岩崎城主として小牧・長久手の戦いに際して獅子奮迅の働きをなした丹羽氏は初めから岩崎城にいたわけではなく、今の日進市内を南から北進する形で本拠を移していきました。最初に本拠としたとされるのが折戸城・吹上城で、この両城は別名とも取れますし、別々の城と解釈することも可能なようです。ここでは別々のお城であるとの評価のもとで記載してみることにしました。

丹羽氏従が日進市内に居を構えたのが文明3（1471）年で、この時は恐らく今の折戸八幡神社の境内にお城があって、吹上城という名で呼ばれていたものと推測できます。八幡神社の境内には「折戸古城」と刻まれた石碑が立っていますが、これも折戸城の前身としての旧・折戸城（すなわち吹上城）を示したものと解釈すればよいのでしょう。その後、八幡神社の西側に丹羽氏従かその子・氏員が新たに構えたとされるのが今度こそ折戸城で、現在Googleマップ上で「折戸城」と示されている場所がそこに当たります。江戸時代に描かれた折戸村村絵図」は、愛知県図書館のアーカイブでネット閲覧することが可能ですが、この絵図を見ると折戸八幡神社の西側に「古城」と記された四角い空間があります。八幡神社からの距離感から見ても、この「古城」が折戸城を指しているのは間違いなさそうです。

この建物の向こう側が絵図面上の折戸城。折戸八幡神社から。

絵図にある「古城」が折戸城で、「折戸古城」の石碑が吹上城です。ややこしいですねー。
折戸八幡神社は地元の氏子の皆様によって大切に守られている雰囲気が伝わります。八幡神社のすぐ脇に参拝者駐車場が設けられているのですが、そこの注意書きを見るだけでもこの神社に対する分厚い志を感じます（現地でお確かめを）。残念ながら折戸城・吹上城とともに後世の改変が著しいようで、お城の痕跡を残すものは見当たりません。ただよくよく考えてみると境内と隣接地との間は一段凹んでいるとも見て取れるので、もしかしたら堀跡を踏襲している可能性はあります。

なお東側の山裾には竪堀状の掘り込みも見られますが、さすがにこれは後世のものだと思いました。
中世以来の武家では、親子で別々の居館を構えていたケースが珍しくありません。吹上城と折戸城も丹羽氏従・氏員親子がそれぞれに構えた居館だと考えれば辻褄が合いそうな気がします。その場合、折戸城が丹羽氏従の「隠居地」であるならばこの場所がこの地域にただひとつの「古城」として記されることはないと思いますので、代替わりした丹羽氏員が新たな惣領の居館として折戸城を築いたと考える方が自然でしょうか。
以上の話は、現地で岩崎城歴史記念館の内貴さんと八幡神社境内を歩きながら考えていた妄想なので、内貴さんから提示された出典を除けば何の根拠もない話ではあるのですが、遺構も何もないところからこれだけの話をひねり出せるところに、古城巡りの面白さがあるんですよね。日進市のお城めぐり、まだまだ続きます。

折戸城・吹上城（城をやる）

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家康VS秀吉小牧・長久手の戦いの城跡を歩く

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【折戸城・吹上城（愛知県）】一つの城か二つのお城か