しろくまです。
彼と別れ、一時間後に来る電車を待つ。
只今の時間は20時。
あたりは暗く、人気はあまりない。
駅の周りを少し歩いて、喫煙所を見つけてタバコに火を着けた。
煙を吐き出す息が、まるでため息のように感じられた。
彼と一緒にいることは心地よかったし、楽しかった。
年上だけど飾らない無邪気さが可愛らしかった。
でも、体を重ねた時の違和感は何だったのだろうか。
良く体の相性という話を聞くが、それなのだろうか。
そもそも恋愛って、こんなに頭で考えるようなことだったっけ…
彼に問題があるわけではない。
自分が拗らせているだけなのだろう。
久々のときめきを理想化して、その微妙な違いにただ戸惑っているだけなのだろう。
でも、そんな事を自己分析してみても、今の私は浮かれられない。
気が付くと、学生の頃の恋心を思い出していた。
ずっと言わないと思っていた感情。
相手に見返りなんて求めなかったから。
だからこそ、ただ一緒に居られればそれで良かった。
ゲイとして上京し、環境が一変して沢山の自分以外のゲイに会った。
人生で初めて気持ちを伝えても良い人を好きになった。
でも今独り身ということは、その恋も終わったということだ。
始まりがどんなに綺麗だったとしても、終わる恋もある。
私はそれを繋げる努力が足りなかったのだろうか。
初めから体だけの関係だと思っていたらその先を夢見ない。
けれど、その先を想像していた相手と体を重ねると、
何かの選択を間違えると、もうそれ以上近くなれることはない。
彼はどう思っているだろうか_
彼に今日のお礼のメールを送る。
まだ運転中だろうから、返信はすぐ来ないだろうとスマホをカバンに仕舞った。
電車が来るまで、待合室で本を読みながら待っていたのだが、
本の内容は頭に全く入って来なかった。
ホームに電車が到着するアナウンスが流れ、私は足早にホームに向かう。
人もまばらな車内に乗り、スマホを取り出す。
彼からメールが届いていた。
返信は来るだろうか、と思っていたので返信があった事が嬉しかった。
もう少し時間をください。
物分りの悪い私は、貴方のことがもう少し知りたいのです。
おしまい。