大手雑貨専門店だけでなく、小売業界全体で導入が進んでいるセルフレジ。 一部のGMSやアパレル企業では運用がスタートしているが、消費者の利便性は高まったとする一方で課題も見え始めている。 今回はセルフレジ導入の可否について考察する。
レジオペレーション1台につき発生する人件費を見てみよう。 店舗を標準的な大型モールと仮定し、アルバイト時給950円、営業時間を10時から22時の10時間と仮定する。
時給950円×10時間=日/9,500円
9,500円×30日=月/285,000円
285,000円×12ヶ月=年/3,420,000円
非常に簡略化した計算だが、レジ1台につき年間約342万円の人件費がかかっている。しかも、上記は1台あたりのコストなので、稼働レジが2台、3台と増えれば、単純計算で発生する人件費も2倍、3倍となっていく。加えて、金額を時間に換算すると、年8,760時間となり、この時間がレジオペレーションに費やされている。この時間の損失のほうが、企業としてのマイナスが大きいのではないだろうか。言い換えれば、年間8,760時間、接客や売場づくりに充てる時間を失っていることになる。セルフレジが導入されれば、この8,760時間は消費者が負担することになり、コストという点から見れば、大幅な(342万円分)削減となる。
セルフレジを導入することで、どのような課題が出てくるか?
例えば、万引きや不正につながる、消費者が操作に不慣れだと精算に時間がかかる、ICタグのコスト高などがあげられるだろう。しかし、いずれもITの進化により、遠くない将来に解決するものと考えられる。
万引き・不正については、AI搭載の防犯カメラで、レジ上の不正はある程度防ぐことができる(防犯カメラにAIが搭載されれば、売場の防犯カメラの性能も、無論向上しているはずである)。精算に要する時間も、現状は1点ずつの商品スキャンが主流だが、買い物かごの中をまとめてスキャンするシステムも出てきている。ICタグのコストも今は割高だが、普及につれて価格は下がっていくものと考えれられる。
セルフレジは導入するべきか?筆者の考えは、導入するべき、である。
というよりも、導入は避けられないとみている。人材不足、採用難が加速するであろう今後の状況であれば尚更だ。セルフレジは雇用を奪うという見方もあるが、間接的な原因にはなっても、直接の原因にはならない。ただ、セルフレジ導入によって、今よりも少ない人数で店舗オペレーションは可能になるだろう。現在のスーパー等に設置されている機械は大型で物々しいが、遠からず小型化が進み、コストも大幅に下がり、中小や個人経営の店舗でも導入が進むと考えられる(例えばA4サイズくらいのシートの上に、商品をいれたかごを置くだけで一括スキャンができるようになるのではないか、など考えられる)
大幅な経費削減にもつながるセルフレジだが、コストダウンを達成するという観点からみれば、まだまだ課題は多い。一部スーパー等で導入されているセミセルフレジ(店員が商品をスキャンし、消費者は精算だけ行う)は、移行期間の措置としてはよいが、完全な人件費の削減とはなっていないので、大手スーパーでもない限り、導入すべきではない。また現在のセルフレジで、不正やトラブルを防ぐためのカメラを見るのは人間の役割だが、これも完全無人化が実現するまでは、かえって割高になるため、雑貨業態での導入は見合わせるべきだろう。
今後導入が進んでいくと思われるセルフレジだが、消費者、店側どちらにとっても、もっとも理想的なのは、レジレスである。あらかじめ登録されているクレジットカードから自動的に決済される仕組みで、消費者はただ商品を持ち帰るだけとなる。米国Amazon Goではすでに運用が開始されている。セルフレジという移行期間を経て、いずれこちらも普及すると筆者はみている。さらにビットコイン等の仮想通貨の普及もある。テクノロジーの進化のスピードを読むことは難しいが、いずれ仮想通貨が普及するのは間違いないだろう。その時期は早くに訪れるかもしれない。そうなったときのことも踏まえて、対応できるフォーマットは準備しておくべきだろう。
また、雑貨店ならではの課題として、ギフトラッピングへの対応がある。雑貨業態はシーズンイベントによって、ラッピングニーズが急増する。現在は従業員が1つずつ包装している店舗がほとんどであるが、無人化にあたりこれらにも対応する必要がある。これについては当面、人が担当するところが多いと思われるが、大手などのラッピング個数が多いところでは、ラッピングもいずれオートメーションでできるようになると考えられる。袋タイプのラッピングであれば、購入した商品をボックスに入れ、自動で包装、封がされる仕組みはそこまで複雑ではない。需要とコストが見合えば、おそらく開発が進むだろう。
鉄道駅があっという間に自動改札に切り替わったように、レジの無人化も避けられない流れとなり、その先にはレジそのものがなくなる日が来るだろう。
