ネクタイ外して野良へ・(116)・噴き出した便槽
小屋の撤去が終わると、急いで仮設のトイレを作らなければならない。
安芸市の小松住宅設備の信也さんにまたまた無理を言って、簡易水洗汲み取り洋式トイレ一式を取り寄せてもらった。
萱の里では、とんでもないトイレを作ってしまって不評だったため、心を入れ替えて仮設ではあるとは言え、そこそこのものを作ろうと奮起していた。
建物敷地を整備する傍ら、便槽を埋めるため、重機で穴を掘り、便槽を埋め込んだ。
ところがこれがまた数日経って、大変な事態を引き起こした。
雨が降ったので数日作業を中断し、再び現地に行ってみると、埋め込んだはずの便槽が大変なことになっていたのだ。
何としたことか、埋め込んだはずの便槽が地中から吹き上がって、絞り出されたかのように地上に転がっていたのである。
これにはさすが、ぶったまげた!
いったいなぜこんなことになってしまったのか、さっそく安芸の信也さんに問い合わせてみると
「便槽を埋めて、それに満杯水を入れた?」
と言う
「水なんか入れようにも、水は無いから入れなかったけど・・・」
「それが原因!」
「な、何と!」
「水を満杯入れておかないと、雨が降ると土圧が上がって、便槽が絞り出されますよ」
「あっちゃあー」
とにかく、今ここには便槽を満たすだけの水はないのである。
しかし、何とかしなければならない。まさか便槽を地上に立てたままにして置くわけにもゆかず、思案に思案を重ねた結果たどり着いた結論は
「埋めれないなら、はめ込もう」
であった。あさはかで、短絡的な考えであったが、便槽噴出事件から立ち直れず、この結論に至ったのである。

