家族で海に行った時。
長女がしゃがんで砂浜に指で落書きしてた。
その後ろ姿が小さくて。
この子はもう20歳で大人の仲間入りをしたけれど。
とても小さくて頼りなくて。
その体の中にどんな思いを抱えているのだろうと。
見えなくて、見えないから、不安で、安心で。
どうしたらいいのか分からなくて。
ただずっと、小さい背中を見てた。
長女がある日、ポツリと言ったこと。
「姉妹を亡くした人は、同時に2つのものを喪うんだって。」
大学まで長女を迎えに行って、帰る途中の車の中。
「2つか。1つは分かるけど、もう1つは何?」
真っ直ぐ前を見たまま、聞く。
長女はこちらを見ている。
「私の場合なら、1つは妹。もう1つは、親の愛情だって。」
そう言って、長女は私から視線を逸らして、窓の外に目を向けた。
「ママは、そうなってしまいたくないと思ってるよ。だからその努力をしてるつもり。」
そう返したけれど。
「ん、そうやね。」
長女はそれっきり黙ってしまった。
私も言葉を見つけられずに。
静かな車内は懐かしい音楽だけが流れている。
正直に言えば。
どうしていいのか分からない。
彼女の内側は見えないから、どうしていいのか分からない。
ただただ、貴方と居て楽しいのだと、笑うことで伝えている。
つもり。
つもり、でしかないけれど。
叶うなら。
もっと普通の母親の元に産まれさせてあげたかった。
2人とも。
いつもそう思ってる。
愛しているのに、愛とは何なのだろう。