好きな人といる。
「…う…ゆーちゃんっ!」
「ふぇっ!?」
私、中野癒黄(なかのゆき)。
ただいま私の好きな人、蒼川朱羽(あおかわしゅう)くんに呼ばれました!
「…ごめん朱羽…」
「いや、別にいいけど、ぼーっとしてるからさ」
死ぬほど好きで、そんな彼と結ばれたのはつい最近。
彼は、心の傷があって、学校にはほとんど来ない。
だから私の親友の紫音にも手伝ってもらって、
彼の家に行ったりとタイミングを頑張って掴み、結ばれた。
最近は少しずつだけど、学校にもくるようになった。
「…なー、ゆーちゃん」
「んー?」
「安曇ってさ、どうなの?」
「…好きなの?」
「俺はゆーちゃんにゾッコンです」
にかっ、と照れたように笑う彼。くそぅ、かわいいぞ…
「…紫音はね…悲しいよ。」
「…どこが?」
「本当は両思いなんだよ?でもね、自分でその恋を諦めちゃいそうなんだ。相手も、おんなじかんじみたい。」
「相手って、木津?」
「鋭いね」
私の恋のキューピットになってくれた紫音。
だから、今回は、私が頑張るからね。
「…ゆーちゃん?」
「あの。ね、朱羽…私できるかな?紫音、幸せにできるかな…ぁ?」
人の前ではなきたくない。
でも、親友のことが絡むと、いっつも涙腺がゆるくなる。
「ごめん…っ」
「いいよ、思いっきり泣きな」
ぎゅ、と私を包み込んでくれる腕があったかい。
「…できるよ、ゆーちゃんなら」
やさしく頭をなでてくれる彼が大好きで。
「ゆーちゃんは、俺を幸せにしてくれたもん。俺も頑張るから、一緒にがんばろ」
そう、私たちは頑張るのだ。
私たちを幸せにしてくれた、彼女のために。
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鼓動が早い。
私のものじゃないみたい。
そんなのんきなことを考えている私。
本当に場違いだ。
「木津くん、好きです」
学年一の美少女が、私の好きな人に告っている。
あれ、彼の好きな人って、彼女じゃなかったっけ?
思考がうまくまとまらない。
どうしよう、彼が「俺も」なんていったら。
私、泣かないでいれる?
一枚の壁越しに聞こえる声。
聞き逃すまいと、私は耳を澄ましていた。
「……ごめん。」
はじかれたように、顔があがる。
「好きな奴、いるから」
「…そっか、ごめん。ハッキリ言ってくれてありがとう。」
「俺こそ…ごめん」
彼の言った言葉に救われた気がした。
でも、同時に落とされた気もした。
天と地程の違いがある彼女なのに
私の好きな人はふった。
彼が好きな人は、私なんか程遠いのだろうか。
うれしいはずなのに、頬からぽたり、と雫がこぼれた。
