口を開けば「差別化しないと売れませんよ」という人、周りにいませんか?
現代の製造現場というのは高度に組織化されていて、複雑なサプライチェーン(供給網)がそれを支えています。
どういうことかというと、一言で言うと「簡単に模倣される」のです。
経営効率を優先すると、売れるものを真似するのが手っ取り早いと思っている人が
たくさんいて、そういう人たちに限って「こういう商品が他地域で流行っているので
差別化のために導入しよう」と考えついてしまうのですね。これが。
ひとつ例を出しましょう。
皆さん、各地に旅行したとしましょう。
地域が離れているのに同じような土産菓子を見たことってありませんか?
あのカラクリってわかります?
お土産品として大量に作るタイプのお菓子は当然機械で作ります。
そしてその製造機械を作る会社というのがあるわけです。
オリジナルを出したお菓子屋さんというのは当然あって、そのお菓子屋さんと
製造機械会社が二人三脚で製造機械を開発します。
ワンオフの機械だから価格も当然高いです。
開発で得たレシピと製造機械を別のところに販売出来たら、
オリジナルを作ったお菓子屋さんの負担も減る事でしょう。
かくして、全国で「地元の他店と差別化した」模倣品が出回ることになります。
どうして訴訟とか起きないのかな?と思っていたら、そういう大人の事情が
あるわけですね。
このことが「良い」「悪い」というお話ではありません。
様々な製造技術が高度に発達して、サプライチェーンが確固たるものになると
まず、低価格化によって消費者に商品が普及するスピードが速まります。
同時に、売れる商品を模倣する会社はたくさん出てきます。我が国くらいの技術大国ともなれば、消費者に充分普及するころには、技術的には「ダメな商品」はまず出てきません。
かくして差別化の夢は消え去り、オリジナリティのない商品が市場を埋め尽くします。
「差別化しましょう」という言葉を安易に使う人は、本気で差別化をしようと思っている
わけではないのです。
それでOKなら、別にいいのです。
僕としては、そのような商品やサービスは「消費するためだけに生み出されている」ように感じます。差別化すると言いながら、何のプライドも志も伝わらない、売るためだけの商品。
もちろんそういう商品やサービスでたくさんの方が生活を営めれば良いのですが、
そのような商品やサービスに囲まれた生活って、なんかつまらないなって思うのです。
多分、今の若者たちはもう見破っているんですよ。
「どれも同じじゃん」って。
彼らのモノやサービスの買い方を見ていると賢いなあって思う事が多いです。
オリジナリティのある商品やサービスを生み出す人たちは、そもそも差別化しようと思っていないような気がします。ただ、目の前の難問を解決して人々の役に立とうという気持ちで頑張った結果、オリジナリティの高い商品やサービスに結実するというイメージです。
僕のお客様には、信念からスタートして他にはない商品やサービスを作り出す方がたくさんいらっしゃります。規模は小さくても、すぐには真似ができないもの。
それは、意図せずともきちんと差別化ができたものになっています。
そのことを理解してくれる消費者の方と長いお付き合いをされています。
というわけで、製品やサービスを企画して世に出す過程でことさら「差別化」と口にする人を
僕はあまり信じません。
結構コンサルタントとか自称している人に多いので、ちょっと言ってみました。