しろくまです。ฅ( ・㉨・)ฅ

 

家の近くに昔からある歯医者さんがある。

 

私が小学生の頃からお世話になっており、東京に行って帰ってきてからもたまにお世話になっている。

 

 

受付にはいつも色眼鏡をかけて、顔を一回り大きくしたまあるいパーマがかかった頭をしたおばちゃんが居た。

 

 

昔は学校の先生をしていたおばちゃん。

確かに厳しい人のイメージがあったが、私は大人しかったからかおばちゃんには怒られたことはなく、そのおばちゃんが大好きだった。

 

 

小学校時代、私はあまり仲の良い友だちがいなかった。

友達がいないというか、心を許せる人がいなかった。

 

友達の家に行くことも来てもらうこともあったのだが、正直何となく無く疲れてしまうので、1人が好きだった。

 

 

 

虫歯の治療で、その歯医者さんにしばらく通っていたのだが、私はその歯医者さんに行くのがとても楽しみだった。

 

なぜなら、待合室に置いてある漫画が読めるから。

 

今思い返すととても迷惑な小学生なのだが、漫画が読みたくて毎回予約の時間よりかなり早く着いてしまっていた。

 

 

 

でも、おばちゃんはいつも嫌な顔ひとつせず、

 

お「あら、しろくまちゃんいらっしゃい。時間までそこで待っていてね。」

 

と声をかけてくれていた。

 

 

私はうんと頷き、好きな本を選んで椅子に座った。

 

当時私が好きだったのは、らんま1/2とコブラだった。

私は夢中で漫画を読み漁り、他にお客さんが居ない日は治療後も漫画を読ませて貰っていた。

 

 

しばらくして虫歯の治療が終わり、通院が終了しまった。

 

 

もう漫画が読めない…

 

 

そんな私の気持ちを察したのか、おばちゃんは

 

お「もししろくまちゃんのお母さんが良いよって言ったら、学校帰りに漫画読みに来ても良いよ」

 

とおばちゃんが言ってくれた。

 

 

おばちゃんと私の母は知り合いだった。

友達という程ではなかったが、近所のよしみといったくらいの仲だったのだと思う。

 

 

その事を母に話すと、母はおばちゃんに電話してくれた。

 

勉強もちゃんとやることを母と約束し、私はしばらく漫画を読みに歯医者さんに通った。

 

 

 

 

その頃、父が野球のグローブを買ってきた。

 

私は小学生の時、私は運動が苦手で嫌いだった。

 

キャッチボールをするにもうまく投げられずキャッチすることも出来ず、ただひたすら怒られた。

 

父は良く「男のくせに」と私に良く言った。

 

その頃から、多少なりきに自分が男の人を好きなんじゃないかと言う自覚はあった。

しかしそれが父にバレたら、きっと家から追い出されると本気で思っていた。

 

 

おばちゃんは、いつも私に優しかった。

 

ただいつも変わらず挨拶をしてくれて、少しでも変化があると気にかけてくれて、当時の私にはその距離感がとてもありがたかったように思う。

 

 

中学、高校と進学した後もその歯医者さんに通っていた。

 

高校生になって、坊主頭に髭面ピアスの私を見てもおばちゃんはいつも変わらなかった。

私もおばちゃんへの接し方は変わらなかった。

 

 

挨拶をはするけれど多くは話さない。

けれど、当時の私にはそんな大人はこのおばちゃんくらいだったかもしれない。

 

 

 

つづく。