母、クマ姑のいる特別養護老人ホームに面会に行くには
最寄駅から2キロちょっと歩く。
バスもないのでタクシーに乗る以外は歩くしかない。
このクソ暑い季節でも、大雨でもない限り、歩く。
往復で4キロ+は身体に良いと思っている。
その道のりに大きな公園がある。
公園のぐるりには遊歩道があり、地域の保育園などが
利用しているらしい畑があったり、
水が流れる場所もあったりして色々な人が散歩したり
子連れで遊んだりしている。
その公園の真ん中は、非常時の避難場所ということも
あるのだろう、すこーんと開けた原っぱになっている。
大体においてこういう場所は、江戸川区の小松川地区に
住んでいた時もそうだったが、きれいな芝生などにはできる
ものではなく、夏にはクローバーが生い茂る。
私はこれが大好きだ。
我が家のリビングの角の壁にかけてある小さな額のひとつは
子グマ兄弟が小さかった頃に荒川の土手で私が撮ったもので、
この上なくしあわせそうな顔をした兄弟が一面の
シロツメクサの中に座って色褪せている。
私はこの写真を撮った時のことまでよく覚えていて、
当時はスマホなんかなくて、カメラで一生懸命に、
四隅までしっかりとシロツメクサで埋まるようにと
角度を工夫しながら撮った。
老人ホームへの道を、私はこの広いシロツメクサの広場を
真っ直ぐに横切る。
そして必ず脳内に鳴り響くのがラスカルの唄である。
しろつめくさの花が咲いたら、さあ、行こう、ラスカル🎵
という、私の年代であったら知らぬ人はいないのではないか
と思う世界名作劇場というアニメの歌だ。
そのアニメが放映されていたのは1977年。
まさに私が勝手にしやがれで沢田研二に堕ちた年だ。<マジ沼
とにかくそういう多感な頃に覚えた曲は今でも口をついて
出てくるので、誰もいない公園の真ん中を(暑くてみなさん
木陰におられます)元気にずんずんとラスカルの歌を
ふんふん言わせながら進む。
しかし、これを歌い始めたのは6月で、
その歌詞に戸惑った。
「六月の風が 渡る道を ロックリバーへ遠乗りしよう」
自信を持って1番だけは歌えたはずが、
歌った後で「あれ?」と思った。
六月で合ってたっけ?
もしかして七月だった?
いや、七月ではちょっとごろが悪いな。
八月もありえるな?
いやちょっと待てよ。
ラスカルって本当はどこの話よ?
なぜか私にはイギリスとかヨーロッパのイメージが
あったのだけれど、調べてみたらスターリング・ノースは
アメリカのウィスコンシン州での話を書いていた。
ウィスコンシンか・・・。
全然知らんがな。
なんか、まんなかのいなか? <地理落第点
ウィスコンシン州で思いつくのはチーズくらいのものなので、
きっと地平線まで広がるような土地にすごい数の乳牛がいて、
とんでもない量のチーズを生産しているのだろう。 <ひどい
ウィスコンシンでもクローバーは六月に開花するのか?
よくわからないが、とりあえずは最初に口をついて出た
確かスターリング少年は最後に成長したラスカルを
自然に返すしかなくて涙々の結末となったはずだが、
そこから何も学ばなかった人が多かったのか、
日本では考えなしにあらいぐまをペットとして飼おうとして
失敗した人がたくさん出てきて社会問題になったと知った。
無理だって。
あいつら凶暴なんだって。
シアトルでも住宅地にいくらでも野良あらいぐまが出てくるが、
かわいらしいと思ってエサをやっちゃったりして
小さい子供が派手に引っ掻かれて何針も縫う怪我をするとか、
そこからばい菌が入って大騒ぎになるというのは定番だ。
とにかく私の脳内は誰にも止められることもなく、
母の面会に行く度に、行きも帰りも頭がラスカルになっている。
さてこれが何月まで続くであろうか。