夢をみた

こんな夢でした

ぼくは物乞いのまだちっちゃな少年で、とても広々とした通りにぼーっと突っ立っていたんです。

その時

見知らぬ男が話しかけてきました。

上下とも真っ黒な服を着ていて、まるでカラスのようでした。

黒い男は唐突に

ぼくにことばを投げてきた。

「上目遣いで人を見てはいけないよ」

ぼくは、それに答える。

「人じゃないよ金づるだよ生きるためだもの媚びなきゃね」

「君はその日一日をどうにかこうにか過ごすために、そのために下を向いて歩いてはいけないよ」

男は続けて

「人の目より上を見上げなさい。空に浮かぶ雲を見なさい。日が落ちたら月や星たちを見つめるんだよ」

「ぼく言ってもいいかな?」

「もちろんだ。私は飾り気のない馬鹿正直な、そんな言葉が大好物なんだ」

ちょっととまどって

「お空にパンは落ちてないよ」

「全くその通りだな何て忌々しい事実なんだろう。だが、私のように時間を食べて生きているそんな種族もいるんだよ」

「ムリだよちゃんとパンを食べなきや死んじゃうよ」

男は吐き捨てるように

「野垂れ死には詩人と貧乏人の特権だな」

「ぼくには妹が三人もいるんだ。三つの口が毎日パンを待ってるんだ。何とかしなくちゃ妹たちは死んでしまうよ」

「何て素晴らしい生き地獄だろう。仕方がない、とりあえず私たちは私の古くからの女友達の家を訪ねることにしよう」

「恵んでもらうんだね」

「彼女は娼婦であり聖女でありそして母でもある人なんだ。私は彼女の豊かな髪にそっと顔を埋めてその気高い香りを嗅ぐことでパンを得る以上のものを与えられるんだよ」

「ぼくのお腹はふくれないけどね」

「まあ、君はまだ余りにも若すぎるのだから、人生の甘いところを享受する無条件の資格を持つ者なのだから。私なんかと同じである必要なんかさらさらないさ。さてそれではそれなりの糧食を用意してもらうことにしようか」

「どこまで行くの?」

「ココロの住み場所住所なんか御本人もさっぱりだろうよ」






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目が覚めた。
真っ黒いカラスみたいな
あの男。
いつか、どこかで見た気が
なぜか...
しきりとしてる
きょうの始まりの寝台の上で。