近所の町医者に恋をした話。

彼は二重の瞳が美しいイケメン。
飴と鞭を使い分ける真面目な医師。

ちゃんと患者を叱れる厳しい人。
それ以上に、優しさもある。
患者に寄り添ってくれて、
話を最後まで聞いてくれる。

わたしが出会った中で、
一番、信頼できる医師。
とても尊敬している。

しかし、内面は分からない。

医師としての姿しか見てないしね。
奥さんと子どもがいるってくらいしか、
知らない人。

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転移性恋愛と言うのは、
昔の精神科医フロイトが解いた説。

主に女性患者が、
男性医師に恋愛感情を持つこと。

転移には陽性と陰性がある。

陽性はプラスの気持ち。
好意、安心、尊敬、憧れ、依存、信頼。
この感情が、恋愛に変わる。

陰性はマイナスの気持ち。
嫉妬、妬み、嫉み、怒り、反発など。
医師に対して向けられる敵意のことだ。

わたしの場合は、陽性転移。
先生への憧れ、尊敬、信頼が
度を超えてしまった。

これって、転移したの?

何だろう、転移って。
心理学で説明すると。

患者の過去の記憶が反映する。
主に父親像だと言う。
自分が満たされなかった感情や思いが、
医師に向けられる。

医師に、自分を受け止めてほしい!
って思うのだ。

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わたしの場合はどうだろう。

確かに、父親はわたしのことを
一生認めるつもりはないようだ。

わたしは父親から無能と言われ
バカ扱いされた。
人の言うことは聞かないし、
人間性がなってないし、
人として最低だと言う。
今も、扱いは変わっていない。

つまり、父親に
認められなかったわたしは、
代わりに先生に認めてもらおうと
思っている?

いや、思ってない。

先生のことは、
純粋にイケメンだと思っている。
厳しくて、優しいところ。
わたしを気遣ってくれるところに惚れた。

何より、先生がカッコ良いからだ。

しかし、転移って潜在意識の中にある。
わたしはイケメンの先生が好き
って思っていても、
心の奥底にいるわたしは、
どう思っているか分からない。

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転移性恋愛なら、
現実を知った時に恋心が冷めるそうだ。
もしくは、性的関係を持ったあとに
全て終わってしまうらしい。

わたしは、転移かどうか
ずっと考えてきた。

だけど、わたしの中では
これは転移ではない、と確信した。

転移していると言うことは、
無意識のうちに
好きになっていると言うこと。

これは、普通の恋愛にも当てはまる
好きになろうと思って
好きになる訳じゃない。

この時点では、普通の恋愛と同じ。

もし、それが転移性恋愛なら、
愛情を止められないだろう。
気持ちは暴走してしまって、
何がなんでも先生を手に入れよう!
あわよくば、関係をもとう!
と、それを実行に移すだろう。

しかし、わたしのは転移ではない。
何故なら、自分で転移なのか?
と疑問を呈したからだ。

本気で転移を起こしている人は、
客観的に自分を見れないだろう。

わたしと先生は既婚者である。
お互い子どももいる。
一線を超えてしまったらどうなるだろう。

いわゆる、不倫だ。

わたしは、先生の社会的地位も考える。
なんて言ったって、お医者さまだ。
そんな尊敬すべき方の人生を奪う。

ただの人間のわたしに、
そんな権利はない。

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それにね、わたしは
何者でもない人間なんだよ。

ただの、そこらへんの主婦。

子どもをたまに厳しく叱ったり、
褒めたり、遊んだりする。

ちょっとトンチンカンで、
いつも先生に迷惑をかけている。
つまり、わたしの父親が良く言う
おバカな人間に近い人。

でもね、バカはバカなりに
人生一生懸命、生きてるんだ。
真面目に不真面目。
全力無気力、努力サボり魔。
自分って一体なんなのか、
確立できないわたし。

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こんなわたしを認めてくれて、
ずっと寄り添ってくれるのは
わたしの夫しか、いないんだよ。

わたしの憧れる
大好きな医師じゃないんだよ。
分かってる、分かってるからこそ辛い。

ただ、プラトニックに
純粋に、先生が好きなだけ。

会いたいけど、すぐに会えない人。
だって医師と患者の関係だからね。
無駄に会いに行ったら、迷惑極まりない。

我慢できるから、
転移性恋愛ではない。

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深く突き詰めたら見えてきた。

わたしは確かに
先生の優しさを求めている。
時に厳しく叱ってほしい。
それで安心感を得たいのだ。

先生に嫌われたくない。

先生はわたしのことなんて、
ただの患者にしか思ってないから、
両思いになれるはずはない。

だから、好きになってほしい
って願望はない。

ただただ、先生のことが好き。
一方通行の恋なのだ。