リノベーションの伝道者は誰か?(居住用売買物件の場合)
なぜ、リノベーションなんですか?
と問われることがあります。
リノベーションは今の在り方で、この十数年でその呼び方は、
リフォーム
リニューアル
デザイナーズ
リノベーションと
自社所有物件の付加価値の表象を変化させてきました。
このように施工したインフィルの言い方に拘りを持つようになったのは、
既存住宅を自社物件として仕入、販売するようになってからです。
同時に主体の工事内容も変わってきました。
室内の表面をサラッと新しくする内装(表装リフォーム)から、
水廻りの一部を新品にする内装。
やがて、浴室・洗面・キッチンの3点と給排水給湯管の更新までをする
水廻りの一括変更。
そして、建具や床までも新規に施工し、室内のイメージを調和させる工事。
ここまで来ますと色調や素材にまで意識は広がっていきます。
さらには、照明や電気系統の配線の工夫まで。
工事がだんだんエスカレレートしてきた理由には、不動産転売
というビジネスモデルに対する免罪符的な感情も、かつてはありました。
また、マーケットがタイトになり仕入価格がヒートアップした時には、
背伸びした再販設定価格に見合うそれなりの不可価値が必須でした。
デザイナーズリフォーム。
この言葉が流行った頃がまさにピーク。
住んで住み難く、使って使いづらい設備や器具。見かけ倒しの
付加価値が大手を振っていました。
ここ数年、リノベーションという言葉が定着してきたと同時に
リノベーションの定義も明確になり、施工される工事の内容も
ほぼ統一されてきました。
リノベーションの基準を明確にした業界団体も設立されています。
サービスマークで基準のクリアを証明する仕組みや保証書なども
発行されるようです。
リノベーションという考え方が普及し、しっかりと地に足がついてきた
状況は喜ばしい限りです。今後、正当なリノベーション物件が
増えるにつれて一般のお客様にもその良さや必要性が
伝わるのだと思います。
しかし、私にとって不動産会社が自社物件にリノベーションを施し
再販することは、リノベーションが本来の目的ではなく
販売のための手段にすぎない、と考えています。
リノベーションの創始者ですが、はたして伝道者だろうか?
理由は、簡単。
不動産を購入してリノベーションを施すというプロセスの中に、
最終ユーザーに負担をかける要素があるからです。
不動産会社側としてもリスクがつきまといます。
不動産の市況は、景気に極めて敏感に左右されますから、
腰の据わったリノベーションの普及という議論になりますと、
いささか不安が残ります。
また、錬金術の方法論としてリノベーションを捉えられるのも不本意です。
誠に不動産会社らしからぬ、考え方ですが、
当社は、本来不動産とリフォームの仕事を同じプラットホームで考えよう
として始まった不動産会社です。
リノベーションという考え方、社会的な意義を思うと、
このトレンドを終わらせないために、
通常の不動産流通市場で当たり前の認識として、
売主さんや買主さんに認知され、
取り入れていただきたいのです。
当社は、リノベイトした自社物件を販売する他に仲介もしております。
私自身十数年前までは、仲介1本の営業として働いてきました。
既存物件を販売流通するという、仲介の作業で
、一般の売主さんや買主さんにこのリノベーションを
お薦めするという作業は、現状ではなかなか見込めません。
とにかく、お金がかかる作業です。
住めばなんとか住める住宅なら、とにかく購入してもらうのが仲介の動きです。
リノベーションを不動産売却時の当然のこととして
売主さんは受け入れるでしょうか?
不動産転売にリノベーションの考え方を取り入れ、結実させつつある
この状況の後、引き続き市況に左右されることなく、
リノベーションを普及させるのなら,購入者の皆様に既存物件選択の条件
としてこのリノベーションを採用するというようなトレンドが
必要だと思っています。
リノベーションを定着させられるかどうか?
将来を担う本当の伝道者は、
不動産会社ではないかもしれません。
もし、不動産会社とするならば媒介の制度やその在り方から
変えなくてはいけないのでは?
と思っています。
(これ以降は、はしょります。
私も現役で不動産会社をやっていますので)