マーケティングの現状分析メソッドのひとつにSWOTがあります。
ランチェスター理論とこのSWOTは日本の経営者のみなさんに最もよく知られたメソッドなんじゃないかな。

 

SWOTはご存じの通り、組織が取り巻く状況を内部環境(組織がコントロールできる組織内の事項)と外部環境(自分たちではコントロールできない外の環境)に分け、その上で内部環境を「強み」と「弱み」、外部環境を「機会」と「脅威」に分けて田の字型のマスに記入していく現状分析法です。ただ、現状分析だけではあまり役に立たないので、その後クロスSWOTというものを作って組織の戦略立案に使うというのがポイントです。

 

数年前、WEB系のセミナーで講師の方が「今どきSWOTなんかやっているの、遅れていますよね」って笑顔で話されていて、ものすごい違和感を感じた事があります。その時はこの人、まともにSWOT作ったことないな…と思いましたが(笑)


それはともかく、SWOTは実際にきちんとやってみたという方がとても少ないメソッドでもあるんです。仮にやったとしても、思い付きで現状をちゃちゃっと「強み」「弱み」「機会」「脅威」の枠に書き入れて御仕舞…では時間も労力(ちょっとだけど)ももったいないですし、なにしろ役に立ちません。

 

僕はJICAのプログラムでアフリカ諸国の農業施策者にマーケティングをお教えしているのですが、今年は新感染症の影響で彼らの来日が叶わず、Zoomによる講義となりました。そこで、今年はSWOTをはじめとするいくつかのマーケティングメソッドを実際の各国の状況に合わせて演習してもらったのですが、彼らが作ったSWOTとクロスSWOTで、とても精密な分析と、具体的な戦略立案ができました。これには教えている僕が一番感動しましたね。ああ、まだSWOTとか役に立つじゃん的な(笑)

 

ちょっと気を良くしたので、僕が札幌で主宰している「しろくまマーケティングCafé」(誰でも参加できるマーケティングセミナー)で、参加者の皆さんとコロナ後の北海道の外部環境について作ってみました。立場も業界も違う参加者同士で、今の外部環境を論じるのですごく振り幅の大きな議論ができるし、できたものは各自が組織に持ち帰って役立てられるのではないか?と思ったのです。

 

案の定、みんなでSWOTを作っている間は他業界の参加者の視点に驚いたり、Aさんが「脅威」と思っていたものがCさんの一言で「機会」に転換したり、2時間楽しく議論できました。
 

マーケティングをやっている僕もなるほどなーと思ったことがいくつもありました。

ひとつ紹介すると、「機会」のひとつに「事業者も消費者もダイレクトに市場にアクセスできる状況が整ったこと」が挙げられているのですが、それは中間業者の衰退を招いていて、「脅威」としてサプライチェーンの崩壊や、NoSTOCK型モデルの終焉、コモディティ市場の衰退が挙げられるといった具合です。

そういえばトヨタも「かんばん方式」の見直しを発表しましたよね。

 


普段からSWOTは多人数で作ることを推奨しているのですが、こんなに楽しいとは思いませんでした。


このときに作った外部環境分析(SWOTのOTの部分)は、3年に一度作り直す弊社のSWOTに取り入れさせていただきました。次は社員たちと一緒に、これらの外部環境のリテイクや内部環境=我が社の事情について楽しく考えたいなと思います。

会社を経営されている方は、社員の皆さんとSWOT作ってみることをお勧めしますよ。
楽しいし、光明が見えてくるかもですよ。