赤坂ACTシアター、梅田芸術劇場
望海風斗主演の雪組公演
( 'ω'o[ 作品解説 ]o
禁酒法時代のニューヨーク
そしてシカゴを舞台に
貧しいイタリア移民から
闇の一大帝国を築き上げ
歴史にその名を刻んだ伝説の
ギャング、アル・カポネ。
アメリカが最も華やかだった
狂乱の20年代を生き抜いた
多彩な人物達の人生模様を背景に
愛と野望に生きた「人間」
アル・カポネの鮮烈な生き様と
ダンディズムを、彼を追う捜査官
エリオット・ネスとの奇妙な友情を
絡めてドラマティックに描く
ミュージカル・ピカレスク※1
※1 ピカレスク
悪人。悪党。
この作品においては
犯罪を犯すアル・カポネが
観客の共感を許す。
その様な意味合いでしょうか。
世紀の犯罪者が主人公。
これが宝塚の作品として
“らしい”か、“らしくない”か…
まずは後者を選ぶと思います。
ちなみに僕もそうでした。
未だに正直どちらとも…ですが。
それでも何度も作品を見直し
ナウオンで出演者の話を聞き
自分なりの考察を深めていく内に
上手く文章化は出来ませんが
これは深いメタドラマなのだ!!
という所に辿りつきました。
宝塚の売りは“男役の美学”
悪の美ではなく正義の美
もちろん主演男役に限りますが。
なぜ正義でなければならないか…
男役というのは単に男装して
舞台に立つ女性ではありません。
宝塚歌劇団の歴史が語るように
歌劇団の女子生徒が男性の記号で
世間の体裁や誹謗に屈さず断髪し
確固たる信念を持って堂々と
社会に立ち向かう姿を言うのです。
また男役という役柄の確立以来
その美学は女性解放、男女均等…
社会で共に成長して来たでしょう。
まさにその様な姿が正義であり
その正義に魅了されます。
話が飛躍し過ぎてしまいましたが
また難題を提示した原田先生!!
この方…つくづく“人間性”を
描くのがお好きなんですね(^ω^;)
アル・カポネの1stドラマは
反社会的なギャング頭、犯罪者。
そこに本来の人間性を持たせ
男役の在り方を利用する事で
宝塚での2ndドラマが生まれ
主人公は一気に輝き出します。
劇中でアルはこう語る
“事実は一つだ。
だが、その捉え方は
人の数だけある。”
事実は一つ、真実は無数…
まさに賛否も評価も多種多様に
劇外、観客の意識の中で自由に
完結するメタドラマです。
僕は映画を観ていませんが
そこに描かれているのは
実録ではない実録“的”なもの…
といった極悪の1stドラマらしく
原田先生の脚本の下敷きに
なっていたのは事実でしょうが
さすがにその辺は描けないですね
さて、舞台は刑務所から始まります。
すでにアル・カポネは収監中の身。
特別室の独房に蓄音機を持ち込み
ナポリ民謡を聴きながら
禁止されているバーボンを
悠々と飲んでいます。
そこへ映画の台本、1stドラマを
書いた新進気鋭のシナリオライター
ベン・ヘクトがアルの子分達に
連れられやって来ます。
自分がモデルとなる映画のシナリオを
獄中で入手し読んでいたアル。
そして身の危険に怯えるベン。
一瞬やや緊迫した空気が漂う中…
意外にもバーボンを勧めつつ
半生を語り聞かせ始めるアル。
ここから2ndドラマが生まれます。
アル・カポネ(のぞ様)
まずポスターが素晴らしい!!
アンダーグラウンドの帝王
ギャング、ボス、悪、冷徹非道…
第一印象はそんな感じでした。
しかし観劇後に改めて見ると
何故か違って見えました( `・ω・)!?
2ndドラマの影響が大きいのか
裏社会で生きたギャングの野望は
不思議とイメージの幻想に過ぎず
ポスターのアルは驚く程に
瞳で人柄や心情を語りかけます。
軍事的・政治的・商才に至るまで
才能とセンスに長けていた彼。
…もしもそうでなければ…
義理と人情、正義感に溢れる男。
…もしもそうでなければ…
その全てを内面から滲ませ
逃れられない運命に苦悩する
のぞ様の説得力ある強い演技に
何度も心が揺さぶられました。
“I will be American
いつかきっと…”
これが物語の核、そして彼の夢。
貧しい暮らしから抜け出すため
自由の国アメリカの可能性へ
希望を託した一人の男の行方。
それを追う物語が迎える結末は
正義とは?悪とは?人間とは…?
僕が辿りついた場所は
そんな深い思慮の森でした。
ベン・ヘクト(永久輝)
( 」´0`)」≪ひとこ---!!!!
1stドラマ部分の脚本を書いた
新進気鋭のシナリオライター。
この作品ではアル自身から
頬を刻むスカー(傷)の由来
その傷(運命)に導かれた
歩みの真実を聞かされます。
そしてアルの人となりに
魅了され次第に心を寄せていく
我々観客にとても近い人物。
ただ、相当に実在の人物から
かけ離れ過ぎているそうで
オリジナルキャストのほうが
良かったかもしれません。
-こうして悪は滅びた-
-The World is Yours
(世界はあんたのもの)-
前文から後文に書き換えた
シナリオのラストの一文は
弱きを助け強きをくじく
心優しきダークヒーロー
そしてどこまでも人間である
アル・カポネの最後の大博打に
ベンがスクリーン内の英雄という
勝利を捧げたのかもしれません。
ところで…“新進気鋭”の語意
―新たにその分野に現れた
鋭い意気込みがある将来有望な人-
これがひとこに似合い過ぎて!!
のぞ様に濃厚な個人指導を受けた
大きなソロ曲も力強く歌い上げ
狂言回し的な役割も担っていて
決して多くはない登場回数の中で
きちんと存在感を出していました。
暗黒街の帝王を目の前にして
怯えながらも冷静さを保ち
脚本家のプライドを守り抜く
真摯な姿勢が記憶に残ります。
エリオット・ネス(月城)
世紀の悪党を追う捜査官。
主人公と対峙する二番手枠。
一幕では二幕の伏線として
ほんの少しだけ登場します。
よってメインとなるのは二幕。
悪を滅ぼし社会の浄化に務め
アル・カポネ逮捕に闘志を燃やす
こちらも正義感に溢れる男ですが
一幕での神設定なアルとの親交が
なんとも原田先生らしく(^ω^;)
二人の間に友情が生まれる故に
非常にもどかしい展開を招きます。
アルの貫く正義を知るにつれて
自分の信じてきたものが揺らぐ…
迷いのないアルと迷うエリオット
れーさんもさぞ難解な壁に
何度もぶつかった事でしょう。
しかしそのリアリティーのある
繊細さと清潔感と生真面目さが
彼女の現持ち味とマッチして
とても好感が持てる役でした。
ジャック・マクガーン(真那)
少年から成年までの通し役。
一幕では貧しい新聞売りの少年が
二幕ではギャングのボスに
命を預ける弟分になります。
ジャック少年の目で見るアルは
ヒーロー以外の何者でもなく
心酔しながら成長していく
過程が感じられる真那さんの
丁寧な演技がとても良かったです。
特筆するキャストは
この辺りで止めておきますが
芝居巧者が揃う雪組ですので
主人公の正義を際立たせる為に
悪を担う登場人物達は一層に悪く
主人公が良き夫、良き父であった
家庭的な部分を表現する為
妻子共に効果的に登場します。
のぞ様のアル・カポネ化は
やはり心優しき悪党の域を
超えることはありませんでした。
さて…キャストの称賛以外に
原田氏の脚本と演出について
どうも納得出来ない部分が
数箇所あった事も少しだけ。
上の方でも触れていますが
やはり犯罪者アル・カポネの
悪の事実描写が弱すぎるせいで
エリオットとの関係性が薄れ
追う者と追われる者との緊迫感が
ほぼ感じられませんでした。
“親友”という言葉を口にする
タイミング…いやその発言自体
感心できるものではなかったです。
アルがエリオットに語る真実…
二人の関係性を軸にした
どこまでも運命的で哀愁漂う
男の濃い生き様が見たかった(ㅠ.ㅠ)
また、エリオットとベン…
アルの真実にふれた者同士
書き改めた台本を軸にして…
なんとか出逢ってほしかった。
お互いが知るアルの正義を
語り合う内に友情が生まれ…
この際、奥様のメアリーも
ご子息のソニーも呼び込んで(笑)
再逮捕後の回想録という様な
物語もとても興味深いです。
勝手な物言いも程々に(・_・;)
好きか嫌いかなら好きです。
ただ…何か“惜しい”作品でした。

