
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カツ子、25歳はフリーター。
朝、昼の時間は自由に使い、夜は3時頃まで居酒屋で働いている。
カツ子のフリーター生活がはじまったのは、いまから2年ほど前のこと。
大学を卒業して、フリーターとなった。
1年くらい前までは、3時までバイトをして、そのあとバイト仲間と飲みに出かけて、
外に出ると太陽はとっくに顔を出し、“世間”はみな、駅に向かって
せかせか歩き出している時刻に家に帰った。
シャワーを浴びて、そのままバタンと横になる。
髪の毛もふかず、まともに寝巻きも着ず、ただフッと力を抜いて布団に倒れ込む。
カツ子が使っているのはベッドではなく、布団だ。
夕方5時ころ目を覚まし、「うぅ~」と右手でボサボサの頭に手をあてて
洗面所に向かう。そろそろバイトの準備をしなきゃ。
歯を磨くついでにベロも磨き、「オエッ」とやって、目に涙をためる。
苦しいけど、これをやらないと1日がスタートしない。
カツ子の1日はここからだった。
カツ子の生活が変わったのは、約1年前。
夕方まで寝て、そして起きる生活をやめた。
朝は基本的に10時に起き(おそくても午前中)、掃除をしたり、炊事をしたり、
街へ出るようになった。
そのひとつひとつに「よし、人間ぽいぞな」と、カツ子はうれしくなる。
そして心で、町田のことを考える。
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ああ今日も、頭が重く、鈍く、そして痛い。
今日は華の土曜日だというのに、カーテンすらあける気にならない。
カーテンの隙間からは、サンSUNサンな太陽の光が差し込んでいて、
さらに奥に、青々とした空が、細く、マローニーくらいの太さで確認できる。
「天気いーんだな。自転車乗りたいなぁ。でもあったま痛いなーー」
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つづく
パソコンおよよ
─新宿のオフィス。OLムー子のつぶやき
小さい「っ」だけ打つときって、みんなどうしてるんろな。
「おはよっ!」みたいに、最後に弾んだ気持ちを出したいとき。
あたしはいつも「つっつ」ってう打ってから、最後の「つ」を消してるんだよね。
なんかこれ、違うなぁ~とか思うんだよね。
好きだなどというものか
現実の恋愛は、ドラマや映画とは別ものである。
もっとグロテスクで、こっけいなものである。
─そっかー。残念。お仕事がんばってね。また今度飲みにでもいこう!
携帯片手に、ホームから改札に向かってエスカレーターを下る。
この回答がきっと成功だろう。きっと。
今日は、デートの約束だった。
デートといっても、高円寺の焼き鳥屋に、ビールをグイッとやりにいくことなのだけれど。
だけど私ははりきって、昨日の夜には今日着る服も決めておいた。
きばり過ぎず、しかし、だらしなさすぎず。
オンナを強調しすぎず、しかし女である。
そんな格好を目指してみた。
そのために今朝はいつもより15分くらい早く起きて会社に出かけた。
いつもより念入りにまつげを上げて、マスカラをつける。
万一、顔が近づいても冷静でいられるように、毛穴を消す。
いつもはあぶらとり紙は使わない。
むしろ、テッカテカに顔を光らせて、「かつてこんなメイクはやってたよなぁ」と、
昔、ミュージックステーションに出ていたときのCHARAを思い出す。
21時まで仕事をして会社を出る。
思わずワクワクしてしまいそうな気持ちを抑えるために、冷静を装う。
電車のなかでは、小説片手にドア口に立つ。
『行きそで行かないところにいこう』大槻ケンヂを読みながら。
たまに窓に自分の顔をうつし、
「顔でっけーなぁ」と、後ろの人と顔の大きさを比べる。
ほんとにでかいのだ。顔が。
ブブブン
メールが来た。
「おっ」
─ごめん。仕事がおわらないーーーー。
・・・・・・・・・・・・・
あぁ。わかるわかる。あるあるあるある。
─そっかー。残念。お仕事がんばってね。また今度飲みにでもいこう!
正解のメールの答えを探して打ち返す。
いかりなんてだせない、甘えた答えなんかも返せない。
私は、くやしいくらいに彼が好きで、そして自分に自信がない。
おわり
