【ネタばれ】舞台「鉈切り丸」
とてつもなく久々にブログを書きます。
舞台「鉈切り丸」を観て来ました。
2年前に森田剛主演・宮本亜門演出の「金閣寺」で、舞台役者としての森田さんに感銘を受け震撼して以来、森田さんの舞台は気になりつつも観に行っていなかったのですが、今回は劇団新感線の主宰者いのうえひでのりさん演出かつモチーフもリチャード三世ということで、好奇心が沸き観に行くことにしました。
大阪公演はオリックス劇場にて。
以前、大阪厚生年金会館のあった場所です。その昔、男闘呼組のライブでよく行ったもんです。
新しいホールの感想として、とにかく、座席幅が物凄く狭い、ということに尽きます。
女子として普通な体格の私でも「キッチキチ」なのです。
男性なら苦痛でしかないでしょう。
せっかく新しいホールを作ったのに、観客への思いやりの足りなさが残念です。
舞台の内容にスイッチしましょう。
私はリチャード三世を知らないので、どこまでアレンジされているのか、ということは語れませんのであしからず。
話の内容は悲しい境遇・容姿のためにこの世を恨む男(源範頼・のりより)が、そのコンプレックスによる支配から脱却し全てを手にするために、争いを巻き起こし天下を取ろうと企てる、というもの。
ただひたすらに悪者であるが、内に抱える闇・悲しさに征服された悲しい男の話。
この舞台は、話の内容よりも、ただただ範頼の生き様を目の当たりにするためのもの、のよう。
キャストは大変豪華で、みなさんかなりの存在感を発揮していたことで、大変安定感のある舞台でしたが、舞台の肝はただただ範頼という男の極悪非道な言動・行動・佇まいにあります。
森田さんの演技に魅力を感じれば成功、という作品かと。
ちなみに私は大変魅力を感じました。ラストでも涙ぐんじゃいました。
そして少しマイナスな意見。
新感線の舞台をこれまで観なかったのは、新感線好きだった姉から、踊りなどがたくさんあると聞いており、私の感性には合わなそうだと思っていたからなのですが、実は今回はかなりシリアスな内容なので踊りがあると思っておらず、踊りが始まってショックに打ちのめされました。
これは好みの問題ですが、これほどシリアスで残酷で集中して観ていたい内容の舞台で、しかも役者の演技が極めて高いその舞台で、あまりクオリティーの高くない踊りや(大変楽しいとはいえ)本編とテイストの異なるお笑いの場面が多くあると、その度に私は正直興ざめしてしまうのでした。
観客のみなさんは違和感なしに、気持ちのアップダウンをこなしていらっしゃるのかしら?
踊りやお笑いの場面を記憶から消して(笑)、シリアスな本編だけを今回の舞台だと思った上で評価すると、狂気と哀愁に満ちた、とても素晴らしい舞台でした。
余談ですが、とことんに悲しい辛い男の役柄なだけに、終演後のカーテンコールに何度も現れる森田さんは範頼から抜けきれず、5回目くらいの最後のカーテンコールでようやくほんの少し笑顔が見れました。
こりゃ森田さん、東京公演最後まで、負の感情に負けちゃうのではと心配になりました。
また次の森田さんの舞台が楽しみです。