しろくまです。
私は東京から地元に帰ってきてから、しばらく地元のゲイ達との交流は殆どなかった。
田舎のゲイコミュニティーは既に確立されていて、新参者が参入することは難しいと勝手に考えていたのだ。
そんな中、たまたま出来たゲイの友人にバーベキューに誘われたんです。
おおよそ30人から40人くらいが集まる河川敷のバーベキューは、田舎で引きこもっていた私には圧巻だった。
知らない人ばかりの空間で私はとても緊張し、沢山お酒を飲んでいた。
お酒の力を借りて、少しずつ色んな人と話せるようになった矢先、大御所ゲイのおばさまが動き出す。
いわゆる、くっつけおばさん。
色々な人のタイプを把握しているこの方は、独り身のゲイに「この子どう?」と色々な方をあてがってくれる。
マイノリティーでしかも田舎で出会いも少ないので、そういう方がいるのはとてもありがたいことなのだが、当人を目の前にして「この子どう?」と聞かれるのは、正直しんどい笑
その中で、ありがたいことに私に興味を持ってくれた年下の子が1人いた。
見た目は少しイモっぽく、柔道をしていたらしく体躯はがっちりしている。
普通にモテそうな子だった。
話していても良い子そうなのだが、貞操観念の価値観が合わなかった。
「あの人と◯った事あるんですよ、あ、あの人とも!」
そんな事を満面の笑みで言われても…
そこは言わない約束だよベイビー?
素直といえば素直なのかもしれないが、人を巻き込むのはどうなのだろうか。
私は何とも言えない気持ちで彼の話を聞いていたが、連絡先を聞かれても適当に誤魔化してしまった。
そんな話ももう6年以上前の話。
先日、その子からゲイの出会い系アプリから連絡が来たのだ。
良かったら会いませんか?と。
数回のメッセージのやり取りで、彼は私と会ったことがないと思っていることに気付いた。
さて、どうしたものか。
フランクな感じで、以前会ったことがあることを伝えるべきか否か迷ったが、そのまま彼が思う「会ったことがない人」を演じ続けることにした。
ただ単に、説明するのが面倒だったのは内緒。
それに、説明をしても彼はもう覚えていないかもしれないし。
どんな関係であっても、人から忘れられてしまう事はやはり心の何処かで淋しいなぁと思ってしまうのであった。
でも、気持ちに答えられないのにそれは傲慢かとも思い直し、そっと心に蓋をするのであった。
求める人には多すぎる出会いがあるゲイの世界。
昔は沢山の出会いに憧れていた気がする。
けれど、歳を取るごとに足るを知るというか、身の丈に会った出会いと数があれば良いなと思うようなったんだと思う。
恋愛だろうが、そうじゃなかろうが、きっと根底に心のつながりを持てるかどうかを判断しているんだと思う。
昔から、求めているものはシンプルなことのはずなのにな。
シンプルにすることを面倒にしてしまうことをやめなくては。
おしまい。