「佐和子はね~、
そんな特別な事をしなくても大丈夫だよ。
普通にしていれば、向こうの方から、
言い寄って来るんだからさ~。
のり君が言うように、男の人でも、
まともな人は、たくさん居るんだよ」
「佐和子が今までダメだったのは、
変に男の人を毛嫌いしていたから、
いけなかったんだよ。
普通にしていれば、大丈夫だよ。
美人なんだしさ」
「佐和子が、男の人を毛嫌いしていたから、
向こうの方も、警戒して、
近寄り辛かったんだと思うよ。
ねえ、佐和子、そう思わない?」
「そう言われたら、そうだったのかも知れない。
わたし、男の人の事、
あんまり好きじゃ無かったし…」
「でも、もう男の人だからと言って、
毛嫌いする事は無いでしょう?」
「うん、もう男だからと言って、
毛嫌いする事は無いと思う。
それは、のり君のおかげだと思う」
「そう、それだけで、大前進だよ。
後は普通にして居れば、大丈夫。
向こうの方から、言い寄って来るんだから」
「そうかな?」
「絶対に、大丈夫だって。
保障するわよ」
「それからね、のり君の事だけど、
佐和子は、安心しても大丈夫だよ」
「えっ、どう言う事?」
「言っちゃ悪いんだけれどさ、
わたし、こんなおじいさんの愛人に成ろうだなんて、
最初から、思っちゃいなかったしさ。
自分の親友の事を裏切ったりする訳、無いでしょう?
ねえ、のり君も良いわよね?」
「ああ、佐和子さんが納得出来ないって言うのなら、
オレは、由香さんの事は、きっぱりと諦めるよ」
「よし、決まった!
3人とも、これで異存は無いわよね。
誰か、不満が有る人はいますか?」
「オレは、何の異存も無いよ」
「わたしも、特に不満は無いです」
「じゃあ、これで終わりにしよ。
どうする、のり君?
どこかで、少し飲んで行こうか?」
「いや、オレ、湯河原に帰るよ。
佐和子さん、気を付けて、札幌まで帰ってね。
また、いつか、逢える事を楽しみにしています」
「のり君、本当に、いろいろとありがとうね。
わたし、凄く感謝しています」
「由香さん、何かと、ありがとうね。
由香さんの事は、一生忘れないよ」
「のり君、酷い事を言って、ごめんね。
こちらこそ、いろいろとありがとう御座いました」
「それじゃ、二人とも、さようなら」
そう言って、由香さんのマンションを、後にした。
まだ、陽はけっこう暑かった。