前編では、車載AIモデルの高度化や自動運転、SDV(Software Defined Vehicle)の進化、普及によって、
車載ストレージの重要性が高まっている事についてご紹介しました。
では実際に、最先端の自動運転車には、どれほどのストレージが搭載されているのでしょうか。
公開されている分解レポートをもとに、検証してみたいと思います。
◆Teslaは「走るコンピュータ」を実現した企業
Teslaの特徴は、単に「EVを製造している」という事ではありません。
自動車そのものを、「走るコンピュータ」として扱い、設計している点にあります。
Teslaの自動運転システム
FSD(Full Self-Driving)は、
複数のカメラで周囲を撮影
→AIプロセッサが映像をリアルタイム解析
→車両や歩行者、標識などを認識
→最適な走行ルートを判断
→ステアリング、アクセル、ブレーキを制御
という処理を、短い時間の中で何度も繰り返しています。
Tesla FSD V13.2.8のアップデートのリリースノートを見ると、
36 Hz, full-resolution AI4 video inputs
(AI4※では36Hzのフル解像度映像入力)
という記述がありますので、
1秒間に36回、カメラの映像データが、AI4に入力されている事になります。
つまり、約0.0278秒間隔で入力が行われています。
FSDV14以降のアップデートのリリースノートには、フレームレートの記述が無いので、公式資料からは確認できませんが、
Tesla関係者の話によると、V14以降では、
フレームレートが48Hzへアップグレードされているようです。
つまり、約0.0208秒間隔で入力が行われます。
それにより、AIはより高い頻度で、周囲の状況を認識することができ、
その認識結果をもとにして、ステアリング、アクセル、ブレーキなどの車両制御を行っているのです。
人間で言えば、「目」で見た情報を「脳」で判断し、「手足」を動かす一連の動作を、FSDが代替して行っているイメージです。
※AI4は、第4世代目の自動運転コンピュータシステムで、HW4と表記されることもあります。(Hardware 4)
◆最新のTeslaでは1TB級ストレージを搭載
エレクトロニクス製品の、評価、分析を行っている「TechInsights」が、Tesla FSD HW3/HW4を分解したレポートでは、
HW3は、キオクシア製32GB UFSを2基、Micron製64GB NANDを1基搭載し、合計128GBのNANDフラッシュの搭載が確認されています。
対してHW4では、1TB級のNANDフラッシュの搭載が確認されています。
多少のずれはあるかもしれませんが、
HW3が2019年頃のモデルに搭載、HW4が2023年以降のモデルに搭載されている事から、
わずか4年程度で、FSDコンピュータに搭載されるストレージ容量は、8倍以上に拡大したことになります。
これは、AIモデルの高度化や、OTAによる継続的なソフトウェア更新など、保存すべきデータ量の増加が、反映された結果だと考えられます。
◆キオクシアにも追い風となる可能性
データセンター向け製品と比較すると、注目度が低く、あまり取り上げられていませんが、キオクシアも車載向けUFS製品として
・64GB
・128GB
・256GB
・512GB
・1TB
のラインアップを展開しています。
(2026年7月時点)
次世代SDVや、ADAS(先進運転支援システム)向けの、UFS4.0/4.1規格に準拠する製品を、2025年7月31日にサンプル出荷したとの発表が行われており、
順調にいけば、そろそろTear1での評価、設計が終わって、量産準備が進んでいる可能性があり、今後の新型車への搭載が期待されるところです。
● 車載用UFSの主な特徴
・車載グレードのフラッシュ製品によるシステムとストレージの高信頼性
・地図、ビデオ、イベント記録用大容量ストレージ
・多様なアプリケーションに対応する幅広い容量ラインアップ
・温度範囲:-40°C~+105°C(AEC-Q100グレード2)に対応
・UFS4.1製品は、第8世代BiCS FLASH技術を採用
◆日本メーカーの「SDV」はどうなの?
Teslaは現在のSDVを象徴する存在ですが、日本の自動車メーカーも、同じ方向へ歩みを進めています。
トヨタグループでは、Woven by Toyotaが開発するソフトウェアプラットフォーム「Arene」を軸に、ソフトウェアによって継続的に機能を進化させるSDVの実現を目指しています。
Areneは、OTAによるソフトウェア更新やAIを活用した運転支援、クラウドとの連携などを支える、基盤プラットフォームとなるもので、
自動車を
「購入した時が完成形」
と捉えるのではなく、
「1人ひとりのニーズに合わせ、購入後も進化する存在」
へと変えていくことを目指しています。
トヨタやレクサスの次世代SDVに、どれくらいの容量のストレージが搭載される予定なのか、現時点では情報は見つかりませんが、
Tesla車で既に、1TB級のストレージが採用されていることを考えれば、トヨタやレクサス等、日本メーカーのSDVでも近い将来、
TB級の大容量ストレージ需要が拡大する可能性は高いのではないでしょうか。
◆検証の結果・まとめ
Tesla FSD HW4の搭載車では、やはり1TB級のストレージが搭載されている事が分かりました。
また、HW3からHW4へと移行するわずか4年ほどの間に、ストレージ容量は8倍以上にもなっていた、という事実も確認する事ができました。
今回の検証を通じて、SDVの進化が私たちの想像以上のスピードで進んでいる事を、改めて認識した次第です。
今回はTesla車について、検証を行いましたが、2027年以降、日本メーカー各社のSDVが本格的に普及していく中、
国内の車載ストレージ市場も、ますます拡大していく事が予想されます。
トヨタの「Arene」、ホンダの「ASIMO OS」などが、先頭を走るTeslaのFSDシステムにどこまで迫れるのか。
その時、各社が自動車1台で扱うデータの総量、ストレージ容量は、現在の1TBクラスから、今後どこまで増えていくのか。
そのような視点で、今後のキオクシアのUFS製品ラインナップに注目していくと、データセンターだけではない、
また新たな魅力、成長の可能性が見えてくるのではないでしょうか。
最後までお読みいただき有難うございました♪
(投稿日2026年9月11日)
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