自分の過去ブログを随分と久しぶりに見ていて、

三年前のブログ↓けっこう真面目に書いていたんだなぁ笑

ちょっと編集しましたが、なるべくそのままとしました。


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ある時から文章を書くようになった。
誰に見せる訳でもないその言葉たちは、今振り返ると青春そのものだったのかもしれない。

誰かの発する言葉や文字の連なりが、時に感動的に美しく、心が揺れ動いたのを今でも思い出すことができる。

常にアンテナを張り、図書館のカード欄はすぐにいっぱいとなった。

毎日「あ」から「ん」の組み合わせに苦悩しながらも、常に興奮がそこにあって自分の言葉を書き溜めていった。

十年が経った頃、毎日書き溜めた言葉たちの一部はいくつかの方面から有り難い評価を頂いたが、ふと全てを辞めてしまいたくなった。

そして、いつしか書けなくなった。


そんな自分の頭の中にも残る、名作たちを紹介したいと思う。


高校生のときに衝撃を受けて何度も繰り返し読んだ本、桜島。

太宰治や芥川龍之介も好きだったが、一番衝撃的だったのは、桜島のこの文節。


今こうして読んでみても、凄いなぁと思う。

桜島の個人的に好きで特に繰り返し読んだところを載せました。

是非とも、一気に読んで頂ければと思います。


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梅崎春生 『桜島』

とうとう名前も、境遇も、生国も、何も聞かなかった。私にとって、行きずりの男に過ぎない筈であった。

滅亡の美しさを説いたのも、此処で死ななければならぬことを自分に納得させる方途ではなかったのか。

不吉な予感にえながら、自分の心に何度も滅亡の美を言い聞かせていたに相違ない。

自分の死の予感を支える理由を、彼は苦労して案出し、それを信じようと骨折ったにちがいなかったのだ。滅亡が、何で美しくあり得よう。

私は歯ぎしりをしながら、死体を地面に寝せていた。生き抜こうという情熱を、何故捨てたのか。

自分の心を言いくるめることによって、つくつく法師の声を聞きながら、此の男は安心してとうとう死んでしまったのだ。

風が吹いて、男の無精鬚はかすかにゆらいだ。
死骸は、頬のあたりに微笑をうかべているように見えた。

突然、親近の思いともつかぬ、嫌悪の感じともちがう、不思議な烈しい感情が、私の胸に湧き上った。

私は、立ち上った。栗の木の下に横たわった死体の上に、私は私のよろめく影を見た。
大きな呼吸をしながら、私は電話器の方に歩いた。受話器を取った。

声が、いきなり耳の中に飛び込んで来た。

「グラマンはどうした。もう行ったのか」

「見張の兵は、死にました」

「え? グラマンだ。何故早く通報しないか」

「――見張は、死にました」

私はそのまま受話器をかけた。

略帽を拾い上げた。死体の側にしゃがみ、それで顔をおおってやった

立ち上った。息をらしながら、身体をうごかし、執拗に鳴きつづけていたつくつく法師をぱっととらえた。

規則正しい韻律が、私の掌の中で乱れた鳴声に変った。物すごい速度で打ちふるう羽の感触が、汗ばんだに熱いほど痛かった。

生まれたばかりの、

ひよわな此の虫にも此のような力があるのか。


残忍な嗜虐が

突然私をそそった。



私は力をこめて掌の蝉を握りし

めると、

そのまま略服のポケットに

突っ込んだ。

蝉の体液が、掌に気味悪く拡がった。それに堪えながら、私は男の死体を見下していた。

丘の下からは、まだ誰も登って来なかった。

軽い眩惑が、私の後頭部から、戦慄って拡がって行った――




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どうでしたか。
蝉を握るのはちょっと、、とか、そのいう話をしたいのではなく、言葉の強さ、良いよねぇ。


高校生の頃、朝練も夕練もある学内で一番厳しいとされる部活に入っていてさ、

空気感がね、図書館とか行くのダサくね?の感じだったため、基本はみんなと一緒に騒いで笑

お昼休憩にこっそり図書室に行って、図書館の先生と、国語の先生、宗教の先生と語り合うという秘密の会合をしていたのを思い出したわ笑。

普段いる場所と棟が違ったからね、食堂裏から講堂を抜けて、隣の棟に移動して、

そこからダッシュ笑

先生たちとの秘密の会合は、言葉の面白さとか、哲学的な話が多かった。

あの本はこの一節が堪らなく格好良い!確かに!!みたいなので盛り上がる。

あれはとても楽しい時間だった。


次回、智恵子抄か洗面器を紹介したいと思います。


shiro