最近、Xなどを見ていると、
「AIでブログやSNSの発信を自動化する」
という話を、よく見かけます。
テーマを決めれば、AIが文章を作る。
その文章を、自動的に投稿する。
毎日、自分が書かなくても情報発信が続いていく。
・・・確かに便利です。私も最初に見たときは、
「これは楽でいいな。もう、ブログを書く必要もないのでは?」
と、少し心が動きました。
しかし、AIが作った文章を、そのままポーンと投稿しているように見える発信を読むと、気になることがあります。
文章は、きれいです。言っていることも、だいたい正しい。
でも、
「この人は、本当は何を考えているのだろう?」
ということが、伝わってこないと感じる。
そんな投稿、見たことありませんか?
投稿は増えています。
しかし、その文章を書いているはずの人が、だんだん見えなくなっています。
アカウントは毎日よく話しているのに、ご本人は少し留守に見える。
これでは、読者の心を動かすのは難しいかもしれません。
AIは速い。でも、仕事が完成したとは限らない
AIへ文章を頼むと、本当に速く返ってきます。
ブログ。SNSの投稿。お客様へのメール。会議の資料。企画書や計画書。
こちらが数行入力するだけで、数秒後には、立派な文章が完成します。
初めて見ると、「これは仕事が速くなった!」と思います。
ところが、実際に使おうとすると、
「何か違う」
「うちの会社には合わない」
「この表現は、お客様には使えない」
「そもそも、事実と違う」
・・・ということが出てきます。
そこから修正を始める。
一部を直すと、別の部分とのつながりがおかしくなる。
また直す。
さらに読み返す。
気がつけば、完成まで10秒だった文章を、90分かけて修正していることがあります。
AIが速かったのは、最初の文章を出すところだけ。
使える状態へ仕上げるまでを考えると、仕事全体はそれほど速くなっていません。
そして、品質もそれほど良くなっておらず、自分らしさが消えてしまう…そんなことが起きます。
文章には、その人にしか出せないものがある
ブログやSNSで人の心を動かすのは、きれいな文章だけではありません。
実際に経験したこと。
失敗して、少し恥ずかしかったこと。
そのとき、誰かから言われた言葉。
自分なりに悩み、考えたこと。
これから、どうしたいと思っているのか。
そうしたものが文章に入ることで、
「この人の話を、もう少し読んでみたい」
と思ってもらえるのではないかと思います。
AIは、読みやすい文章を作れます。
しかし、こちらが伝えていない経験や思いまでは知りません。
材料を渡さずに、
「心を動かすブログを書いてください」
と頼んでも、AIからすれば、
「まず、あなたの心の中を教えてください」
という話です。
自分の経験を伝えずに、自分らしい文章だけを求める。
今振り返ると、私もAIへ、なかなか難しいお願いをしていました。
AIがイマイチなのではありません。自分が楽をしたいという邪な欲求から、AIに無茶ぶりして、結果がイマイチだと文句を垂れている、困った無茶ぶり上司(私)の責任です。
専門分野では「それらしい文章」の限界がよく見える
この違いを、私が特に強く感じたのが、補助金申請のための計画書です。
以前、Xで、「補助金申請業務をAIで自動化して、大きく稼ぐ」という内容の投稿を見ました。
私は中小企業診断士として、補助金申請の支援にも長く関わっています。
そこで、「本当に、そこまでできるのかな?」と思い、AIへ計画書を作らせてみました。
確かに、速い。文章も整っています。
しかし、まったく使えませんでした。
なぜ、この事業へ取り組むのか。
現在、何に困っているのか。
なぜ、この方法で解決できるのか。
誰に、どのような価値を届けたいのか。
補助金を使った後、会社がどのように変わるのか。
・・・こうした大切な部分が、十分につながっていなかったのです。
見た目はきれいですが、事業者の思いや、現場の事情が伝わってきません。
私は何とか修正しようとしました。
しかし、そもそもの組み立てが薄いため、一部を直すと、別の部分とのつながりがおかしくなります。
結局、その計画書は使うのをやめ、最初から書き直しました。
大きく稼ぐどころか、私の修正時間だけが立派に増えました。
AIを使ったことより、本人の考えが見えないことが問題
最近は、商工会議所などの相談窓口でも、AIを使って作った計画書を見ることがあります。
AIを使うこと自体が悪いわけではありません。私も使っています。
問題は、AIへ丸投げしたことで、その方が本当に考えていることが、計画書から消えてしまうことです。
相談で話を聞いてみると、
「実は、こんなお客様に喜んでもらったことがある」
「本当は、この商品をもっと広げたい」
「以前、こういう失敗をしたので、今度は改善したい」
という、その人にしか語れない話が出てきます。
ところが、AIが作った計画書には、その大切な話が入っていません。
これでは、審査する側から、
「事業者自身が、まだ十分に考えていないのではないか」
と誤解される可能性があります。
文章が少し不器用でも、具体的な経験や事業への思いが伝わる。
そのような計画書のほうが、私は応援したくなります。
それが、人情ではないでしょうか。
これは補助金申請だけの話ではありません。
ブログも、SNSも、企画書も、お客様への提案も同じです。
文章の向こうに、その人が見えること。
そこに、人の心を動かす力が生まれます。
人の心を動かすことが目的であれば、この大事なポイントを外すわけにはいきません。
AIで速くなる人は、最終形をいきなり作らせない
では、AIをどのように使えばよいのでしょうか。
私は現在、いきなり完成品を作らせないようにしています。
まず、AIから質問してもらいます。
誰に伝えるのか。
何のために作るのか。
自分は何を経験したのか。
一番伝えたいことは何か。
相手に、どのような行動をしてほしいのか。
入れてはいけない情報や、避けたい表現は何か。
こうしたことを一つずつ整理します。
そのうえで、まず構成案を作ってもらいます。
方向性が合っていることを確認してから、下書きを作ります。
AIには、
情報を整理してもらう。
話の順番を考えてもらう。
矛盾や不足を指摘してもらう。
読みやすい表現へ整えてもらう。
といった仕事を頼みます。
自分の代わりに考えてもらうのではなく、自分の考えを深め、伝わる形にするために使うのです。
このブログも、AIへ丸投げして作っていません
このブログの記事も、同じ手順で作っています。
いきなりAIへ、
「明日のブログを一本書いてください」
と頼んでいるわけではありません。
それができたら苦労はないのです。
(実は私の心のなかにはそんな邪な欲求が今でも残っていますが、これでは自分が表現したいことは実現できないというのが現時点での結論です。)
最初に、記事の目的と構成案を考えます。
次に、私自身の経験について、AIから質問してもらいます。
私は、その質問に自分の言葉で答えます。
その回答をもとに、記事案を作ります。
さらに私が、アメブロ上で言葉を加え、削り、並べ替え、表現を変えます。
少し笑える話も加えます。
AIがきれいに整えた文章を見て、
「いや、私はもう少し暑苦しいはずや」
と、情熱を追加することもあります。
そうして、ようやく私自身の記事になります。
AIへ丸投げすれば、記事の本数は増やせるかもしれません。
しかし、私自身が見えない記事を増やしても、このブログで本当に伝えたいことは届きません。
「AIが作ったから正しい」は、少し危険です
相談の場で、ときどき「これはAIが作ったものなので」と言われることがあります。
その言葉の後ろに、
「AIが作ったのだから、内容も正しいはずです」
という思いが隠れていることがあります。
しかし、AIが作ったから正しい、ということにはなりません。
AIは、間違った情報を使うことがあります。
こちらが伝えていない事情を、勝手に補うこともあります。
分からないことを、自信たっぷりに文章へまとめることもあります。
しかも、文章が立派なので、間違いまで立派に見えます。
これは、なかなか困ります。
仕事、お金、法律、契約、補助金などに関わる内容は、必ず公式資料や現場の事実、専門家、関係機関などで確認してください。
AIが作った文章は、完成品ではなく、考えるための材料です。
仕事が速くなるとは、人が考えなくなることではない
AIを使って仕事が速くなる。
それは、AIが完成品を一瞬で作り、人間が何も考えなくてよくなることではありません。
AIには、質問、整理、比較、構成、表現の調整を手伝ってもらう。
人間は、
目的を決める。
現場の事実を確かめる。
自分や相手の思いを言葉にする。
最後に選び、責任を持つ。
そのように役割を分けることで、本当に大切なことへ時間を使えるようになります。
人と話す時間。
相手の気持ちを考える時間。
現場を確かめる時間。
自分が本当に伝えたいことを考える時間。
AIによって生まれた時間を、人にしかできないことへ使う。
私は、それが本当の意味で、AIによって仕事が速くなることだと思っています。
今日試す一言
ブログ、SNS、メール、提案書、計画書など、大切な文章を作るときは、次のように頼んでみてください。
あなたにとって大切なあの人へのLINEメッセージも、「大切な文章」です。
これから、【作りたい文章】を一緒に作りたいです。
いきなり完成した文章を作らず、まず私の考えを整理してください。
この文章の目的、読む相手、私が実際に経験したこと、一番伝えたいこと、相手に取ってほしい行動について、一度に一問ずつ質問してください。
私が答えていない事実や経験を、勝手に作らないでください。
私が答え終わったら、まず構成案だけを示してください。
足りない情報や、話がつながっていないところがあれば、率直に指摘してください。
AIに仕事を丸投げするのではありません。
AIとの対話を通じて、自分の経験や考えを、相手へ届く言葉にしていくのです。
AIで仕事が速くなる人ほど、考えることまでAIへ丸投げしません。
最後に考え、確かめ、選び、行動するのは、私たち人間です。
藤井正徳
中小企業診断士
至誠コンサルティング株式会社 代表取締役






