(前提として、今、父親は一緒に

 暮らしている。

 父親は心筋梗塞で倒れた。

 心臓も悪いし、腎臓も悪い。

 ほっておくと心配だから、

 一緒にいるのである。


 あと、幼い子の子育てが大変だから

 いてもらっている、と言うのもある)


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さて、最近の話。


無茶苦茶な理由で、

娘を怒鳴り付けてしまった。


ただ『いただきます』を言わなかっただけ。


娘は3歳児、イヤイヤ期の真っ最中。

頑固な性格で、

人から言われたことは絶対にやらない。


しかし、それも幼稚園に行ってから

緩和されてきた。

社会に出て、少しは分かったみたい。


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わたしの父親が、

挨拶はちゃんと出来る子に

しないといけないと

孫のことを心配していた。


わたしが、ことごとく

言うことを聞かない娘だったから。

孫のことも、

わたしと同じような人間になるのではと

心配しているらしい。


なので試しに朝から、

娘を怒鳴ってみた。


『なんで、いただきます言わないの!

言わない子はご飯あげない!』


いつも、そんなことで

怒らないのに。

娘はビックリして怯えていた。

泣いて泣いて震えていた。


その姿を見て、

急にわたしの呼吸が早くなった。

胸が高鳴って苦しかった。


これがトラウマのフラッシュバック

なのだろうか。

幼い頃のわたしが、

ふっと自分の中に帰ってきた気がした。


わたしは覚えてないけど、

父親から同じように怒鳴られていたんだ。


覚えていることもある。

包丁持ち出されて

『人の言うことを

聞けない子は悪い子になる

一緒に死のう』

と脅されたこと。


あの時のわたしは怯えていたけど、

そんなにトラウマになるほど

辛くはなかった。


しかし、本当のトラウマは違う。

潜在意識の中にある。

自分では気付いていないけど、

脳は覚えているのだ。


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わたしは、娘の前で大泣きした。


(わたしは青なので、

 娘は桃ちゃんにする。仮の名です)


『桃ちゃん、ごめんね!ごめんね!

怒ったりしてごめんね!

違うの、こんなんじゃないの。

違うよー!違うよー!違うんだよ!』


わたしは狂ったように泣いた。

娘と息子も不思議そうに見ていた。


息子は「ママ、泣かないでー」

って言ってくれた。


本当は泣くつもりはなかった。

だけど、平常心を保てなかったのだ。


このトラウマを吐き出したかった。

解放したかった。


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この、わたしの一連の話。


父親に話そうと思った。

辛かった胸のうちを語ろうと決心した。


「お父さんに言えなかったことが

ずっとある。

さっき、苦しくてずっと泣いていた。

わたしの本当の気持ちを聞いて欲しい」


真剣な眼差しで言ったのに。


父親が言ったこと。


お前のような

バカな人間の話は

一切、聞かない!

聞きたくない!


わたしはさらに言った。


「そうなの?聞きたくないの?

本当に大事な気持ちだよ」


うるせぇ!

バカの言うことは

聞かないって言ってるだろ。


わたしは諦めた。

この人は、わたしが何を言ったって

聞いてくれない。


わたしが、昔のことを思い出して

泣き叫んでいたことも。

父親にとったら、どうでも良い話。


昔からそうだ。


お父さんが、一番正しい。

お前の言うことは間違っている。

俺は賢い、お前はバカだ。

お前は人の言うことを聞かない。

人として最低、人間性がなってない。

お父さんほど、人間が良い人はいない。

お前ほど人間が最低なやつはいない。


ずっと、そう言われてきた。


わたしは確かにバカだった。

自分で動けない人間だし、

空気も読めないし。

人の気持ちも分からないし。


いや、お父さんこそ

人の気持ち分かってなくない?

聞きたくたいってすぐに言うし。


あぁ、同じ。

わたしは父親と同じなんだ。

わたしも、人の話を聞かないし

分かってくれないなら聞きたくない!

ってなる。


本当は、親のせいにしては

いけないことは分かってる。


だけど言わせてほしい。

父親がわたしを怒鳴り付けて

包丁で脅したり、

外に放り出したり。

その行為と言動が、

わたしをますます

言うこと聞かない人間に

したんだと思う。


だけどね、わたしも悪いんだよ。

自覚してる。

わたしがバカな人間だから、

親がどれだけ苦労したか。

それはわたしが持って産まれたものだし、

変わらないもの。


父親が怒鳴ったり、

包丁突き付けても治らなかった。


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それって正しいの?って思った。


わたしは娘を怒鳴りつけた。

娘は怯えた目付きでわたしを見た。

泣いて泣いて、震えていた。


これって違う。

こんなことしても、言うこと聞かない。

逆効果だ。


そんなことしたら、

「親の話を聞いてやるか!」って

ますます反発して、


わたしのような、

性格がひん曲がった人間になってしまう。


このやり方は違う!

子どもたちに同じことをしない!


わたしは心に誓った。


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さて、わたしと父親がどうなったか。


わたしは、自分のトラウマを父親に話した。

お父さんが怖かったこと、

怯えていたことを話した。


しかし、父親は理解してくれなかった。

「怖かったなら、何で言うこと

聞かなかったんだ。

今も、お父さんの言うことを聞かない。

何で、そんなことで泣くんだ。

親のせいにするのか?

お前はバカか、全部お前のせいだろ!

人のせいにするな!最低な娘だ」


一生、分かり合えないね。

わたしが辛かった胸のうちを話したのに、

理解もしてくれないなんて。

なんて親なんだ。


わたしはお父さんに

「帰ってください。もう、お父さんと

一緒にいたくない。離れたいです」

と伝えた。


そしたら

「本当に帰るぞ!それで良いのか!

子どもたちのお世話が、

適当になっても良いのか!

子どもたちを怒鳴り付ける親に

なっていいのか!

再度、通告する。

帰って欲しくないなら、

頭を付けて謝れ!」


わたしは、凄く悩んだ。

離れるべきだと思った。


しかし、父親にお世話になったこと。

ここまで育ててくれたし、

厳しいけど、何でもしてくれて

優しい時もあった。

これは、わたしなりの親孝行だ!


わたしは平伏した。

土下座をして謝った。


「申し訳ございません

でした。

わたしが悪かったです。

お父さん、いてください!」


これで良いのだ。


わたしの中では、

こう思っている。


勝ったな!

わたしが勝ったな!

潔く折れるってことは、

わたしがお父さんの上に

立ったってことだ。


わたしの方が立派だし、

賢い。


所詮、わたしも

こんな人間である。