新型コロナウイルス感染症第6波が猛威を振るおうとしています。シロイルカ総合病院では1月15日から土曜日・日曜日・祝日の日勤帯に、通常の救急外来担当以外に、発熱外来対応の日直を置くことになり、初日は私が担当しました。感染の拡大という大きな危機が迫っていることを肌で感じながら診療を行いました。感染の流行は、自治体が対策を講じなければ、あるいは個々の行動に変化が現れなければ、飽和状態に達するまでは、先週の倍、そしてまた倍というように、感染者数は指数関数的に増えることでしょう。感染者の増加は重症者の増加に比例し、私がこれまで経験してきた不幸、すなわち患者の悪化、を再び見ることになるように感じています。ただ、現状を嘆くことなく冷静に受け入れ、今、できる対策を練る他に方法はありません。

 

 懸念していることは他にもあります。1月10日の共同通信の報道によると、JR西日本の社長が「新型コロナで悪化している経営の立て直しを急ぐ」ため、「不採算路線を維持することは『新幹線や都市圏のサービスにも影響を与えかねない』と懸念」し不採算路線の廃止を考えているようです。2018年3月に廃止された三江線の次はどこなのだと、「不採算」の山陰地方に住む私は心配します。コロナ流行前にJR木次駅の近くのお店で、高校時代の旧友と楽しい時間を過ごしたこと、最終列車に間に合うように木次駅に向かい、汽車の中でかつての恩師と話したこと。私を島根につなぎ止めた青春の日々を思い返しました。ただ、ひたすら思う。「木次線は残してほしい」と。

 

 山陰地方は人口の減少が著しい。中国5県も例外ではないでしょう。都市圏だけが人であふれる今の現状は政治的に正すべきだと思っています。東京駅発博多駅行きの「こだま」に乗ると大阪駅・岡山駅でぐっと人が減ります。広島駅では自由席にまばら。これが不採算なのか・・・。高速バスで広島駅新幹線口から2時間かけて浜田駅に向かう。本当に東京は遠い地です。逆に東京からは浜田などの山陰地方は意識にないでしょう。私が訴えたいこと。新型コロナウイルスによる経営の悪化を理由に、昔から思っていた効率優先の考えを展開しないでほしい。すべての人々が幸せになる方策を考えてほしい。政治はそこに歯止めをかけてほしい。山陰の人口が増えるような施策を本気で考えてほしいということです。

 

 実は、それはシロイルカ総合病院にも言えることです。職員700名。外部に委託しているビルメインテナンス、リース、コンビニエンスストア、電子カルテを含めると職員800名。それらの家族を×3として、浜田市5万人のうち2400名、人口の約5%を支えているこのシロイルカ総合病院を縮小させることに、大いなる危惧を感じています。ポストコロナで地域経済を縮小させることこそ、コロナへの敗北だと思っています。(くま)