本日ご紹介するのは
「サヤすべり取り」
お金をたくさん持っている方のみに許された投資方法。
新甫発会と同時に毎月売りたて玉を立てて
当限に廻るまで長期的に待つ戦略のことです。
確かに理屈の上ではサヤの減少の分だけ利益になるが
その間には上げ相場も出現します。
それに耐えられるだけの
資金力がなければ破綻するということで、
お金持ちにしかできない投資方法といえます。
最近の商品相場では1カ月おきに新新甫発会する銘柄は少なく、
そのため、期先の限月の建て玉が当限に廻ってくるまで
10ヶ月近く辛抱しなければいけません。
サヤすべり取りは、大きな波にポジションを乗せながら
「スワップポイント+売買益」を取っていきます。
サヤすべり取りは(ローリング[Rolling]ともいいます)。
「順鞘の先物は割高なので売りが有利。
だから順鞘時に売って長期間ほったらかしにして、
順鞘による減価を時間をかけて収益化する」という技法です。
もともとは、銅やコーヒーなど先物取引中心に行われていた
運用法です。元祖のサヤすべり取りは、一度ポジションを
作ると半年~1年以上そのままにします。
こうすることで、先物市場で限月間に存在する「価格差=サヤ」
をすべるように取っていけるところから「サヤすべり取り」
という名が付きました。
多少値上がりしても資金不足にならないような
資金配分で売るのがポイントで、
資金が少ない人が過大な数量を売るとたちまち
追証攻めにあって破綻してしまうので、
簡単に見えて奥の深い手法です。
価格が1.5倍になっても鼻歌を歌える程度の
資金配分で取り組むべき手法と言えるでしょう
(下に出ている例はうまく行った例であり、
実際は失敗して酷い目に遭う可能性もある戦略です)
実例を見てみましょう。下図は2008年に原油が暴騰
してから暴落したときのチャートです。
2009年の最初の日に原油CFDを46.34ドルで
追撃売りを行い(逆張りで買いたくなるのを我慢して逆に売る)
4月末に51.12ドルで買い戻したとしましょう。
拡大図は下図となります。
46.34ドルで売って、51.12ドルで買い戻すので、
一見、損に決まってるだろ?と思いますが。
ところが、毎月のロールオーバー時の
「価格調整額」を考慮すると話が変わってきます。
この時期は大きな順鞘(コンタンゴ)でしたので
原油CFDを売り建てしていた人は、
ロールオーバーごとにけっこうな額の価格調整額を
受け取れた計算になります。
順鞘時のロールオーバーでは
「期近限月を安く買い戻し、一つ先の限月を高く売り直す」
というオペレーションが行われます
(原油CFDを買ってる人は全く逆となります)。
したがって大きな順鞘が続いている時期に原油CFDを
売っていると、毎月毎月、価格調整額を受け取れるので、
値上がり幅が「価格調整額の受け取り総額」より
小さければ利益を得ることができるわけです。
下図はロールオーバーによって対応する先物の限月が
変わっていく様子を別の色で表示したものです。
安く売って高く買いなおしてる様子が分かりますよね。
次に示した図は、ロールオーバー時の価格調整額
を補正したときのチャートです。
期近原油先物を繋いだチャートは「つなぎ足」
などと呼ばれますが、
ロールオーバー時の差を修正したチャートは
「修正つなぎ足」と呼ばれます。
実質的な損益が分かるチャートは修正つなぎ足のほうです
(上図の色違いのチャートを繋げるときに、
価格調整額分ずらして作成したチャート)。
世の中一般のチャートは、単なる「つなぎ足」で
表示されていることが多いです。
このため先物相場の仕組みをよく知らない人は、
つなぎ足だけのチャートを見て「原油が上がれば儲かる」
と単純に考えて原油CFDとか原油ETFをナンピン買い
してしまうわけですが、実際には毎月のロールオーバーで
コストがかかるため「上がってるように見えて
ロールオーバーで損をするのでCFDやETFはサッパリ上がらない」
ことが起こります。
これを逆手にとるのが鞘滑り取りという技法です。
この期間(2009年1月~4月末)において、
ロールオーバー時の順鞘幅の合計は15.75ドルでした
(第5営業日の終値でロールオーバーしたとして計算。
ロール日を多少ずらしてもたいして変わりません)。
つまり原油CFDを売っていた人は価格調整額として
15.75ドルを受け取っていました。
この期間の期近限月の値上がり幅は4.78ドルですから、
原油CFDを売っていた人は値上がりによって4.78ドル損をして、
価格調整額によって15.75ドル儲かっていたということになります。
ところで、鞘滑り取りという手法は、
本来はこのような数ヶ月以下の短期トレードではありません。
長期間、ひたすら売りっぱなしにして、
順鞘の乗り換え分を地味に積み重ねていく方法です。
下図は2008年1月から2016年12月までの長期チャートです。
赤線が「期近つなぎ足」、
(よく見るチャートです。)
緑線は「修正つなぎ足」、
赤線を見ると、2008年1月に約100ドルで
売って2016年末まで粘った場合
約45ドルの利益に見えますよね。
ところが原油CFDを売って放置した人は
(サヤすべり取りをしていた人は)、
順鞘時のロールオーバー時には
価格調整額が受け取れますからそれが積もり積もって、
マイナス15ドルまで価格が下がったことと
同じ利益を享受できます(緑線を見て下さい)。
つまり利幅は115ドルということです。
これがサヤすべり取りの威力であり、
また、「買ってる人が知らず知らずに大損する」
落とし穴でもあります。
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