不思議だな
黒い色って白色や灰色と同じ無彩の色なのに
どこが違うんだろ
ピアノや黒髪
喪服やお葬式
ひとりが好きだし完璧主義で秘密主義だし
孤独って好き
だって綺麗だもん
ポーカーフェイスを装い
他人に干渉されたくない
そして何より音楽が好き
ひとりで新しい世界に入っていけるし
でも
絶望するのは怖い孤独も本当は怖い
暗い世界は大嫌い
ローソク一本分のひかりでも欲しい
すがりたい
わたしの弱さや不安や悲しみなんかを
他人に見せたくない晒したくない
隠していたい
そんなとき
”黒”って使える超便利なイメージ
午後のカフェ
窓の外では冷たい雨が降っている
わたしは
ミステリ小説を今からゆったり楽しむの
飲み物が目の前に運ばれて
ジンジャーブレッドラテみたいだけど
ぜんぜん違くて
何かわたし仕様の
今日のわたし専用の作ってもらった
あたたかい のみもの
そっと大事にひとくち含んで
手のひらサイズの本のページをめくる
整然とぎっしり並んだ詰め込まれた
文字の群れ 作者の世界のかたまり
わたしは そこに入って次第に溶けてく
ただの紙のなかでゆったり過ごす
ふと 目をあげる
わたしの
真ん前にクラスメイトがノート開いてる
彼女はわたしをちらとも見ない
ノートの方が好きみたい 誰よりも
シャーペンでぼんやりと
でも 一心不乱なみたいに
文字を書いてる
書いてる 文字 目に入っちゃった
書いてあった
同じ 文字
たんぽぽたんぽぽたんぽぽたんぽぽたんぽぽ
たんぽぽたんぽぽたんぽぽたんぽぽたんぽぽ
たんぽぽたんぽぽたんぽぽたんぽぽたんぽぽ
たんぽぽたんぽぽたんぽぽたんぽぽたんぽぽ
たんぽぽたんぽぽたんぽぽたんぽぽたんぽぽ
はっとする
ぞっとする
するよね一瞬あぜんとしちゃった
でね わたし彼女に聞いてみた
「君はいったいどこに行ってるのかな?」
「だって つまんないし」
(君は怖いよ 言えないけどさ)
彼女は同じ言葉を書き続けてる
ふと 思う
彼女の心が白からグレーに変わったみたい
”たんぽぽ”
が今から四分の一年後くらいには
たぶん会える子たちなんだろうけど
”たんぽぽ”たいてい黄色い子たち
だっけ?
わたしはミステリから彼女の手元に
釘付けになってる 視線
”黒”のイメージ また浮かぶ
食べ物のおこげのイメージ黒だっけ
食べるけど わたしは
”黒”は自尊心が超高い
”黒”は自分から多分 死を選ぶんだろう
他人から 踏みつけられる前に
そっと 静かに
