転移性恋愛とは、
精神科医のフロイトが説いたものである。

主に女性患者が、男性の精神科医に
恋愛感情を抱くことである。

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わたしの場合は、相手は精神科医ではない。
町医者を好きになってしまったのだ。

それは、転移性恋愛なのか?

まずは、先生の美しい瞳に
惚れ込んでしまった。
何て、カッコいいんだろう。

先生はわたしのことを
真っ直ぐに見てくれる。
いつも真摯な対応をしてくれて、
本当に優しい。
だけど、厳しさもある。
それは患者のために言っていること。

わたしは、そんな先生に
すごく信頼をおいていた。

いつしか、その信頼する気持ちが
度を超えてしまい、
あれ?わたしって、先生のこと好きなの?
って思い込んでしまった。

そこから、恋愛感情に変わっていった。
先生に会うたびにドキドキして、
美しい瞳を見つめ過ぎてしまった。

わたしの気のせいかもしれないが、
先生はわたしの情愛に
気付いてしまったらしい。
ある時から、視線を外されたり
冷たい素振りをするようになった。

わたしは、自分が
迷惑な存在であることに気付いた。

わたしも、今までは先生の目を見たり
真剣に話を聞くことが出来たが、
好きと言う気持ちを自覚してしまってから
歯止めが効かなくなった。
先生の前で、普通にいられなくなった。

(わたしは既婚者、
 先生もそうかもしれない)

治療で来ているはずなのに、
先生の目を直視できなくなった。
人として、ちゃんと先生の目は
見なくちゃいけないのに、
そっぽを向いてしまった。

いつもなら、先生の話は真面目に聞くのに
先生の治療に意見を言ってみたり。
自分が自分でなくなってしまった。

これ以上、先生を好きになってはいけない。
思えば思うほど、
先生のことを考えてしまって。
心が乱されてしまう。

あぁ、何と
バカすぎる女だろう。

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わたしの恋は3拓である。

①転移性恋愛

転移には二つある。
陽性転移はプラスの気持ち。
信頼、依存、愛情。
陰性転移は、マイナスの気持ち。
妬み、嫉み、恨み。

わたしの場合は、陽性転移である。
先生のことを信頼し過ぎて
依存してしまった。
その気持ちが、恋愛になった。

②本当の恋愛

先生のことをカッコいい、
イケメンだと思っている。
優しさと厳しさに惹かれてしまった。

恋に恋してるパターン

①も②もひっくるめて、
恋に恋しちゃっているのかもしれない。

さて、一体どれなのか。
わたしにも分からなくなってしまった。

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わたしが実行したいこと。
それは、明日かどうかは分からないが。

いかに、先生の前で冷静を装えるか。

好きな気持ちは倍増してしまって、
止められなくなりそうだ。
しかし、不倫と言う不貞行為は
するつもりはない。

向こうだって医師の立場がある。
わたしはただの、近所の患者だ。
年上だし、子持ちだし、既婚者。
こんなわたしの誘惑に
ホイホイ乗ることはない。

(誘惑はしていない)

自分の医者人生を
何より大事にするだろう。
先生は真面目だから、絶対に不倫はしない。

むしろ、わたしの気持ちは
先生にとって
迷惑極まりない好意だろう。
思わせぶりな態度を見せつけられるのも、
鳥肌が立つほど怖い行為かもしれない。

だからこそわたしは、堂々と行く。
好きな気持ちを悟られないように、
真っ直ぐ先生の瞳を見る。
それは、一患者として
先生の話を真面目に聞く姿勢。

目を逸らしてしまったり、
挙動不審な動きをしていたら
本当に好きなことがバレてしまう。

もうバレているかもしれないが、
先生に気を遣わせないようにする。
わたしの演技力が試される時だ。

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昔、わたしは舞台女優をやっていた。
主にメンタルが弱い根暗の役や、
バカみたいな役が多かった。
真面目な役はやったことはない。
それがわたしの特徴だった。
ある意味、主役を喰う役だった。

そんなこんなで、
演技をすることは得意でもない。

(どう言うこっちゃ。
 つまり、そんなに上手くない役者だった
 ってこと)

だけど、今回は演技をする。
先生のこと、諦めましたよ?
いや、何とも思っていませんよ?
この前のわたし、
いや、何かが憑依したんじゃない?

堂々と、心を乱されず。
ただただ、先生の患者として。

だけど、肝心なところで
目が泳いじゃって、
ドキドキが聞こえてしまうかもしれない。
それでも我慢して、やり切る!

わたしのためではなく、
先生のためにである。