こんにちは。

理学療法士のmasuiです。

このブログでは、私の職場の若手理学療法士Fくんとの臨床教育を発信していきます。
 

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今回は、前回の続きで、ちょっと難易度の高い症例に困っていたFくんに、動作障害の理学療法の基本的な戦略の考え方についてレクチャーした話をします。
前回の記事は、コチラ から。

症例は、十数年前から複数回脳梗塞を来すも何とか屋内伝い歩き自立していた70代女性で、
今回、右橋梗塞による下肢の脱力と呂律困難にて急性期病院入院後4週で、当院にリハビリ継続目的で転院となりました。
合併症は1年前からの透析療法です。
BMIは22.5なのですが、実際には少しぽっちゃりな印象です。

前院より、右上下肢の軽度の麻痺は元々のもので、今回の橋梗塞で構音障害と失調による立位歩行障害が生じていると申し送られております。

基本動作能力
・起き上がり 自立(スムース)
・坐位 自立(安定)
・靴の着脱やコップの把持 スムースに可能
・移乗 物的支持にて見守りレベル
・立位保持 物的支持にて軽介助
・平行棒歩行 見守り~軽介助も骨盤がだんだん引き込まれていき、右下肢が前に出にくくなる。右足を出す位置も毎回安定しない。

この症例について、指鼻指試験や踵膝試験が陰性だったことと、(私による)右上肢介助の左片手すり歩行において、ゆっくりの速度なら、姿勢保持も右下肢の振り出しもまっすぐ可能だったことから、今回の橋梗塞の影響としては、下肢の支持性が(もともとのこの症例状態と比較して)少し低下したことと、何よりも一番の問題は、現状の下肢の支持性で、どうやって立位、歩行時の姿勢を制御をするのかがコントロールできていないことだと捉えました。

そこで、Fくんに、私と同じように症例の右手を背屈位で把持し、右上肢介助(添える程度)で、左片手すり歩行をしてもらうと、立位姿勢は骨盤が後方に引き込まれてしまい、右下肢が前に出なくなってしまいました。

この原因を分析すると、Fくんは、右手に触れる手の用手接触において皮膚を引っ張っていることと、介助している右上肢を自分の方に引っ張っていることが分かりました。

接触面の皮膚や上肢を引っ張ると、患者は無意識に抵抗して引っ張り返してしまうのです。

残念ながら、この2点についてFくんは即時的に修正させることができなかったため、今回ハンドリング以外で立位、歩行を修正する方法を検討することにしました。

前回の記事は、コチラ から。

私 『これで終わったらクレームになるね(^_^;)
   よし、セーフティウォーカーをしよう。』


F  『はい。』

セーフティウォーカー歩行では、ゆっくりめの速度でセラピスト(Fくん)が押してあげると、下肢の支持、振り出しともにまずまず安定して可能でした。

※セーフティウォーカーでは、サドルに座るのではなく、立位時に殿部をサドルで下からわずかに押し上げてサポートすることで部分免荷歩行練習をすることができます。

私 『うん。いい感じで下肢の支持性も発揮できてるし、振り出しもいいじゃない。』

F  『はい(^_^)』

患 『これやったら何とか歩けてるわ(^_^)』

私 『ね?やっぱり、失調症状なんてないでしょ?』

F  『はい(-_-)/~~~~』

私 『今後はセーフティウォーカーで練習していけば、立位、歩行時の姿勢制御を学習していけるから、それに従って歩行能力も上がっていくはずだよ。』

F  『はい(^_^)』

私 『その、歩行様式をレベルアップしていくタイミングを、この症例の場合はゆっくりめにすることがポイントだろうね。
   少し見切り発車になると、また姿勢が崩れてしまうだろうから。
   逆に言えば、姿勢が崩れたり、足が出にくいようだったら、歩行様式をレベルアップするのが早いんだって判断すればいい。』


F  『わかりました(^_^;)』

私 『今日教えたいこと(前回のも含めて)はこの図で説明するね。』


  動作障害の戦略

私 『動作障害の理学療法の戦略の基本的な考え方は、この4つに分類されるんだよ。』


F  『はい。』

私 『横軸が時間、縦軸がある身体機能(筋出力や可動域など)としたときに、
   あるパフォーマンス(動作、運動)が成功するためには、
   「このタイミングでこの身体機能がこれくらい発揮できてなきゃいけない」っていう目安があるでしょ?
   図ではそのポイントを■で表してるんだよ。』


F  『はい。』

私 『で、■より上のライン(■以上のタイミングと身体機能)を発揮出来たら、そのパフォーマンスは成功できるし、逆に下回れば失敗、もしくは代償反応が出る。
   この状態を動作障害と捉えると、
この■を下回るラインの描き方は、大きく分けて二つある。
   一つは、身体機能のマックス値も■に到達しない場合(図の上段)。
   これは、具体的には、可動域制限とか筋力低下だね。
   もう一つは、身体機能のマックス値は■を上回るけどタイミングが遅い場合(図の下段)。
   こちらは具体的には、筋出力応答のタイミングが遅い場合とか、協調性や運動パターンの問題だね。』


F  『はい。』


私 『これらに対して、理学療法をどう展開するかっていう戦略としては、マックス値が足りない場合に、①機能回復、機能の向上によって、マックス値を上げるか、②補助具や環境の工夫で、必要になる身体機能■を下げる。』

F  『わかりやすいですね(^_^)』


私 『身体機能を発揮するタイミングが遅い場合は、③筋出力の促通をしたり、運動パターンの修正をする。
   ④補助具や環境の工夫で、必要になる身体機能を下げる。』


F  『なるほど。』

私 『この症例の場合は、下肢の支持性の問題よりも姿勢制御の問題が大きかったから、図の下段で考えるといい。
   ハンドリングで歩行を調整するのは③になるし、セーフティウォーカーで部分免荷するのは④になる。』


F  『そういうことですね。』


私 『ハンドリング(③)にこだわらなくても、④でその症例が正しくパフォーマンスで遂行できているなら、目的である「姿勢制御の学習」は達成できるから、徐々に段階的に歩行様式もレベルアップしていけるんだよ。』

F  『安心しました(^_^;)』


私 『でも、さっき(前回)も言ったように、ちゃんと練習はしていこうね。』

F  『はい!ありがとうございました。』


はい、今日の臨床教育はここまでです。

後日談ですが、本症例は2日間のセーフティウォーカー歩行練習後には、シルバーカー歩行軽介助レベルとなりました。

ハンドリングを上手にできないうちは、ハンドリングにこだわらなくても、段階的な歩行練習でちゃんと改善していきますので、胸を張って患者さんに適応する歩行・動作様式を検討することに注力してくださいね。

段階的な歩行練習については、第30回 をご参照ください。

次回のブログは、